【宮﨑建築×高橋良彰建築研究所】熱帯魚にコーヒー焙煎、カヤックまで。趣味を満喫できる高断熱住宅

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鈴木 亮平

新潟県聖籠町在住の編集者・ライター・カメラマン。1983年生まれ。企画・編集・取材・コピーライティング・撮影とコンテンツ制作に必要なスキルを幅広くカバー。累計800軒以上の住宅取材を行う。

新住協の会員一覧で見つけた宮﨑建築を訪問

2023年の夏、新潟市東区の住宅街に家を建てたTさん夫婦。約50坪の土地には車2台分のカーポートと杉板張りの小屋が並んでおり、その奥に延床面積30坪の家が建っている。

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「以前は近くの一軒家の貸家に住んでいました。延床面積20坪程の2階建てだったのですが、子どもたちが大きくなって手狭に感じるようになりました。それから、寒さ・暑さが厳しい家で、冬はリビングだけを暖める暮らし方でしたね。西日がよく入る家だったので、夏は2階がすごく暑くて。夏場は寝るとき以外に2階に上がることはありませんでした」とご主人。

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小屋にはご主人のシーカヤックが格納されている。自転車や釣り道具、庭の道具を保管する場所でもあり、コーヒー豆の焙煎スペースにもなっている。

はじめは住宅展示場に見学に行っていたが、だんだんと住宅への興味が深まっていき、性能について本やYouTubeで調べるようになったという。

「調べていく中で(高断熱住宅の研究・実践をしている)『新住協』という団体を知り、その新潟支部の会員一覧の中から宮﨑建築さんを見つけました。ちょうど秋葉区で建築中の家の構造見学会が行われるタイミングだったので、そこに見学に行ったんです。そこで、住宅性能に関して疑問に思っていたことを代表の宮﨑さんに聞くと、的確に回答をしてくださいました。これまで訪れた会社さんでは、回答に詰まったり『そこまでの性能はいらないんじゃないですか?』と言われたりしていたので、とても安心できました。

話をしてとても実直な方だなあという印象を受けましたし、宮﨑さん自身が大工でもあり、棟梁の風山さんと一緒に現場で作業ができることも信頼できるところでしたね」とご主人。

宮﨑さんは「Tさんご夫婦には、何度か構造見学会や完成見学会にお越しくださり、当社の家づくりに共感して頂きました。一番初めは構造見学会で、屋根の下葺き材の素材についてご質問を頂いたことが印象に残っています。家づくりについてかなり勉強されている方だなあと思いました」とTさん夫婦との出会いを振り返る。

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宮﨑直也さん。宮﨑建築株式会社 代表。1978年1月生まれ。阿賀野市(旧笹神村)出身。高校卒業後、新潟市の工務店に弟子入り。4年間の修行を終え、家業の宮﨑建築へ。2012年に先代より事業承継し、4代目代表となる。設計・施工・管理を担当。設計は外部の設計事務所と連携しながらも、構造計算および構造設計は自ら行う。また、温熱計算ソフトQ-PEXを用いた、断熱計算及び冷暖房コストのシミュレーションも自ら行う。2級建築士、1級技能士、省エネ建築診断士、住宅医。技能五輪新潟県予選1位、技能五輪全国大会出場経験を持つ。

 

カヤックを格納する小屋のある住まい

そうして宮﨑建築を頼り、HEAT20G2基準をクリアする断熱性能と、耐震等級3(許容応力度計算)をクリアする耐震性能を備えた高性能住宅を建てることにした。

こだわったのは、趣味を心置きなく楽しめることだったという。ご主人の趣味は、コーヒーの焙煎やカヤックに乗って行う海釣り、アクアリウムなど多岐に渡る。

「以前の家ではコーヒーの焙煎を家の中でやって家じゅうににおいが広がったりしていました。それから、4~5mあるカヤックは外に単管を組んでカバーをしていましたが、新しく建てる家では小屋で保管できればと思っていました」(ご主人)。

そうして、ご主人が描いた小屋のイメージを元に家と合わせて建てられたのが、間口2.15m×奥行5.695mの細長い小屋だった。

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道路側にはカヤックを出し入れするためのシャッターが設けられ、側面には引き違い戸が設けられた。

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内部には外で使用するさまざまな道具が保管されており、「もう小屋がない暮らしは考えられない」とご主人はいう。

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カーポートの先に家があり、正面1階部分は杉板の横張り、それ以外は白い金属サイディングで仕上げられている。

雨仕舞や壁の劣化対策のために軒をしっかり出しているのは、数多くの家を大工として見てきた宮﨑さんが大事にしている仕様だ。

玄関ドアは宮﨑建築の家で採用率が高いプレイリーホームズ社のユーロトレンドG。厚さ55mmの断熱材が入った木製ドアで、明かり採りの窓にはトリプルガラスが使用されている。

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籠り感のあるリビングは映画鑑賞にも最適

玄関に入ってすぐ右手に短い廊下があり、その正面奥にダイニング、右手にリビング、左手には水回りへと向かう廊下と階段が配されている。

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リビングは3畳の小さな空間で、構造上必要な袖壁に少し隠れるようにソファがあり落ち着ける。

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ソファとオットマンは、新潟市秋葉区にある家具工房ISANAで作られたもので、ソファには新潟県大白川産間伐ブナ材「スノービーチ」が、トランクのような形をしたオットマンには村上市山北産ホオノキ材が使われている。生地はどちらも帆布で、その優しい質感がコンパクトな空間に一層親密なムードをつくり出しているようだ。

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「元々テレビをそれほど見ない暮らしをしていたのですが、食事中に見えないようにしたいと伝えて、このようなスペースをご提案頂きました」(奥様)。

「夜に天井のグレアレスダウンライトだけ点けて映画を見ると、光源が目に入ってこないので、映画館にいるような感覚になります」(ご主人)。

 

熱帯魚も暮らしやすい高断熱住宅

リビングを通り過ぎて左手がダイニングキッチン。

ダイニングテーブルが中心にあり、その奥のキャビネットには熱帯魚が泳ぐ大きな水槽が。その隣にはアップライトピアノが置かれている。

壁に合計210mmの断熱材が充填され、トリプルガラス窓が使われたT邸は、断熱性能だけでなく遮音性能も高いため、音漏れを気にすることなくピアノの練習ができるのだそう。

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「大きな水槽は水を入れると200kgくらいになるので、その重さに耐えられるキャビネットと床をつくって頂きました。この家には全部で3つの水槽があるので、室内が乾燥しやすい冬でも湿度がちょうどよく保たれますね。

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熱帯魚なので水温を25℃程度に保つ必要がありますが、夏も冬も室内の温度が一定なので、ヒーターを入れているのは大きい水槽だけにしています。温度も少し上げるだけなので、高断熱住宅は熱帯魚との相性がいいなと実感しています」(ご主人)。

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窓辺には天童木工のイージーチェアが置かれており、そこに座って小さな庭を眺めるのもTさん夫婦の楽しみだという。

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「以前住んでいた貸家も庭がありましたが、この家はダイニングからよく見えますし、坪庭のようになっています。最初にモミジを1本植えて頂いて、それから植栽を増やしたり、石を敷いたり手を加えてきました。足したり引いたりを繰り返しながらつくり込んでいるところです」(ご主人)。

「この家に住んで、庭にかける時間が以前よりも増えましたし、夫と植物を見に行くことも増えましたね。新津の花夢里やフラワーランドによく行っています」(奥様)。

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造作キッチンはより使いやすくカスタマイズ

ダイニングの奥にあるキッチンは、面材にシナ合板を張ったオーダーメイドの造作キッチン。

ご主人が釣ってきた魚をさばけるようにシンクは広めに設計されている。

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「造作キッチンは図面上で確認をしていましたが、宮﨑さんが実際にキッチンを造る前に現場で高さなどを一緒に再確認してくださったのが印象的でした。キッチンの前の腰壁の高さも具体的にイメージできて良かったです」(奥様)

宮﨑さんは「キッチンなどは図面と実際の印象が違うので、造作の場合は現場で再確認をするようにしています」と現場確認の重要性を説明する。

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シンプルなカップボードの上には、イタリア製のエスプレッソマシンやカリタの電動コーヒーミルが並んでおり、その上の飾り棚にはコーヒーサーバーや自家焙煎したコーヒー豆が置かれている。

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元々キッチンの可動棚だった場所は、ご主人がスライドレールを取り付けて、ものを取り出しやすいようにカスタマイズをしている。

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キッチンに立つとすぐ目の前にダイニングがあり、その先の坪庭や籠り感のあるリビングも眺められる設計だ。

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右手の壁はマグネットウォールで、お子様たちの作品を飾る展示スペースになっている。

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洗面・洗濯・物干し・収納が集約された3.5畳のサニタリー

水回りは1階の北西角にまとめられており、玄関側からもキッチン側からもアクセスしやすい動線がつくられている。

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廊下から見えるのは、バックガード一体型で掃除がしやすいLIXILの洗面ボウルを組み合わせた造作洗面台。収納を兼ねたスライド式の鏡や、ガラスタイルの壁など、オリジナリティあふれる洗面スペースがつくられている。

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その隣には洗濯機と電気式の衣類乾燥機。その奥は日常使いの衣類を収納するコーナーで、造作の棚にはアイロンがけ用のスライド台が取り付けられている。

「太陽光発電と蓄電池を設置しているので、乾燥機を使っても電気代は安く済んでいますね」(ご主人)。

 

スタンディングデスクにもなる通路沿いの収納

通路に設けた収納スペースもT邸の特徴的な空間。

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玄関側と水回り側を結ぶ廊下の壁面をすべて造作棚にしており、書類や日用品、ランドセル、パソコン、プリンターなど、日常的に使う様々なものがこの通路にまとめられている。

カウンターをスタンディングデスクとして使えるのもポイントだ。インターネット機器や床下エアコンなどもこの一角にまとめられている。

 

個室・物干し・裁縫スペースが配された2階

階段を上がると中央に廊下が設けられており、その左右に部屋が配されている。

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階段の手すりは杉の幅はぎ材でつくられており、本棚としても使える。こちらは柱を巻くように材料が組まれており、宮﨑建築の棟梁による精度の高い施工で美しく仕上げられている。

そのまま廊下を進んでいくと、南側の窓からたっぷりと光が入る奥様の裁縫スペースが現れる。

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カウンターにはミシンがあり、目の前の有孔ボードにはミシン糸が収納されている。廊下には裁縫が好きな奥様による、自宅をモチーフにした刺繍作品が飾られていた。

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そして、裁縫スペースの後ろは物干しスペースだ。

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冬場は床下エアコンで温められた空気がこのルーバーを通って上昇していくため、特に洗濯物が乾きやすいという。

2つの子ども部屋はそれぞれ約4畳とコンパクトな空間だが、デスクと収納スペースが造作されていて使い勝手がいい。

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2つの子ども部屋と廊下を挟んで反対側に7畳の主寝室がある。

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ウォークインクローゼットの奥に配された寝室は、廊下から少し距離があり、落ち着いた雰囲気が漂っている。

 

休日は外よりも家で。メンテナンスが新たな楽しみに

UA値0.28(HEAT20G2グレード)の高い断熱性能を誇るT邸は、夏は2階の廊下に設置されたエアコン1台で全館冷房を、冬場は床下エアコン1台で全館暖房する仕組みだ。その快適さについて伺った。

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「夏は冷房を23℃設定にして、弱冷房運転にして除湿を最大化するようにしています。だいたい室温25℃・湿度54%程度で、寒くならず快適に過ごせます。外から帰ってくると玄関に入った瞬間から涼しいですね。サーキュレーターで空気を横に移動させることで冷気が行き渡るようにしています。あと、2階の個室に空気を送る循環ファンはずっとつけたままにしています」(ご主人)。

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2階の各個室の壁に設置された循環ファン。

「冬は足元から暖まり床暖房みたいになりますね。以前は布団を何枚もかけていましたが、今は1年間うす掛けだけで過ごしています。厚い服も着なくなりましたし、夫は家に居る時は年中半袖で過ごしています」(奥様)。

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また、家族全員が花粉症などのアレルギーを持っていることから、春や秋の中間期も基本的に窓は閉じて過ごしているのだそう。窓を閉じていても熱交換型の第1種換気システムによって、熱損失を抑えながら常時新鮮な空気を採り込むことができ、花粉が飛散する時期でも家では鼻炎が治まるという。ちなみに、換気システムの吸気ダクトに外気清浄機を取り付けるなど、花粉対策が徹底されている。

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「よく、家は3回建てないと満足する家にならないと言われますが、1回で満足できました。ただ、この家に住んでからは、誰も外に出掛けたがらなくなったことが悩みですね…。僕自身もせっかくカヤックが入る小屋を建てたのに、カヤックに乗る回数はかなり減りました(笑)。一方、家のメンテナンスや庭の手入れをする時間は増えました。AEP塗装の壁を塗ってきれいにしたり、無垢の床を少し削ってオイルを塗り直したりする時間が楽しみになっています」(ご主人)。

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T邸
新潟市東区
延床面積 99.34㎡(30.05坪)
竣工年月 2023年7月
UA値=0.28(HEAT20G2)
耐震等級3(積雪1m、許容応力度計算)
施工 宮﨑建築株式会社
設計 高橋良彰建築研究所
(写真・文/Daily Lives Niigata 鈴木亮平

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鈴木 亮平

新潟県聖籠町在住の編集者・ライター・カメラマン。1983年生まれ。企画・編集・取材・コピーライティング・撮影とコンテンツ制作に必要なスキルを幅広くカバー。累計800軒以上の住宅取材を行う。