ライター紹介


鈴木 亮平
Daily Lives 編集者・ライター・カメラマン)

DSC_01201983年生まれ。新潟県出身。山形市にある東北芸術工科大学で建築デザインを専攻(竹内昌義研究室所属)。
大学卒業後、東京都内の旅行情報誌専門出版社(株)JTBパブリッシングで海外旅行情報誌(るるぶシリーズ)の企画・編集に携わる。
2012年より新潟市内のメディア系企業(株)ニューズ・ラインで住宅情報誌「ハウジングこまち」の編集に携わり、5年間で新潟県内延べ400軒以上の住宅を取材。2018年11月に独立し個人事業主となる(屋号:Daily Lives)。

Daily Lives Niigataを始めたきっかけ

私は学生時代に建築を専攻していましたが、次第に単体の建築物だけではなく、国・地域ごとに異なる都市や集落、文化や風土、そしてそこに暮らす人々のライフスタイルなどに興味が広がっていきました。

学生時代にタイ、ラオス、カンボジアやインド、ネパールといったアジアの国々を旅行しました。

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サパの集落(ベトナム)
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アーグラーの下町(インド)

私は建築を学ぶ中で、優れた建築物は優れた建築家がつくるものだと思っていましたが、その地域の風土に合わせて伝統的につくられてきた家屋は建築家が考えたものではありませんでした。

しかしながら、その土地の気候に合わせ、その土地で採れる建材を使ってつくられた家屋は合理的で、そこで人々は生き生きと暮らしていました。

また、長い歴史の中でつくられてきた都市や集落の在り方も私にとってはとても興味を惹かれるものでした。

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ジャイサルメールの子どもたち(インド)

私は旅をしながらそんな風景をいくつも目の当たりにして、世界には実に多様な文化や暮らし方があるのだなということを実感できたのでした。

また、その多様なライフスタイルと出会うことこそが旅行の目的であり楽しみとなっていきました。

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マラティヤのトルコ人のお宅訪問(トルコ)
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麗江の旧市街(中国雲南省)
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チベット民族の街・シャングリラの旧市街(中国雲南省)
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明清時代の建物が残る鳳凰古城(中国湖南省)

そして私は、卒業後建築業界には進まずに、メディア業界に入りました。

自分自身が建築を設計することよりも、既にある面白い建築やライフスタイルを伝えることへの興味が勝ってしまったからです。

私は新卒で東京都内の旅行情報誌専門の出版社に入社し、海外旅行情報誌の編集担当をしました。旅行情報誌とは、既に旅行に行くことが決まっている人が現地で何をするかを考えるためのものでもあり、まだ旅行先が決まっていない人に旅行の目的や楽しさを伝えるものでもあります。

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台南の花園夜市にて(台湾)
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香港

当初の「ライフスタイルを伝える」という私のビジョンは少々ニッチなものなので、旅行情報誌の編集でそれができた訳ではありませんが、この期間に、役に立つ情報をしっかり分かりやすくまとめ上げるスキルを習得しました。

2011年の夏に私はその会社を退職し、しばらく仕事をしない期間を過ごすことにしました。

私がその時に次にやろうと思っていたことは、地方に暮らしながら地域の魅力を発信することでした。そこにはもちろん「ライフスタイルを伝える」ということも含まれています。

東京を拠点にするのではなく、自然豊かな地方で暮らしながら、地方のライフスタイルの魅力を発信したいという思いが強まっていったのです。

ちなみに私は仕事を辞めてから、中欧やインドシナ半島などを旅していました。中欧旅行では10カ国を巡り、ボスニアヘルツェゴビナやクロアチア、チェコなどの美しい旧市街をいくつも回り、日本にはない都市の在り方に魅了され続けていました。

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サラエボの旧市街の街並み(ボスニアヘルツェゴビナ)
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チェスケーブデヨヴィッツェの広場(チェコ)
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コルチュラ島の旧市街(クロアチア)

インドシナ半島の旅行では4カ国を巡りましたが、4度目の訪問となるラオスが最も印象的でした。

私は学生時代に初めてラオスを訪れた時から、ずっとラオスという国に憧れを抱いていました。それは、ラオスの人たちの屈託のない笑顔が素敵だったからです。

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ルアンプラバーンのナイトマーケット(ラオス)

私がラオスを訪れたのは2004年~2011年に掛けてで、東南アジアの中でも経済的に後れを取っている国でした。しかしながら、人々が伝統を大切にしながら、とてもリラックスして暮らしているように見えたのです。

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ルアンプラバーンで豆乳を売るおじさん(ラオス)

どうしても私たちは、精神的な豊かさを経済的な豊かさで計ってしまいます。それは、精神的な豊かさというよく分からないものを計る尺度がないからなのでしょう。

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もやがかかった夕方のメコン川(ラオス)

なんとなくお金を多く持っていると幸せそうに見えたり、高価なものを所有していると幸せなんだと思ってしまうかもしれません。

一方、私が勝手に感じたラオスは、経済的な豊かさとは別次元の豊かさを人々が感じているように見えたのです。

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ルアンプラバーンからバンビエンへと向かう道中の集落で(ラオス)

私は半年ほどの休息と再構築の期間を終えて、新潟市内の出版社で働き始めました。

最初の1年は季刊誌の編集担当をし、食・人・モノ・場所の取材に走り回っていました。それは地域を深く知ることにつながり、東京の出版社時代と比べて自らがライターとして現場で動くことが圧倒的に増えました。

その1年後、私は「ハウジングこまち」という住宅情報誌の編集部に異動をしました。新築購入を考え始めている新潟県内の30代をターゲットとし、県内の工務店や住宅会社の記事と広告を掲載するという広告ビジネスでした。

約5年半の在籍の間に400軒を超える住宅を取材しました。それはまさに私が目指していた「ライフスタイルを伝える」仕事だったのです。

施主さんの住まいに対してのこだわりや憧れを聞き、住宅会社の設計やデザイン、性能のこだわりを聞きながら記事にして多くの人に伝えられるというのは、とても魅力的なことでした。

そして、徐々に建築業界の方々との関係性も強まり、私はビジネスを超えた一体感のようなものを感じるようになり、さらに仕事は楽しくなっていきました。

しかし、その一方で私は雑誌ゆえの文字数の制約のない、Webコンテンツでもっと深く伝えたい思いを押さえられなくなっていました。

話がかなり長くなりましたが、そうしてスタートしたのが「Daily Lives Niigata」です。住宅会社や建築士の特徴・こだわりを詳しく伝えるのはもちろん、施主さんの価値観やライフスタイルにフォーカスを当てて長文の記事にしています。

これから家を建てようとしている人に向けて、ただ住宅実例を参考にして欲しいだけでなく、ライフスタイルのヒントを見つけて頂けたらと思っています。

また、建築業界の方にも見て頂くことで、色々なヒントになればいいなと思っています。

「Daily Lives Niigata」は手間暇を掛けてつくっているコンテンツです。

情報が氾濫している今、手間暇が掛けられたコンテンツを愚直につくることが大切なのではないかと思っています。

その時その時で消費され流れて消えていくコモディティ情報ではなく、本当に価値のある情報を残していくことが私のこれからのミッションと考えています。

そして、このような記事制作は「Daily Lives Niigata」の中だけではなく、各住宅会社の公式HPやオウンドメディアに入れるコンテンツとして提供を始めています。

そうすることで、家を建てたい人と建てる人、この2者の質の高いマッチングが起こりやすくなると考えています。

家を建てようとする人が満足度の高い住まいを実現し、理想的なライフスタイルを送れるようになるのに役立ったなら、編集者としてそれは本当に嬉しいことです。

個人の住まい・暮らしが良くなることで、その地域の魅力もアップしていくのではないかと思います。

私は手間のかかる記事制作を通して、たくさんの人の暮らしをより素敵なものに変えていけるよう、これから愚直に取り組んでいきたいと思っています。

2018年11月 Daily Lives 鈴木亮平