鈴木 亮平
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糸魚川住宅基準“ISSH”とは?
2023年に始まった糸魚川市独自の住宅認定基準“ISSH(イッシュ)”。
こちらは、糸魚川市の森林資源に関わる民間企業が集まってつくられた団体「「緑でつなぐ未来創造会議(Midori Mirai Meeting Itoigawa 通称:3M)」のプロジェクトとして誕生しました。
「Itoigawa Sustainable Standard House」の略で、一定基準以上の糸魚川産木材を利用し、一定基準以上の断熱性能を有する等、諸条件をクリアした住宅が認定を受けることができます。
ISSHのメインテーマは「糸魚川産木材の利用」と「住宅の高性能化」にあり、認定住宅の普及によって、林業等の活性化、地域経済循環、ヒートショックの予防や健康寿命の延伸、光熱費の削減など、さまざまな効果が期待されています。(詳細はISSHのWEBサイトをご覧ください)
同時に糸魚川市も省エネ住宅を奨励する住宅認定制度をスタートし、「糸魚川市省エネ住宅認定制度」+「ふるさとの木の香る家・店づくり促進事業」を合わせて最大50万円の補助金を受け取れる仕組みになっているのもポイントです。
ところで、日本の住宅の断熱性能は先進国の中ではかなり低いレベルと言われており、2025年4月から義務化される省エネ基準も断熱等級4(糸魚川市が含まれる5地域ではUA値0.87)と、今の時代に目指す性能としては決して高いものではありません。
一方、ISSH認定基準となる断熱性能は3段階あり、★1つ(標準基準)がUA値0.48以下、★2つ(推奨基準)がUA値0.34以下、★3つ(先導基準)がUA値0.23以下。
先進的な民間基準とされるHEAT20のG1、G2、G3グレードの基準に合わせています。
これからの時代にあるべき住宅を見据え、2023年に官民連携でスタートした糸魚川独自の住宅認定制度は、全国的に見ても非常に珍しい取り組みなのだそう。
そこで気になるのは、ISSHの家での暮らしは実際どういうものなのか?
それを確かめるため、最高気温が10℃以下の日が続く12月に4軒のお宅を訪問しインタビューを行いました。
これから4回に渡ってISSHの家で暮らすオーナーさんの声をご紹介します。糸魚川にお住まいの方はもちろんのこと、これから家づくりをしようと考えている多くの方に参考になる内容となっていますので、ぜひご覧ください。
せっかく建てるなら、糸魚川の木を使いたい
まず最初に訪れたのは、海岸線から程近い住宅地に立つNさんご家族の住まいです。2024年4月に完成したこちらのお宅の断熱性能はUA値0.31(ISSH★★)で、外壁と床に糸魚川杉を使用。
アウトドアが好きなご夫婦と1歳のお子様の3人で暮らしています。では、さっそくお話を聞いてみましょう。
――家づくりをしようと思ったきっかけは何でしたか?
ご主人 今まで古いアパートに住んでいたんですけど、冬寒くて夏暑いという、子育てに向かない環境だったので、子どもが生まれたのを機に家づくりを考え始めました。
それで、元々僕のおばあちゃんの畑だった土地を譲り受け、家を建てることにしました。
――ISSHの家にしようと思った理由を教えて頂けますか?
ご主人 はじめはISSHのことは知らなくて、この家を建ててくれた地元の建築会社さんに教えて頂きました。僕たち夫婦は糸魚川出身なんですけど、詳しくお話を聞いて興味を持ち、人生で一番大きい買い物である住宅を建てるなら、地元糸魚川の木を使いたいなと思いました。
床下エアコンで家じゅう快適。結露もなし
――春、夏、秋を過ごしてみて、住み心地はいかがですか?
ご主人 とても快適ですね。夏は2階にあるエアコン1台だけで快適に過ごせました。LDKの南側の窓の外にある深い軒のおかげで、夏の熱い日差しが室内に入ってこないのも良かったですね。
一方、太陽の高度が下がる冬は、日差しが家の中に入ってくるので、エアコンをつけなくても暖かかったりします。
奥様 春や秋は外が気持ちいいので、ウッドデッキに出てごはんを食べたりしていました。
ご主人 外の軒下でバーベキューもやりましたね。休日の朝にマリンドリーム能生に海鮮を買い出しに行って、昼に外で焼いて食べるんですよ。あとは、夏はウッドデッキにプールを出して子どもを遊ばせたりもしました。
元々キャンプが好きで、以前は夫婦で年に何回かキャンプに出掛けていたんですが、子どもが生まれたら頻繁に行けなくなるだろうなと思い、家でアウトドアを楽しめるようにしたいと考えていたんです。実際、軒下でのバーベキューはすごく楽でいいですね。
――12月半ばになり、ずいぶん寒くなってきましたが冬の快適さはいかがですか?
奥様 とても快適で、家のどこに行っても暖かいですね。
ご主人 以前住んでいたアパートでは、エアコンと灯油のファンヒーターの2つを使っていましたが、それでも全体を暖めることはできず、脱衣所などは寒かったんです。
あと、窓や壁の結露が酷くカビも生えていましたが、今は窓が結露することはありませんし、アパートとは比べ物にならないくらい快適です。灯油を買ってきて運ぶ手間もなくなりました。
基本的にはリビングにある床下エアコン1台を使って家全体を暖めていて、夜や朝方などは、2階のエアコンもちょっと使っています。
奥様 アパートでは脱衣所が寒かったので、冬のお風呂上がりに子どもが風邪を引かないか心配になりましたが、今は脱衣所も暖かいのでゆっくり保湿もできます。
夏も冬も気持ちいい糸魚川杉のフローリング
――床は1階も2階も糸魚川産の杉を使用されていますね。感触などはいかがですか?
ご主人 夏はペタペタしないですし、冬は暖かくて素足で過ごしていて気持ちいいですね。杉の種類は節ありと節なしを選べて、僕たちは節ありを選びました。表面がでこぼこした浮造り加工がされていて、それも木らしくていいなと思っています。
ただ、やわらかいので子どもが物を落とした時に傷付きやすいのは気になりますが…。
――外壁にも糸魚川杉をたっぷり使っていますね。
ご主人 だんだんと色が変わっていくのが面白いですね。雨風が当たる場所はグレーっぽくなったり、そうでない場所は明るくなったり。
ウッドロングエコ(天然成分を原料とする木材防護保持剤)が塗ってあることで、いい感じに変化しているように思います。あと、外壁の他にフェンスにも糸魚川杉を使っていますね。
――ISSHの条件に、地元の建築会社さんで建てることがありますが、その魅力はどんなことでしょうか?
ご主人 地元の会社さんなので、この糸魚川の気候をよく知っていることが特長だと思います。寒い冬でも暖かく過ごせる工夫がされていますし、あとは、何かあった時にすぐに来て頂けそうなのも安心できるところです。
糸魚川らしい雄大な景色を望む暮らし
――この家に住んで満足していることや気に入っていることはどんなことでしょうか?
ご主人 繰り返しになってしまいますが、夏涼しく、冬暖かいこと。やはり、エアコン1台で快適に過ごせるのがすごいです。
奥様 アパートと比べて広くなり、子どもがストレスフリーで走り回れることにも満足しています。小上がりも子どもが遊ぶスペースとして役立っています。
ご主人 あと、ソファに座った時に窓から黒姫山がきれいに眺められるのが気に入っています。
奥様 晴れた日の朝の景色は特にきれいですね。それから、アパートのキッチンは寒く作業スペースも狭かったですが、今は暖かく広いキッチンで快適に料理ができるようになったのも良かったことです。
ご主人 室内干しをした洗濯物の乾きもいいですね。夜干した洗濯物が、翌朝にはしっかりと乾いています。
――この家に住んで、休日の過ごし方も変わりましたか?
ご主人 そうですね、家で過ごす時間が長くなったなあと感じます。朝ゆっくりして、昼前くらいに買い物に行って、家でお昼ごはんを食べて、子どもと一緒に昼寝して…みたいな過ごし方が増えましたね。家が落ち着ける場所になったと感じます。
あと、家の裏にある畑で野菜を育てるようになりました。夏はピーマンやナス、オクラなどの夏野菜を、今は大根を育てています。自分たちだけでは食べ切れないので、実家に持って行ったりしています。
アパートの暑さ寒さに悩んでいたことから、断熱性能が高く快適に暮らせる家を望んだNさん夫婦。1年を通して心地いい温熱環境に包まれる新居で、伸び伸びとリラックスした日常を過ごされていました。
次回は大きな吹き抜けとウッドデッキがあるISSH認定住宅をご紹介します。
【N邸DATA】
竣工年月:2024年4月
延床面積:102.12㎡(30.82坪)
UA値:0.31
耐震等級:2(許容応力度計算)
糸魚川住宅認定基準ISSH:★★
取材コーディネート/緑でつなぐ未来創造会議(3M)・糸魚川商工会議所
写真・文/Daily Lives Niigata 鈴木亮平
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