【SUITE HOMES】SE構法で叶えた、22坪の敷地に立つ3階建てガレージハウス

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鈴木 亮平

新潟県聖籠町在住の編集者・ライター・カメラマン。1983年生まれ。企画・編集・取材・コピーライティング・撮影とコンテンツ制作に必要なスキルを幅広くカバー。取材・撮影で訪れた住宅は累計900軒以上(2025年1月現在)。

築50年超の家を、ガレージ付きの3階建てに建て替え

2022年秋に完成したKさん家族が暮らす三条市内の住まいを訪れた。

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昔ながらの住宅街に立つ3階建てのK邸は、22坪という小さな敷地に立っている。準防火地域で一般的な住宅地よりも制約が多い土地でもある。

黒い金属サイディングに包まれた建物は間口2.5間(約4.5m)×奥行6間(約10.9m)。整った敷地を目いっぱい使った建物はとてもシンプルで美しい。

「元々ここには祖父母が住んでいた家があり、15年ほど前から私がその家を引き継いで住んでいたんです。古い家で築50年は超えていたと思います。その後、結婚を機に大規模リフォームを検討し、リフォーム会社さんに見て頂きました。すると、シロアリの被害が大きいことが分かり、建て替えを薦められたんですね。それで、いったんリフォームするのはやめたんです。

あと、敷地内に駐車スペースがないことも悩みでした。少し離れたところに駐車場を借りていたんですが、妻が妊娠すると、今後子育てをする上で大変になるだろうと思い、新築することを決めました」と、家を建て替えることにした経緯をご主人は話す。

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別の土地を買って新築することも考えたが、三条市の中心部でバス停や駅が近く、公共施設も充実した立地であったことから、建て替えを決めた。

「最初は大手ハウスメーカーさんを回って相談をしていたんですが、『この間口では建てられません』と断られてしまって…。それで地元の工務店さんを探し始めました。そして、住宅相談窓口で紹介して頂いた工務店さんと打ち合わせを始めたのですが、自分たちがイメージする家にはならないように思い契約までは進みませんでした」とご主人。

22坪の敷地に2台分の駐車スペースを設ける必要があることから、必要な居住スペースを確保すると3階建てになる。インナーガレージ付きの3階建てを建てる場合、一般的な木造軸組工法で高い耐震性を確保すると室内に耐力壁が増え、開放感が損なわれてしまう。

開放感と耐震性能を両立することの難しさが課題になっていた。

「その後に住宅相談窓口で紹介して頂いたのがSUITE HOMES(スイートホームズ)さんでした。ちょうど、木造で耐震等級3を確保しながら大空間がつくれる『SE構法』の存在を知った時期でもありました。SE構法を標準仕様にしているSUITE HOMESの坂本さん夫婦から提案を頂いた図面を見ると、『こういうことができるんだ!すごいな!』と驚きましたね」(ご主人)。

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門型フレームで4.5mのスパンを実現

図面に描かれていたのは、1階に車2台分のインナーガレージを備えた3階建ての家。リビングがある2階は建物の間口4.5m分のスパンが飛んでおり、空間内には視線や動線を遮る柱や壁がない。

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SUITE HOMESの代表・坂本真人さんは、「在来の木造軸組工法だと、両側に3尺(910mm)の耐力壁が必要になりますが、SE構法は門型フレームで耐震性能を確保できます。繰り返しの地震にも強く、積雪荷重も計算されていますので、2mの雪を載せていても耐震等級3の耐震性能を確保できます」とSE構法の魅力を説明する。

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坂本真人さん。SUITE HOMES 株式会社 坂本建築設計事務所 代表取締役。

一般的な木造住宅の柱よりも太い特殊な構造用集成材を使用しているため、リビングの畳スペースを囲む4つのコーナーには壁のラインに納まらない柱が出ているが、それによって大空間を実現できている。

 

便利な裏動線があるインナーガレージ

インナーガレージは1階の右手にある芯芯で幅2.7mの空間。そこに夫婦2台の車を縦列で駐車する設計になっている。基礎と柱が内側に突き出している部分があるが、慎重にハンドルを操作すれば安全に駐車できる広さだ。

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一方、玄関ドアがあるのは建物の左手側。1坪分のポーチはゆったりとしており、雨や雪が降っていても落ち着いて出入りできる余裕がある。木製の玄関ドアは雨にさらされると退色が進むが、壁と天井に守られたK邸の玄関ドアは3年近く経っても新築時のように美しい。

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玄関ドアを開けた先は広い土間がある玄関で、軽やかな鉄骨階段が2階へと伸びている。階段下は自転車がちょうどよく納まる土間スペースだ。

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目立たない奥の土間はシューズクロークになっており、靴や上着、外で使う道具などがまとめられている。そして、テラスドアを開ければガレージへと出られる設計だ。

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「インナーガレージは雨に濡れずに車に乗れるのがいいですね。裏側の入口から入ればすぐに荷物を下ろせますし、雨や雪を気にせずにゆっくりと動けるので楽に感じます」と奥様。

 

幅3,600mmの大きなキッチンがLDKの中心

2階がK邸の中心となるフロアで、15坪のうちの3分の2がLDK。残りの3分の1が水回りやユーティリティルーム(家事室)がまとめられた一角だ。手前と奥で明確なゾーニングがなされている。

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1階と同様に床はチークの無垢フローリング。こちらは新潟市のアンドウッド社が扱っている「チーク FJL120幅 フローリング&パネル」というもので、幅40mmの材料を集成し、1枚のフローリングにしたもの。40mm幅ごとに溝が入っており、一般的な90mmや120mm幅のフローリングよりも豊かな表情を感じさせる。

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そんな2階で目を引くのがダイニングまで一体になったGRAFTEKT(グラフテクト)のキッチンだ。GRAFTEKTはオーダーキッチンブランドkitchenhouse(キッチンハウス)のセカンドライン。

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施主と建築会社でプランを決めるセルフ方式が採用されており、ハイセンスなキッチンを手が届きやすい価格帯で導入できる。

さまざまなレイアウトがある中でKさん夫婦が選んだのは「ポポラート」というダイニング一体型のタイプ。3,600mm幅のワークトップが、空間の長手方向に伸びる様子は圧巻で、べトングレーと呼ばれる暗いグレーカラーがチークの床と調和している。

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「キッチンにいる時に家族と会話がしやすく、一人で作業をしている感じがしないのがいいですね。料理をしながらテレビも見られますし、作った料理をすぐに出せて使いやすいです。BOSCH(ボッシュ)の食洗機も便利ですね」と奥様。

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ダイニングに吊り下がる白いペンダントライトは、奥様が選んだFRITZ HANSEN(フリッツ・ハンセン)のカラヴァッジオ ペンダント。シリーズの中でも小ぶりな直径16.5cmは、主張することなく食卓を優しく照らしてくれる。

 

眼前にイチョウの木々が広がる畳リビング

そしてダイニング・キッチンの隣には、2面から心地いい光が入る畳敷きのリビングがある。

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「ソファよりも畳で過ごしたいと思っていて、畳リビングにして頂きました」と奥様。

設計をした坂本いづみさんは、「リビングのメインの窓は西側ではあるんですが、ちょうど道路の向かいにイチョウの木が並んでいたんです。その景色が畳に座った時の目線できれいに見えるように、窓の位置は少し低めに設計しました」と、この景色を切り取る窓の意図を説明する。

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坂本いづみさん。夫の坂本真人さんとSUITE HOMES 株式会社 坂本建築設計事務所を運営する。設計・インテリアコーディネートを担当。

夏は鮮やかな緑の葉でいっぱいだが、秋になれば黄色に染まったイチョウを目の前に眺められる。移り行く季節の変化を楽しめる窓は、22坪というコンパクトな敷地であることを忘れさせる程の開放感をもたらしている。

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天井に目を向けると、そこにはアガチスの羽目板が張られていた。アガチスは東南アジアで採れる南洋材としては珍しい針葉樹。しかし、日本の杉や檜のようなはっきりとした木目はなく、どことなく控えめな印象だ。

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遠慮をしながらもチークに呼応しながら、リビングというくつろぎの空間に温かみを添えている。

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L字に造られた造作TVボードは、マホガニー合板でつくられている。こちらは、十日町市にあるUCファクトリーが製造するUCマホガニー合板と呼ばれるもの。表面のマホガニーは輸入材だが、中の基材には魚沼地域で採れる魚沼杉が使われている。

地域の林業の活性化を目的に開発された合板を、その理念に共感する坂本さんたちは積極的に家づくりに採用している。

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水回りは使いやすさとデザイン性を両立

次に2階の奥にある水回りや収納、ユーティリティルームをのぞいてみた。

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最も奥には浴室と3畳の洗面脱衣室があり、その手前に2畳のユーティリティルームがある。

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こちらは物干し、洗濯物をたたむ作業台、アイロンをかける台、収納といった機能が集約された空間で、洗面脱衣室とLDKのバッファーゾーンの役割も果たす。

作業台の下は可動棚になっており、こちらには普段使いの衣類やタオルなどを収納。奥様は可動棚の高さを調整しながら、ちょうどいいサイズの収納ケースをそろえ、使いやすいように整えたという。

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3畳の洗面脱衣室は右手に洗濯機とガス衣類乾燥機「乾太くん」が設置されており、左手には幅約1.8mの洗面台が造作されている。

洗面台はアイカ工業のスタイリッシュカウンター。水に強いメラミンポストフォームのカウンターはメンテナンス性が高く、近年人気が高い洗面台だ。

シンプルな洗面台に合わせ、照明は主張しないブラケットライトを、壁のフレンチヘリンボーンのタイルは白を選んでいる。

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「朝2人同時でも使えるように、広い洗面台と大きめの鏡を希望して造作して頂きました。娘と3人で並んで使うこともあります。あと、洗面脱衣室には収納を多く設けて頂いたので、下着や部屋着などはここにまとめています。乾太くんもあり、家事がとても楽になりましたね。洗面台の前の白いタイルは、いづみさんに提案して頂いたものがいいなと思って選んだものです」と奥様。

 

空とイチョウを眺める、3階のベッドルーム

さらに階段を上がった3階には、個室と収納スペースが配されている。

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リビングの真上に位置する主寝室は7.5畳。プライバシーを考慮して窓は少し高めに設計しているため、ロールスクリーンを開放して寝ていても外から見られることはない。

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ベッドからはちょうどイチョウの木と空だけを眺めることができ、地上レベルから離れた寝室にはとてもリラックスした時間が流れていた。

廊下沿いには2室に分けられる10.5畳の子ども部屋。奥には洗面台とトイレがある。

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建具はすべてKAMIYAのフルハイトドアが採用されており、開放すれば廊下と部屋がダイナミックにつながる。

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「建具ははじめ木目調がいいかなと思っていたんですが、最終的に坂本さん夫婦にお薦めして頂いた白を選びました。この白がすごく良くて、これにして正解でした」(ご主人)。

廊下には2本の物干しが吊り下げられており、こちらはベッドの敷きパッドなどの大きなものを干すのに重宝しているという。

 

スケルトン・インフィルの発想で、将来の改築も自由に

しっかりとした構造計算に基づき、頑強な構造をつくり出すSE構法で実現した3階建ての住まい。Kさん夫婦はその快適さはもちろんのこと、安心感にも魅力を感じながら暮らしている。

また、家の温熱環境の良さにも満足しているという。

「建て替え前の家は、吐く息が白くなるくらい冬場は寒い家でした。それが今は、朝起きた時から家の中が暖かいんですよ。前に使っていた厚い部屋着が要らなくなりましたし、毛布を何枚も重ねることもなくなりました。家の中の温度差がなく、お風呂に入る時に暖かいのもいいですね。あと、梅雨時以外は家の中で洗濯物を干していてもよく乾きます」と奥様は話す。

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「高い耐震性を持たせながら、開放感をつくり出したい」というKさん夫婦の要望に対し、坂本さん夫婦は敷地を合理的に使いきれる、間崩れのないシンプルな矩形のプランを提案。

強い基礎と構造躯体を持つSE構法は、一般的な在来の木造軸組工法よりもコストは上がるが、シンプルな架構により全体的な建築費がうまく抑えられているのもポイントだ。

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坂本真人さんは「昔、鉄骨造の建物のリノベーションをした時、空間内に柱や耐力壁がないので、自由に間取りを変えられたんですよ。木造でも同じようにできたらいいなと思ったことも、当社がSE構法を導入した理由の一つです。K様邸も数十年後にリノベーションをしたくなった時には、スケルトン・インフィルの考え方で自由度の高いリノベーションができます」と、SE構法の可変性の高さについて話す。

22坪という狭小地で、高い耐震性能を確保しながら、十分な居住スペースと駐車スペースを確保したK邸。街なかの狭小地という課題を見事に解決した新しい住まいで、Kさん家族はイチョウの木と共に気持ちよく暮らしている。

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K邸
三条市
延床面積 143.24㎡(43.33坪)※インナーガレージ含む
竣工年月 2022年11月
UA値=0.41(HEAT20G1)
構造 SE構法
耐震等級3(許容応力度計算)
設計・施工 SUITE HOMES 株式会社 坂本建築設計事務所
(写真・文/Daily Lives Niigata 鈴木亮平

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鈴木 亮平

新潟県聖籠町在住の編集者・ライター・カメラマン。1983年生まれ。企画・編集・取材・コピーライティング・撮影とコンテンツ制作に必要なスキルを幅広くカバー。取材・撮影で訪れた住宅は累計900軒以上(2025年1月現在)。