【エスネルデザイン】UA値0.22。小さな居場所が散りばめられた、快適な2階リビングの暮らし

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鈴木 亮平

新潟県聖籠町在住の編集者・ライター・カメラマン。1983年生まれ。企画・編集・取材・コピーライティング・撮影とコンテンツ制作に必要なスキルを幅広くカバー。累計800軒以上の住宅取材を行う。

エスネルデザイン村松さんの自邸プラン第5棟目

2024年1月、新潟市江南区旧亀田町に完成したW邸は、すっきりとした総2階の家。外壁は無塗装の杉板で仕上げられており、なんとも優しい表情を醸し出している。

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この家を設計したのは、住宅設計エスネルデザイン(三条市)の村松悠一さん。

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お施主様宅の経年変化などを入念にチェックする村松さん。

基本的なプランやボリューム、仕様は、以前紹介した燕市のこちらのお宅と実によく似ている。

【延床面積28坪|UA値=0.23】開放的な2階リビングでカフェのような居心地を満喫

その理由は、この2つの家がどちらも、村松さんが温めていた自邸プランをベースにしているから。

延床面積は約28坪で、HEAT20G3基準(UA値0.23以下)をクリアする高い断熱性能を備えているのが特徴だ。

実はこの村松さんの自邸プランをベースにした家は、2024年6月現在までに5邸(新潟県内4邸、群馬県内1邸)が完成しており、さらに現在建築中の家もある。

エスネルデザインの門を叩いた家族は、なぜ村松さんの自邸プランに惹かれるのか?その理由を今回取材に対応して頂いたご主人に伺った。

 

「この人に会わずに、家は建てられない」

「以前はこの近くのアパートで暮らしていたんですが、2人目の子どもが生まれると4人で暮らすには手狭に感じるようになりました。僕も妻もいずれは家を建てたいという思いがあり、住宅会社さんを巡り始めたんです。

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はじめは総合展示場に行き、大手ハウスメーカー3社で検討を始めたのですが、途中から『もう少し視野を広げたい』と思い、地元の工務店や設計事務所を調べるようになりました。その中で出合ったのが村松さんのブログだったんですよ。

ブログには住宅の性能に関することが体系的に載っていて、勉強目的で読み始めたんですけど、だんだんと『この人に会わずに家は建てられない…!』と思うようになっていました(笑)。

それで2021年の夏に村松さんに会いに行ったんです。他社を悪く言わない人柄にも惹かれ、村松さんに依頼することを決めました。

その後の打ち合わせでは、僕たちからはあまり要望は伝えなかったと思います。そもそも、これまで村松さんが設計してきた家が理想でしたので。

その後、村松さんから頂いたご提案が村松さんの自邸プランだったんです。その頃に同じ『自邸プラン』で工事が進んでいた『天野のエスネル』の見学会を訪れると、妻も『めちゃくちゃかっこいい…』と言っていました。

ご提案頂いたプランに何か要望を加えようとも思ったのですが、何も思いつかなかったですね(笑)」とご主人。

そうして、第5弾となる村松さんの自邸プランをベースにした家づくりが始まった。

 

日射取得と日射遮蔽を考えた窓と軒のデザイン

Wさんが購入した土地は、亀田地区の昔ながらの住宅街にある、北西側と北東側の2面が道路に接する角地だった。

敷地の手前には2台分の駐車スペースと庭があり、背の高いモミジが植えられている。北西側ということで、窓は少なめだ。

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窓が多く設けられているのは反対の南東側で、冬場の日射をたっぷり取得できるように考えられている。

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しかし、窓を大きくすると、夏は日が入り過ぎて家の中が暑くなってしまうため、軒をしっかりと出し夏の日差しを遮蔽している。

建物手前の下屋もエスネルデザインの特徴的な要素。

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下屋は格子でぐるりと囲まれており、中には玄関へと通じる階段がある。程よく外からの視線が遮られたポーチにはアウトドア用の椅子が置かれており、ちょっとしたくつろぎスペースになっている。

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「ここでコーヒーを飲んで過ごすこともあります。視線が気にならないのがいいですね。それから、この階段の下は雨が当たりにくいので、車のタイヤや庭の道具を置くのに重宝しています」(ご主人)。

 

床下には高さ1.4mの巨大収納スペースが

木製断熱ドアを開けたところがこちら。

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右手には2階へと続く階段、正面には個室があり、左手には床下空間へと降りる階段が配されている。

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サイドの壁には可動棚が取り付けられており、バッグやコート、お子様たちの保育園の道具など、普段使いのものを置く場所として活用しているのだそう。

「冬にはスキー板やスキーウエアもここに置いています」(ご主人)。

階段を降りたところは高さ1.4mの床下空間で、こちらもエスネルデザインの基本仕様の一つ。

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外気に接する基礎の内側はフェノールフォーム断熱材で徹底的に断熱されており、他の部屋と同様の快適な温熱環境がつくられている。

「この空間にスキーの道具やキャンプ道具、車関係の道具やキャリアなどの大きなものを置いています。とても便利ですし、この空間がなかったら快適に暮らせなかったと思います。床面積に含まれないため固定資産税もかかりませんし、子どもたちが走り回って遊ぶ場所にもなっていますね」とご主人。

 

使いやすさと省スペース化を両立した1階

47.32㎡(約14坪)の1階は、玄関の他に、2部屋に仕切れる7.7畳の子ども部屋、5.7畳の主寝室、3.7畳のマルチWIC、そして、浴室とトイレが配されている。

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玄関ホールに面した子ども部屋は、仕切らずに子どもたちの遊び場として使っており、少し高めに設けられた窓のすぐ外には庭木が顔をのぞかせている。

その隣が主寝室。

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WICを兼ねた寝室は熟睡しやすいように暗めの漆喰壁で仕上げられている。こちらはご主人がご両親と一緒に2日掛かりでDIYをしたものなのだそう。

そして、廊下を挟んだ向かい側には、村松さんが提唱する「マルチWIC」がある。

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マルチWICは、洗濯・物干し・収納・洗面・脱衣の機能を1カ所に集約した空間で、これにより家事の時短や省スペース化を実現している。

また、空調計画がよく考えられているのもエスネルデザインの家の特徴で、複雑なダクトを使うことなく全館空調を可能とする。さらに、このマルチWICにエアコンを設置し、空気の通り道にすることで洗濯物がよく乾くようにしているのも注目すべき点だ。

ちょうどエアコンの前に物干しパイプがあるため、エアコンからの風で洗濯物がよく乾くし、冬場の過乾燥を防ぐのにも効果を発揮する。

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壁に沿って伸びる作業カウンターの下はすべて可動棚になっており、乾いた洗濯物はたたんでこちらに収納。また、乾いた服の一部はハンガーにかけたまま、すぐそばの寝室のクローゼットに持っていくことで片づけ作業が完了する。

洗面台の下に見える白いボックスは、階循環ファンと呼ばれる送風機で、1階の空気を床下へと送り込むためのものだ。

床下に送り込まれた空気は階段部分の吹き抜けから再び2階まで上がり、マルチWICのエアコンの上に設けられた小さな吹き抜けから戻る(=循環する)仕組みになっている。

あらゆることを効率よく解決する設計は、よく考えられた回路のようだ。

 

デイベッドに籠もり部屋…。落ち着ける小さな空間

玄関横の階段を上がっていくと、2階のLDKに辿り着く。

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檜の床に、ストライプ模様が美しい杉の幅はぎ材の天井、左手には畳スペースが広がっている。

大きなFIX窓から景色がよく見えるが、ここで使われている窓は太いサッシ枠を持つ樹脂窓だ。

樹脂窓を普通に施工すると白いサッシ部分が目立ってしまう。そのため、サッシを壁に埋め込む納め方にして、あたかもガラスだけがはまっているように見せているという。

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そんなこだわりの窓からの景色を真正面に眺められるソファの配置も、村松さんが設計段階で決めていたものだ。

「ここに座って空を見上げて過ごすことが多いです。電線に止まっているスズメを見たり、流れる雲の形を見たり。そういう時間が増えたせいか、この家に住んでから気持ちが穏やかになりました」(ご主人)。

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ソファの後ろは、村松さんの自邸プラン定番のデイベッド。幅は内寸で2mあり、ここで横になって過ごすことができる。

さらに1段上がった1畳の空間は、階段上のスペースを利用した“籠もり部屋”だ。

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「デイベッドでは、子どもたちがままごとをしたり、YouTubeを見たり。窓の外をよく見ていて、犬の散歩をしている人がいると『ワンちゃんが来たよー』と教えてくれます。籠もり部屋は、僕がたまに一人でお酒を飲むのに使っています。子どもたちにすぐに見つかってしまい、一人になれないことが多いですが(笑)」とご主人。

このようなちょっとしたプラスアルファの空間が、日々の暮らしに楽しい時間をもたらしている。

 

本棚に囲まれた作業スペース

畳スペースからキッチン側を見たところがこちら。

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開放的な勾配天井の空間が真っすぐ長手方向に伸びており、コンパクトに見える外観からは想像できない広がりが感じられる。

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階段を挟んで右手側にデイベッドが設けられていたが、左手にも小さなスペースがある。本棚に囲まれた空間で、村松さんは「ワークWIC」と呼んでいる。

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ワークスペースでありながら、WICの機能も備えた空間だ。本棚と寝室が融合したブックホテルのようでもあり、デイベッドや籠もり部屋とはまた異なる空間体験を味わえる。

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ダイニングやキッチンが棚越しに見えるため、物理的な距離以上に心理的な距離を確保できる。少し家族から離れて作業をしたい時には、ちょうどいい居場所になりそうだ。

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ちなみにデスクの後ろは箱階段になっており、ここからロフトへと上がることもできる。そして、箱階段を挟んだ奥側にももう一つ造作デスクが備えられている。

 

住まいに溶け込む天然木のキッチン

2階の奥に配されたキッチンは、下がり天井の落ち着いた空間。

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コルクの床や、ウッドワン社のパイン材でつくられたキッチンが、自然素材が多用された空間によく似合う。正面に見えるキッチンパネルは広めに張られており、よく使うラップやアルミホイルをマグネットラックに入れて収納。油はねしにくい場所は、お子様の作品を飾るスペースだ。

「〇〇調みたいな素材をなるべく使いたくなくて、天板はステンレス、面材は天然木で仕上げられたウッドワンのキッチンにしました。AEG(アーエーゲー)の食洗機は中にリフトが付いているので、腰をかがめずに使えるのがいいですね」(ご主人)。

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キッチンと同一直線上にあるワークWICの半分は、パントリー兼ピアノスペース兼作業スペース。雑多になりがちなパントリーが来客から見えない位置に配されているのも設計のポイントだ。

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また、ロフトは収納スペースとして使えるだけでなく、高い位置にあるエアコンのメンテナンスをする上でも重宝しているという。

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快適な温熱環境の中で、整う暮らし

この家の感想をご主人はこう話す。

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「2月の頭に住み始めたんですが、家に入った瞬間から暖かかったです。家の中で温度差がないですし、エアコンの風が直接体に当たることもありません。

それから、賃貸に住んでいた時は窮屈でリビングに物があふれていましたが、この家に住んでからはきれいに片づけられるようになりました。気持ちも大らかになりましたね。外出することが減り、家の中で子どもたちの写真を撮ることが増えました。

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夜に夫婦でお酒を飲んで過ごす時間も楽しみになりましたね。

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あとは、庭仕事をするようになりました。外で作業をしていると近隣の人から声を掛けてもらえるんです。そんな時に、この地域の一員になれたんだな…と実感します。今後は家庭菜園も始めたいですね」とご主人。

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延床面積28坪の総2階。床面積だけを見れば決して大きくはない家だが、2階に上がればとても開放的な空間が広がっている。そしてそこには、家族が思い思いにくつろげる小さな居場所が散りばめられている。

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村松さんが提唱する自邸プランをベースにしたW邸。

HEAT20G3グレードの断熱性能に、耐震等級3の耐震性能。安全性・快適性・省エネ性を突き詰めた上で、多様な家族の暮らしを受け止める度量の大きさがある。

ハイスペックで普遍的な村松さんの『自邸プラン』シリーズは、エスネルデザインの想いが詰まった特別な規格住宅のようだ。

 

W邸
新潟市江南区
延床面積 94.62㎡(28.6坪)
竣工年月 2024年2月
UA値=0.22(HEAT20G3グレード)
耐震等級3(許容応力度計算)
設計 住宅設計エスネルデザイン
施工 株式会社mokusia
(写真・文/Daily Lives Niigata 鈴木亮平

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鈴木 亮平

新潟県聖籠町在住の編集者・ライター・カメラマン。1983年生まれ。企画・編集・取材・コピーライティング・撮影とコンテンツ制作に必要なスキルを幅広くカバー。累計800軒以上の住宅取材を行う。