【延床面積28坪|UA値=0.23】開放的な2階リビングでカフェのような居心地を満喫

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鈴木 亮平

新潟県聖籠町在住の編集者・ライター・カメラマン。1983年生まれ。企画・編集・取材・コピーライティング・撮影とコンテンツ制作に必要なスキルを幅広くカバー。累計800軒以上の住宅取材を行う。

家を建てることを勧めない建築士との出会い

燕市の商店街に近い、昔ながらの住宅街に新築をしたIさん夫婦。

家を建てた場所はご主人の実家の敷地内で、すぐ南側にはご主人の両親が暮らす家が立っている。

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延床面積27.8坪の総二階の家の平面はシンプルな長方形。その外側にポーチとベランダがくっついた構成だ。

「超高断熱の小さな木の家」をコンセプトに掲げる住宅設計エスネルデザイン(三条市)・村松悠一さんが設計を、高断熱住宅を手掛ける有限会社大恭建興(長岡市)が施工を担い、UA値=0.23(HEAT20 G3基準クリア)という非常に高い断熱性能を持つ住宅が2022年の夏に完成。耐震性能も高く、最高等級の3(積雪1.2m、許容応力度計算)をクリアしている。

完成からちょうど1年が経過した2023年の8月上旬にI邸を訪れた。

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「家づくりを考え始めたのは子どもが生まれた頃です。住んでいた2DKのアパートは冬寒く夏は蒸し暑かったですし、冬場の結露で窓回りにはカビも多少見られました。部屋にベビーサークルを置くと居場所がほとんどなくなり、閉塞感があったのも悩みでしたね」とご主人は以前のアパートでの課題を話す。

そして最初に総合住宅展示場に足を運んだという。「でも行ってみると営業色の強い対応に疲れてしまって…。その後はネットで検索していくことにしました。調べる中で住宅性能の重要さを知り、やがてエスネルデザインさんのブログにたどり着いたんです」とご主人。

隣の三条市に事務所を構えていることや、年齢が近いこともあり、相談メールを送ることにした。

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「村松さんのWEBサイトを読んで共感したのが『新築を勧めない』と書かれていたことでした。アパートは快適ではありませんでしたが、僕は賃貸暮らしでもいいかなと思っていたからです。それでもあえて建てるなら、村松さんが考えるように『コンパクトで高性能な家』にしたいと思いました。大きい家への憧れもありませんでしたので」(ご主人)。

 

プロの自邸計画をベースにしたプラン

最初に相談メールを送ってから設計が終わるまでの期間は約1年。Iさん夫婦は村松さんに対して大きな要望は出さなかった。

「村松さんの考え方に共感していたので、全体的なことはほとんどお任せしました。ちなみにこの家のプランは、村松さんが『自分の家を建てるならこうしたい』という形がベースであり、自分たちはそこに乗っかるような気持ちでした」とご主人。

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「あえて言うなら、居心地のいい場所がたくさんある家にしたいと思っていたので、窓辺のカウンターやベンチ、デイベッドが欲しいとお伝えしました。私はカフェ巡りが好きで、中でも三条市内にあるITOYA CAFEの窓に面したカウンター席がお気に入りなんです。そのイメージをお伝えしました。あと、新婚旅行で泊まった宮古島のホテルにデイベッドがあって、ソファ以外にもくつろげる場所があるのがいいなと思っていました」(奥様)。

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そのようにしてこだわりのスペースをしっかりと叶えてもらいながらも、「あまり口出ししない方がいいものができる」と考え、多くのことを村松さんに委ねることにしたという。

 

無塗装の杉板外壁の経年変化を楽しむ

「プロの提案に乗っかる」というスタンスで進められた家づくり。暮らし始めて1年が経った住まいを見せて頂いた。

外壁は無塗装の杉板が張られており、1年が経って色が部分的に灰色に変化している。

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「今はまだらですが、やがてグレー一色に変化しますよ」と村松さんが説明してくれた。

グランドカバーに植えられたコグマザサも1年が経ち地面を覆い隠すようになった。「数カ月前までは地面が見えていましたが、今年の梅雨以降に急に成長しました」と奥様。

カーポートは元々立っていたものをそのまま活用。そこからほとんど雨に濡れることなくスムーズにポーチに入れる設計だ。ポーチ内は格子で目隠しされているので、玄関が外から丸見えになることもない。

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実家がある南側から見た外観がこちら。EN GARDEN WORKの小川俊彦さんによって植えられた3本の木が1階の窓を隠すように植えられている。

左から、カツラ、イロハモミジ、アカシデ。いずれも落葉樹であり、四季折々の表情を見せてくれる。まだ手を付けていない庭全体の植栽はこの秋に行うのだそう。

 

コンパクトな中に機能が凝縮した玄関

一般的なものよりも基礎が高めに設計されているのがエスネルデザインの住宅の特徴。ポーチの階段を8段上がったところに玄関ドアがある。

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ドアを開くと、目の前にはコンパクトに見える外観からは想像できない開放的な空間が広がっていた。

入ってすぐ右手側の天井高を上げていて、そこはそのまま階段上の吹き抜けとつながっている。

生成り色のような壁はAEPと呼ばれる水性塗料で仕上げたもので、マットな質感が特徴だ。その白過ぎない曖昧な色味が床の桧の無垢フローリングと調和し、なんとも穏やかな雰囲気をつくり出している。

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玄関右手はオープンな収納スペース。長さ約1.8mのハンガーバーに可動棚、有孔ボードと各種収納が1畳程の空間に干渉しないようにまとめられている。

いずれも使い方の自由度が高く、ギミックがよく考えられた多機能なギアのようだ。

「家に入ってすぐにリュックやバッグ、コートなどが掛けられて便利ですね。丸見えになっているので、私たちのように“隠さなくてもいい”と考える人に合っていると思います」(奥様)。

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さらにそこには床下へとつながる階段も配されており、下りれば天井高1.4mの広大な収納スペースが広がっている。

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I邸の床下空間。(竣工時の写真)

「床下空間の存在はとても大きいです。非常時の備蓄や、季節物、アウトドア道具や娘が赤ちゃんの時に使っていたものなどを入れています」(奥様)。

頻繁に使うことはないが、保管はしておきたい。そんなものたちが居住スペースと明確に分かれた空間に隠されていた。

 

洗濯物がすぐに乾くマルチWIC

1階の南側には将来的に間仕切り壁をつくって2室に分けられる7.5畳の子ども部屋、クローゼットを兼ねた5.25畳の寝室が並び、北側には階段とその下に配されたトイレ、浴室、そして村松さんが“マルチWIC”と呼ぶ多機能な洗面脱衣室がある。

下の写真は壁一面をオープンなクローゼットにした5.25畳の寝室。

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すべり出し窓を外側から覆っているのはカツラの木。プライバシーを確保すると共に癒やしを与えてくれる。

「エアコンで夏も冬も快適な温度に保たれるので、1年を通して掛け布団は1枚だけ。冬用の布団を保管する必要がなくなりました」と奥様は話す。

そして、寝室と廊下を挟んで反対側に3.5畳程のマルチWICがある。

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手前には杉の幅はぎ材で造られた造作洗面台。左手奥が物干しスペース兼脱衣所で、脱衣スペースを隠すように収納棚が造作されている。

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洗濯物の多くはドラム式洗濯乾燥機で一気に乾燥までさせるが、縮みやすいお子さんの服などは同じ空間にある物干しバーで干すという。

「壁に設置されたエアコンの風と、天井に付けられた“階循環ファン”からの風で、夏でも冬でも2~3時間で乾きます」と奥様。

“階循環ファン”とは村松さんが採り入れている空気を循環させるためのファン(送風機)の一つ。I邸では2階から1階へ、1階から床下へと送風するためのファンが設置されており、複雑なダクトを使うことなく空気が家中を循環するようにしている。

“全館空調”というとダクトを使って家中に空気を巡らせる仕組みをイメージしがちだが、エスネルデザイン流の全館空調は、家全体を空気の通り道にする考え方であり、とてもシンプルだ。

「はじめはベランダで洗濯物を干そうと思っていましたが、このマルチWICで物干しや収納ができるので、結局ベランダでは一度も物干しをしていません」と奥様は笑う。

 

カフェのような時間を過ごせる2階のカウンター席

次に、階段を上がり、I邸のメインの空間である2階へと向かった。

こちらが階段を上がり切ったところから見た2階全景。

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個室が配された1階とは対照的に、仕切りが少ない開放的な空間が広がっていた。

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入って左手がわずかに段差があるリビングで、ソファが置かれている場所は桧の無垢材、それ以外の3畳はリラックスして過ごせる畳スペースになっている。

そして、大きなFIX窓が連なる南側の窓辺にはベンチとカウンターが造作されている。

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「窓が大きく開放的で、アパートの時のような息苦しさがありません。以前はカフェに出掛けるのが好きでしたが、今は家がカフェのような場所になりました。このベンチに座って外を眺める時間が好きです。春に葉っぱが芽吹いたな…とか、緑が濃くなってきたな…と、目の前の木々を見て季節の変化を感じられるのがいいですね。子どももここでよく空を見上げては、飛行機などを見つけるたびに教えてくれます」(奥様)。

 

一人になりたい時に重宝するデイベッド

ソファの後ろの少し高い位置にあるのが、奥様が希望したデイベッド。

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籠り感のある2畳のスペースでは、栂(ツガ)の羽目板や杉の幅はぎ材に包まれながらくつろげる。「完全に仕切られているわけではないですが、ちょっと一人になりたい時にいいスペースです」と、ご主人もこの小さな空間を楽しんでいる。

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そこから1段上がったところには、さらに光が抑えられた1畳の空間がある。そこは奥様が動画を見たい時などに使っているという。

 

書斎と収納を融合させた“ワークWIC”

リビングからキッチンまで勾配天井が続いており、延床面積28坪の総二階の家とは思えない広がりが感じられる。

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ベンチに座れば、ちょうどこの2階の隅々までを見渡せて、とても気持ちいい。

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2階の北側にはロフトが設けられており、その下の右半分は家族みんなの作業スペース、左半分はキッチンから連続するパントリーとして使っている。

この書斎と収納をまとめた一角を村松さんは「ワークWIC」と呼ぶ。

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「子どもが大きくなったらここを勉強スペースにしたいです」と奥様。

天井が低く本棚に囲まれた空間は、ダイニングとつながっていながらも先程のデイベッド同様に籠り感がある。デスクの隅には奥様の化粧道具が置かれており、普段はドレッサーとしても活用しているという。

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コーヒーを淹れる時間も楽しくなる

キッチンは2階全体を見渡せる対面型。

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メーカー既製品と造作家具をバランスよく組み合わせたキッチンだ。

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「カフェのような雰囲気にしたくて、壁側には飾り棚だけを付けて頂きました。すぐそばにパントリーがあるので、吊り棚がなくても収納は十分確保されています」と奥様。

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杉材で造られた棚にはお気に入りのカップやコーヒーの道具が並んでいる。「この家に住んでからコーヒーを淹れたり、お菓子を作ったりする時間が好きになりました」(奥様)。

キッチンの隣にはパントリーがあり、そこから箱階段のような棚を上がればロフトに至る。

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栂の天井を間近に眺められるロフトは、同じ2階の中でも隠れ家のような空間。

窓辺のカウンターにデイベッド、ワークスペースにロフト…。開放的なワンルームのようにも見える2階は、ただ広いだけでなく、籠りながら過ごせる小さなスペースも豊富に用意されている。

 

高性能×コンパクト×2階リビングの魅力

最後に2階リビングの魅力や気をつけなければならないことを聞いてみた。

「魅力はやはり外の目が気にならないことです。ロールスクリーンを開けていても、外を歩く人と目が合うことはありません。そもそも住宅が密集している地域なので、2階リビングにして頂いて良かったと思います。それから、水回りが1階にあって、生活感が出にくいのも特長です。注意しなければいけないのは、子どもが寝室で寝ている時、その真上のキッチンで足音を立てないようにすることでしょうか」と奥様。

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ご主人は「僕は栂を張った勾配天井が気に入っています。夜天井を眺めながらボーっとするのが好きなんですが、このように屋根なりの勾配天井にできるのは2階リビングだからこそですね。2階リビングの課題は、冷蔵庫やソファなどの大きいものを搬入しにくいことです。冷蔵庫を入れる時は大恭建興さんに来て頂き、階段の手すりを外して運んで頂きました」と話す。

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また、高い断熱性能にも満足して暮らしているという。

冬場は外気温が氷点下になる日でも、上下階共に22~23℃をキープ。寒波の日にバスタブに張っていたお湯が、次の日の夕方になってもぬるいままだったことに驚かされたという。

「そもそも省エネ性能が高い家ですが、太陽光発電を載せているので夏場は電気代を気にすることなくエアコンを使っています。除湿がはかどるように、設定温度は低く、風量は最小に。そうすることで、家の中を冷やし過ぎず湿度を下げられ、快適に過ごせています」と、ご主人はエアコンの使い方も工夫している。

「今はまだ子どもが小さいため、安全のためにいろいろなところに柵を設置していて、家が本来の姿にはなっていません。これから子どもが成長し、家中を自由に使えるようになるのが楽しみです。その時にはさらに家の魅力を実感できると思います」とIさん夫婦。

エスネルデザインが提唱する『コンパクトで高性能な家』。それは高い合理性はもちろんのこと、開放感や心地良さなど感覚的にも高い満足感を得ることができる。

「庭ができ上がったら外でバーベキューをするのも楽しみですね」と奥様。新居での楽しみは今後さらに広がっていきそうだ。

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I邸
燕市
延床面積 91.48㎡(27.8坪)
竣工年月 2022年7月
設計 住宅設計エスネルデザイン
施工 有限会社大恭建興
(写真・文/Daily Lives Niigata 鈴木亮平


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鈴木 亮平

新潟県聖籠町在住の編集者・ライター・カメラマン。1983年生まれ。企画・編集・取材・コピーライティング・撮影とコンテンツ制作に必要なスキルを幅広くカバー。累計800軒以上の住宅取材を行う。