【加藤淳設計事務所×文京田中建設】南北に視線と風が抜ける、爽やかなリビング

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鈴木 亮平

新潟県聖籠町在住の編集者・ライター・カメラマン。1983年生まれ。企画・編集・取材・コピーライティング・撮影とコンテンツ制作に必要なスキルを幅広くカバー。累計800軒以上の住宅取材を行う。

住宅街にそっと佇む白の家

燕市内に新しくできた分譲地。その中でも南北方向に長い土地を購入し、Nさん夫婦は家を建てた。敷地の手前には3台分の駐車スペースがあり、その奥に高さを抑えた2階建ての白い家が立っている。

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カーポートのすぐ後ろには目隠しのための木塀。その奥に小さな庭と三角形の軒が架かったウッドデッキがある。

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建物の大部分は白い金属サイディングで覆われているが、ポーチ部分だけは杉板で仕上げられており、その優しい表情の壁がゲストを迎えてくれる。

砂利が敷かれたアプローチに1本だけモミジが植えられている様子は、枯山水庭園のようだ。

「以前は燕市内のアパートに住んでいました。1人目の子どもが生まれてからは何とか暮らしていましたが、2人目が生まれるといよいよ手狭になりそうだと思い家づくりを考え始めたんです」とご主人。

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住宅情報誌を見たり、インターネットで調べたり、総合住宅展示場に足を運んだりしながら候補を絞っていき、最終的に住宅情報誌で見つけた加藤淳設計事務所に依頼することを決めたという。

「僕たち夫婦は2人ともフルタイムで共働き。それで、家事がしやすい家を建てたいと思っていました。加藤さんも共働きで普段から家事をしていると聞き、その実感を元に提案してくれると思いましたし、加藤さんが僕たちの要望を受け止めて設計をしてくれそうだと感じたことが決め手になりました」(ご主人)。

「安心できる家に住みたいと思っていたので、加藤さんが耐震等級3を標準仕様にしているのもいいなと思いましたね」(奥様)。

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「他社さんでは『耐震等級2相当です』とか『ご希望があれば耐震等級3に上げることもできます』と聞いていたので、そこは大きな違いかなと思います」(ご主人)。

 

収納スペースを兼ねた一直線の廊下

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軒を支える壁の奥に引き戸タイプの玄関ドアがあり、そこを開けると廊下が真っすぐ奥へと伸びている。

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床は幅広で重厚感があるオークの挽き板のフローリング。

奥に見える廊下の両サイドにはロールスクリーンで目隠しできる収納があり、ただの通路ではなく、ウォークスルークローゼットとしての役割も果たしている。

廊下をさらに奥に進むとトイレと洗面スペースがあり、突き当たりを右に曲がると脱衣室と浴室に至る。

玄関はシューズクロークのないすっきりとしたシンプルな空間。サイドに設けられた窓からの光が心地よく、明るい色味のシナ合板の下足入れが調和している。

シューズクロークの代わりに、建物左手には1畳分の外部収納が備えられており、車のタイヤや除雪道具をはじめ、家の中に持ち込みたくないものをすっきりと格納できる。

ドアを開けた時に、玄関内から見える板張りの壁も、なんともほっとした気持ちにさせてくれる。

(↑中央の矢印を左右にスライドすると、ドアを開閉した状態を比較できる。)

 

クローゼット・洗面・物干しが短い距離でつながる

こちらがウォークスルークローゼットとしての機能を持つ廊下。

(↑中央の矢印を左右にスライドすると、ロールスクリーンを開閉した状態を比較できる。)

ロールスクリーンを下ろせばすっきりとした廊下だが、開放すれば大容量の収納スペースが現れる。服はもちろん、子どもたちの保育園のバッグなどもこちらに収納しているそうで、この家に住んでから、子どもたちの朝の準備がスムーズになったのだそう。また、掃除機を充電しながら保管するスペースも確保されている。

「干した洗濯物をハンガーに掛けたまま片づけられるのが便利ですね」とご主人。

その奥にある洗面スペースは、高窓からたっぷりと光が入る明るい空間。2人同時に並んで使えるように、幅約1.3mとゆとりある広さが確保されている。

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木製の天板に底の深い実験用シンクが取り付けられた造作洗面台は、汚れたものを手洗いするのにも重宝しているという。

水はねしやすい場所に張られたグレーのモザイクタイルも、木製の洗面台によく似合っている。

洗面スペースの後ろのドアを開けたところは物干しスペースを兼ねた脱衣室。

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約2.5畳の空間に2本の物干しがあり、ここで室内干しができるし、掃き出し窓を開けたところには、加藤淳さんが設計する家でよく見られる、格子に囲まれた外部物干しも設けられている。

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格子で目隠しをしながら外の風に当てて乾かせるのが、この物干しの特徴だ。

 

4つのスペースにゾーニングされたLDK

一度玄関ホールまで戻り、そこからすぐ右手に入ったところが、この家のメインの空間であるLDK。

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約18畳のLDKは、6畳のリビングと、3畳の小上がり+押入、4.5畳のダイニングと4.5畳のキッチンで構成されている。

キッチンは室内全体を見渡せる対面型で、水回りへとスムーズに移動できる場所に設けられている。

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対面キッチンは手元を隠せるようにやや高めの腰壁で囲われており、背面には吊戸棚が造作されている。

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「以前住んでいたアパートでは開き戸タイプの吊戸棚が付いていたのですが、それが使いにくかったので引き戸にして頂きました」とご主人。透明のポリカーボネートが使われた引き戸は、中に入っているものがそれとなく分かるのも特徴だ。

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吊戸棚の下には調理家電が並ぶカウンターが造作されており、その下にはNさん夫婦が以前から使ってきたキャビネットが置かれている。

キッチン脇につくられたパントリーや、ミーレの食洗機も重宝しているという。冷蔵庫がすっきり納まるスペースも確保されている。

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ウッドデッキとつながる南向きのリビング

リビングはキッチンと横並びの空間で、南側の大きな掃き出し窓からは気持ちいい日差しが注いでいた。

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テレビは壁掛け式。レコーダー類を入れるスペースは壁に埋め込む形にして、部屋を広く使えるようにしている。

「いずれソファを置きたいですが、リビングで子どもたちが走り回って遊んでいるので、もう少し大きくなってからにしようと思っています」(ご主人)。

窓を全開にすれば、庭に突き出したウッドデッキへと空間が拡張する。

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「デッキではたまにごはんを食べたり日向ぼっこしたりしています。夏には庭にプールを出して遊んだりもします。

前に住んでいたアパートはリビング以外の部屋が暗く、鬱屈した気分になりやすかったですが、この家は南北に抜けていて気持ちいいですね」(奥様)。

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LDKの南北に窓を設け、視線が遠くへと抜けるようにする設計は加藤さんが得意とする手法。その際に、外から部屋の中が丸見えにならないように、塀や植栽、窓の位置などが入念に考えられている。

また、両サイドの窓を開ければLDK全体が風の通り道になるため、春や秋の中間期は自然の心地よさを一層感じることができる。

 

コーナーに設けられた、朝日が注ぐダイニング

LDKの北東側にゾーニングされた4.5畳のスペースがダイニング。楕円形のテーブルと丸みを帯びたペンダントライト『PERA』がやわらかい雰囲気をつくり出している。

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景色を広く切り取るコーナー窓は少し高めに設けられており、視線の抜けをつくりながらも落ち着いた雰囲気を醸し出している。

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また、その横のテラスドアを開ければ、北側の小さな庭へと出ることもできる。

「晴れた日の朝は東側の窓から日差しが入ってきて、ダイニングがとても明るくなり気持ちいいですね。アパートでは食事をする場所もくつろぐ場所も一緒でしたが、この家に住んで生活にメリハリがつくようになりました」とご主人。

ダイニングの横の小上がりは、現在は主に子どもたちのおもちゃコーナーとして使っているのだそう。

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奥は天井が高くなっていて、高窓から印象的な光が差し込んでいるのもこの小上がりの特徴。その下の押入の奥行は3尺(910mm)で、布団を楽に収納できる広さが確保されている。

設計をした加藤さんはLDKの設計意図について次のように説明する。

「LDKは、ダイニングとリビングを斜めに接するようにしてスペースを分けました。そうすることで、ダイニングからリビングへと視線が延び、より平面的な広がりを感じられるからです。また、小上がりの天井を小さな吹き抜けにすることでも広がり感をつくり出しています」。

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2階の奥には籠り感のあるワークスペースも

2階に上がると中央に廊下が伸びており、その右側には7.5畳の主寝室、左側には4.5畳の子ども部屋が2室配されている。

奥にあるのはファミリークロークとトイレ、ワークスペース。床は明るい色味とはっきりとした木目が特徴のアッシュ材で仕上げられている。

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主寝室に入ると、どことなく他の部屋と異なる雰囲気が醸し出されているが、その理由は和紙の壁紙にあるようだ。天然の和紙ならではの揺らぎやマットな質感がしっとりとしたムードをつくり出している。

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奥は1畳のベランダ。床には半透明のFRPグレーチングを使い、1階の小上がりの高窓へと多くの光が注ぐようにしている。

4.5畳の子ども部屋の1室は子どもたちのおもちゃコーナー。コーナーに寄せられた高窓からの光が壁や天井に反射し、やわらかく室内を照らしていた。

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廊下を進み、突き当たりを左に曲がった場所に1坪のワークスペースがある。

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この家の中で最も奥まった場所にあるワークスペースは、高めのコーナー窓から光が入る明るい空間。L字型のデスクと本棚、デスクライトが造作されているため、椅子以外の家具は不要だ。

「加藤さんが描いて下さったワークスペースのスケッチが素敵で、そのまま造って頂きました」(奥様)。

「読書スペースとして使おうかなと思っていましたが、今は子どもたちの遊び場になっていますね。朝日が入る時間帯も気持ちいいですし、夜の雰囲気もいいですよ」(ご主人)。

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リラックスした時間が流れる住まい

「友達が遊びに来ると、ゆっくり過ごしていきますし、私たちも住んでいてとても気分がいいです。子どもたちもこの家が大好きで、家での時間を楽しんでいますね。

それから、施工をしてくださった文京田中建設の田中さんにもとても良くして頂きました。手すりを追加して頂いたり、私たちの要望に対して丁寧にご対応を頂きうれしかったです」(奥様)。

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東西に隣家が立ち並ぶ細長い土地に立つN邸は、南北方向の明確な軸があり、視線や風の抜けがきれいにデザインされている。さまざまな方位の窓から光が注ぐLDKは、自然と明るい気持ちになれそうな心地いい空気が満ちている。

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N邸
燕市
延床面積 108.90㎡(32.87坪)
1F 64.18㎡(19.37坪) 2F 44.72㎡ (13.50坪)
竣工年月 2022年10月
設計 株式会社加藤淳設計事務所
施工 文京田中建設株式会社
耐震等級 3(許容応力度計算)

(写真・文/Daily Lives Niigata 鈴木亮平

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鈴木 亮平

新潟県聖籠町在住の編集者・ライター・カメラマン。1983年生まれ。企画・編集・取材・コピーライティング・撮影とコンテンツ制作に必要なスキルを幅広くカバー。累計800軒以上の住宅取材を行う。