【インタビュー】家を「デザインする」のではなく「しつらえる」あかがわ建築設計室

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鈴木 亮平

新潟市在住のフリーランスの編集者・ライター(屋号:Daily Lives)。1983年生まれ。企画・編集・取材・コピーライティング・撮影とコンテンツ制作に必要なスキルを幅広くカバー。紙・WEB問わずコンテンツ制作を行う。

2017年に開業した設計事務所「あかがわ建築設計室」(新潟市中央区親松)。設計事務所で経験を積んだ一級建築士資格を持つ30代の赤川さん夫婦が営んでいます。

開業した2017年の年末には、自宅兼事務所も完成。1階が事務所で2階が赤川さん夫婦が暮らす住居。そして、そこはお客さんを招くモデルハウスとしての役割も持っています。

二人が手掛ける家の特徴は、大胆で分かりやすいデザインではなく、細やかな設計を積み重ねることで現れる美しさにあります。

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それは、言葉で説明することが難しいものですが、不思議と心が鎮まるような落ち着いた空間です。人があまりいない平日の美術館のような、静謐で穏やかな雰囲気に似ているような気がします。

つくり上げる建築と同様に穏やかでリラックスした空気感を持つ赤川さん夫婦にインタビューをしました。

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あかがわ建築設計室
赤川仁一さん・赤川(石塚)聖子さん

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赤川仁一さん
1982年生まれ。一級建築士・一級建築施工管理技士。神奈川県の大学で建築を学び、卒業後は新潟市内の設計事務所、住宅会社で経験を積み、その後2017年に独立。あかがわ建築設計室を立ち上げる。

赤川(石塚)聖子さん
1981年生まれ。一級建築士・一級建築施工管理技士。東京都内の大学で建築を学び、卒業後は新潟市内の設計事務所で経験を積み、その後2016年に独立。「scot」という屋号で設計施工をスタート。あかがわ建築設計室としても設計業務を行う。

 

<インタビュアー>
Daily Lives Niigata(デイリー・ライブズ・ニイガタ)編集部
鈴木亮平

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1983年生まれ。美術系の大学で建築デザインを学び、旅行情報誌、地域情報誌、住宅情報誌の編集を経て2018年にフリーランスの編集者に。住まいや建築士・工務店を紹介するWEBマガジン「Daily Lives Niigata」を運営。

 

それぞれが一級建築士資格を取るために夫婦で支え合う

鈴木:では、いつも同じ質問から始まるのですが、お二人の経歴を教えていただけますか?

仁一:神奈川の大学の建築学科を卒業して、2005年に新潟市内の設計事務所に入り約5年勤めました。その後、市内の別の事務所に移ったんですが、3年半働いてから退職し、一級建築士の資格を取るために半年間勉強に専念をしました。1回目で学科の試験に合格できたので、その後市内の別の住宅会社に入社。翌年には製図の試験にも合格し一級建築士資格が取れました。その住宅会社には約5年間勤めて、2017年7月に独立をしました。

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鈴木:一級建築士資格を取るために仕事を辞めるという決断がすごいですね!

仁一:働きながらだと仕事優先になってしまうと思って…。取らなきゃダメだなと思っていたので、スパっと辞めることにしました。ちょうど30歳くらいの時で、次の会社に行くか独立するかも考えていたんですが、どちらにしても資格がないと通用しないと思うようになっていたので。

鈴木:学科試験に合格した後は元いた事務所には戻らずに、別の会社に入ったんですね。

仁一:それまでデザインに強い会社にいたんですが、それとはまた違う知識を身に着けたいと思ったんです。次に入った会社が温熱性能に強かったり、不動産事業をやっていたりしていましたので。

鈴木:なるほど…。すごくいいキャリアの積み上げ方ですね。聖子さんの経歴を教えていただけますか?

聖子:私は東京都内の大学を卒業して、2004年に新潟市内の設計事務所に入り5年程勤めていました。

鈴木:その時にお二人は同じ職場で一緒に働いていたんですよね。

聖子:はい、その後、(夫が)次に入った事務所を勉強のために辞めることになり、そこに入れ代わる形で私が入りました。でも、私も一級建築士資格取得のために勉強したかったので、1年間だけという条件で働かせていただきました。1年後に辞めて、今度は私が勉強を始めて、2年目で一級建築士資格を取ることができました。

その後は別の会社に勤めることも考えたんですけど、自分のペースで働いてみたいという気持ちが強くなって。ゆっくり考える時間にしようと思っていた時に、親戚の小屋の補修を依頼されることがあったんです。時間があったので、施工にも携わったりしていました(笑)。

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仁一:だんだんとそういうことが仕事になっていったので、先に開業してもらったんです。

聖子:その期間に大工さんの手伝いとかもやっていましたね。

鈴木:職人さんがやる仕事をやっていたんですか?

聖子:年配の大工さんから「図面を解読するためにいてくれ!」と依頼されることが多かったですね。いてくれると安心、みたいな(笑)。でも、ぼーっと立ってるのもあれだから、施工の手伝いもしていたんです。知識はあるので難しいことでなければできるんです。

鈴木:一級建築士として設計をやりつつ、施工にも精通しているんですね。「設計事務所」という言葉のイメージから敷居の高さを感じる人もいると思いますが、小屋のお話はすごく親しみやすさを感じさせます。

 

主張するのではなく、しつらえる

鈴木:お二人が設計をする上で大切にしている考え方を教えていただけますか?

仁一:いろいろあるんですけど、僕らは大胆なことをあまりできないというのがあります。逆に、ちょっとした工夫で得られる体験を大事にしています。例えばこの家で言うと、アプローチの入り方を少し回らせて変化を付けたり、天井を少し低めに抑えることで落ち着いた雰囲気を出したり、窓の大きさや位置でバランスのいい庭とのつながりをつくったりとかですね。

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窓は、劇的に大きい窓を付けて「大開口!」みたいなことをしなくても、ちょっとした配置の工夫で心地いい光を採り入れることができます。

僕らの仕事は家をしつらえることで、あまり主張するようなことはしたくないですね。

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聖子:断熱性能を上げるとか、見栄えのする建材を使ってかっこよく見せるのは、お金を掛ければある程度できます。ただ、アプローチの設計や窓の位置というのは、材料費とは関係ない部分。そういう設計でできることをすごく大事にしていますね。

仁一:例えば窓の配置の工夫で、隣の家の庭木をきれいに見えるようにしたり、そこでこんな実がなるんだなあ…とか、日常でそんな発見が得られたらいいなあと考えながら設計をしています。あとは、何年も住んでいく中でだんだんと住む方の感覚になじんでいくようにしつらえていくようにしています。

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例えばお皿を作るのでも「ここに何を盛り付けるのか?」を考えて作るのと、「この大きさであればみんなが使いやすいだろう」と考えて量産するのとで違いがあるように、住宅はただのハコではないと考えています。ただ、先ほども話したようにあまり主張するようなつくり方もしたくない。そんな考え方でやっています。

あと、断熱や構造といった性能はもちろん大事なんですが、その度合いというのは住む方の要望に合わせて考えています。

鈴木:分かりやすいものを掲げるのではなく、赤川さんからはすごく繊細なものを感じます。僕はここにおじゃまするのが4回目くらいですが、来るたびに気づくことが増えていって、今日は今までで一番この空間の良さを味わえているように思います(笑)。入ってくる光も坪庭の見え方も広さも心地よくて。ずっとコーヒーを飲みながらゆっくりと座っていたくなるような。1回だけでは気づかない良さが隠されていると思うんです。

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二人分の経験を生かして、ブラッシュアップしていく

鈴木:夫婦で一緒に設計の仕事をされていますが、どのように役割分担したり連携したりしているんですか?

仁一:基本は、どーする?こーする?とケンカしながらやっています(笑)。役割分担で言うと基本設計を僕が担当していますね。

聖子:私が詳細設計をやっています。

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仁一:基本設計ができたらその意図を説明してチェックをしてもらい、アドバイスをもらって直したり。また、詳細を起こしてもらったら、「もっと枠は小さい方がいいかな?」とか具体的なやり取りをして決めていく感じですね。

一人でやってると悶々としたり自分の感覚だけになってしまいますが、「こうしたらどう?」とかヒントやアイデアをもらうことで新しい案が生み出せたりします。

聖子:私は「お客さんはこういうことを望んでるから、こういう風にすればいいんじゃない?」とアイデアは出すんですけど、自分ではどう形にしていいか分からないことがあります。あと、納まりについて、より良くできるようにやり取りすることが多いですね。納まりは経験に基づくものなので、二人でやることで二人分の経験から考えられます。

鈴木:なるほど。基本設計と詳細設計でうまく役割分担をしながら、さらに二人分の経験値が設計に反映されているんですね。住宅って一人の設計担当者がやるイメージでしたが、赤川さんは連携してブラッシュアップしていく仕組みになっているんですね。

 

37坪の土地に立つ、小さな事務所兼住宅

鈴木:次に、この事務所兼自宅について教えていただけますか?

仁一:実は最初は家を建てるつもりも事務所を建てるつもりもなかったんです。事務所はどこか借りることを考えていたんですけど、なかなか立地や費用、駐車場のスペースを考えたときにいい物件がなくて…。

聖子:あと、一番は事務所を借りてやると自分たちの表現がうまく伝わらないんじゃないか?という心配があって。

仁一:それで、どんなことができるのか見てもらえるように事務所を建てようか?という話になり、事務所を建てるんだったら住宅も一緒に作ってモデルハウスとして見てもらえたらいいかなということで、事務所兼自宅を建てることにしたんです。それに、自分の家だったらいろいろ試せるなというのもありましたね。

鈴木:それは例えばどんなことですか?

仁一:壁紙にクラック(ひび割れ)が入りやすい薄めのものを使ってみたり、玄関を作らないで靴のまま使える土間を広くつくったり、入口のドアをガラスが入った引き戸にしたり、大谷石を張ってみたり、ラワンベニヤの建具を作ったり、壁の上を開けて空間をつなげたり…とかですね。

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聖子:あまり好まれないようなこともしていますね。例えば窓はみなさん大きい方がいいと思われますけど、あえて高さを抑えたり、アプローチの天井を低くしてくぐるような感じにしてみたり…。お客さんの家だとクレームになってしまうかもしれないこともやっています(笑)。

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仁一:「やだな」と言われることも「こういうのもいいね」と言われることもあると思いますが、まずは見てもらいたいなと思っています。この窓の高さは1m50cm。床から少し上げているので1m60cmですね。

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鈴木:すごく落ち着いた感じがしますよね。

聖子:最近は天井まで高さがある窓が人気ですが、あえて窓の高さを抑えることで落ち着いた感じにしたかったんです。打ち合わせスペースなので、少し籠った感じの方がいいなと思っていて。あと、窓の外に見える庭は周りよりも30cm高くして室内の床のレベルと合わせているんです。それにより、室内とのつながりを出しています。

仁一:それから、敷地が37坪と小さく間口も8mしかない中で、車3台分の駐車スペースを確保して事務所兼住宅を建てなければいけないという制約がありました。その中で、小さいんだけどちょっとしたしつらえで広く感じられるようにしています。アプローチを回らせて長くしているのもそういう理由ですね。茶室と同じ考え方です。

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それから、小さい家の中で玄関をとるのがもったいないのと、玄関があることで境界ができてしまうのを避けるために土間の空間にしました。これによってすっと入りやすくなるようにしています。

コンクリート土間は冬は冷えるので、中に深夜電力で温める床暖房を入れていて、蓄熱したコンクリートで下からじんわり温まるようにしていますね。

鈴木:直接触れてる部分からあったまるのは本当に気持ちいいですよね。音や風がないことで空間の質が高くなっているのを感じます。

仁一:自然にいられるような、なじむような空間にしたかったので、天井にルーバーを付けてそこから照明の光が漏れるようなふわっとした明かりにしてみたり、あとは枠が主張しないように小さくしたりといったことにも気を使っています。

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鈴木:この隣が事務所スペースで、奥の階段から2階に上がれるようになっていますが、2階の住宅部分の特徴を教えていただけますか?

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仁一:まず空間が限られているので、リビングを無理につくらなくてもいいかなと考えました。それでダイニングを広めにとっています。勾配天井にしたことで、より広がりが感じられる空間になっていますね。あと、2階からの景色がよかったので、腰を掛けて眺められるように大きめの出窓をつくりました。

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自分が岩室の田舎の方の家で育ったんですけど、下に地袋がある出窓があって、よくそこに腰かけて本を読んだりしてたんですよね。窓際ってなんか落ち着くなあというのがあって。出窓を設けたのにはそんな理由があります。

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鈴木:この出窓は日当たりもいいですし、腰掛けたくなりますね。障子なので窓回りがすっきりとしてきれいですよね。広いので人が集まった時にも便利そうです。

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聖子:あと、水回りは脱衣室が普通の1坪のタイプですがあえてここに洗面台を設けないことで、空間を広くしています。

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洗面と脱衣が一緒になっているのが固定概念みたいになっていると思うんですけど、それを取り払って見てほしいなと思っていて。洗面台はキッチンとトイレの間にあるんですけど、外から帰ってきて階段を上がってすぐの場所にあるので手を洗いに行きやすかったりとか、トイレのあとの手洗いにもちょうどいい配置にしています。

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それから、私たちはキッチンはメーカーの既製品もいいと思っていますが、造作でこういうものも作れますよというのを見ていただけるように、あえてキッチンは造作にしていますね。

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鈴木:言われてみると洗面脱衣室というのが固定概念化していますよね。こうして洗面台がない脱衣室を見ると、すごくゆとりが感じられていいですね。

仁一:全体のことで言うと、細いアプローチを通って1階に入ると、そこは天井を低めにした空間なんですが、2階に上がると天井が高くなってぐっと広がりが出ます。その変化が体験できるようにしています。

ここは中央区のはずれの方で、街と田園の間のような場所です。モダンさを感じさせつつも、自然に佇むような感じがいいなと塗り壁にしました。屋根を変則的に折っているのは、優しく佇んでいるような雰囲気を出すためでもあります。

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鈴木:特徴的なのに不思議と主張しない外観ですよね。風景に溶け込んでいるような、昔からここにあったような自然な感じがしますよね。

最後に、今後の目標について教えていただけますか?

仁一:新築だけでなく、店舗やリフォームなどいろんなことをやっていますが、お客さんの悩みや思いを汲んで、一つ一つ大事につくっていきたいと思っています。設計事務所というと敷居が高い場所と思われてしまいがちなんですが、例えばリフォームをする場合などでも、身近な存在ととらえて気軽に声を掛けてもらえたら嬉しいですね。

聖子:「設計事務所=高い」というイメージがありますが、むしろ予算に合わせて設計できるのが設計事務所の特徴です。例えば、設計の工夫で面積を小さくしても、居心地も使い勝手もいい家をつくることができます。

鈴木:リフォームを設計事務所に相談に行くという発想はたしかに一般の人にはあまりないかもしれませんが、「設計事務所=敷居が高い」という偏ったイメージがあるのは確かですよね。

むしろ予算に合わせて最適な設計をしてもらえることを考えると、肩ひじ張らずにちょっと相談に行くという感じでいいんでしょうね。それに、予算の中で、設計の力で課題を解決していくプロセスというのはすごく楽しそうです。

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繊細なセンスを持ち、丁寧に形にしていく赤川仁一さんと聖子さん。

仁一さんが使う「しつらえる」という言葉は「整える」に近い意味を持つ言葉。大胆な作品作りや尖ったデザインを目指すのではなく、愛着を持って住んでいける空間を居心地よく美しく整えるという姿勢が特徴です。

そんな空間づくりを望んでいる方は、「あかがわ建築設計室」に気軽に問い合わせてみてはいかがでしょうか。

 

取材協力/あかがわ建築設計室

写真・文/鈴木亮平

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鈴木 亮平

新潟市在住のフリーランスの編集者・ライター(屋号:Daily Lives)。1983年生まれ。企画・編集・取材・コピーライティング・撮影とコンテンツ制作に必要なスキルを幅広くカバー。紙・WEB問わずコンテンツ制作を行う。