1階だけで暮らしが完結する、多雪地域に立つ28坪の住まい

DSC_1442
The following two tabs change content below.

鈴木 亮平

新潟県聖籠町在住の編集者・ライター・カメラマン。1983年生まれ。企画・編集・取材・コピーライティング・撮影とコンテンツ制作に必要なスキルを幅広くカバー。累計800軒以上の住宅取材を行う。

株式会社Ag-工務店加藤淳一級建築士事務所が連携しつくり上げた、阿賀町津川地区に立つI邸を、竣工直後の2019年1月に訪れた。

磐越自動車道の津川ICからほど近い住宅街で、南から北へと下る緩やかな傾斜地に立っている。北側に開いた敷地で、2階の窓からはこの地域を象徴する麒麟山を望める。

Iさんご夫婦の要望は、屋根に積もった雪の処理がしやすいこと。また、山小屋風の建物で将来は1階だけで生活できる家にしたいということだった。

その要望と敷地を読み解き、夫婦とお子様2人の4人家族で住まう家のプランを考えていったという。

 

雪の処理のしやすさと美しさ、両方を兼ね備えた外観デザイン

DSC_1442

外観は平屋のようにも見える高さを抑えた佇まいで、雪の処理のしやすさを考えて片流れ屋根にしている

建物正面はカバードポーチにしているので、雪が多い冬でも軒下で作業ができる

DSC_1432ちなみに建物西側は西日を取り込まないためと、今後隣に家が建った場合を考えて窓は最小限に。

上の写真はカーポート設置前だが、この後カーポートが施工され、今は雨や雪に濡れることなく玄関と車を行き来できるようになっている。

ポーチの壁はこの後塗装が施され、下の写真のような山小屋の風情を感じさせる色味に仕上がった。杉板の押し縁がリズムを感じさせる

DSC_2026

写真正面に見える引き戸を開けると外部収納になっており、車のタイヤや除雪道具などを収納できる。

 

玄関は仕切らずざっくりと。だから使いやすい

DSC_2020

玄関は広く使えるようにL字型の土間に。シューズクロークを個別に設けずに玄関にシューズクロークの機能を入れることで、必要以上のスペースを取らないようにしている。

玄関をすっきり見せたい人にはシューズクロークが合っているが、気にしない人には、この形が理に適っている

土間部分をたっぷりと使えるように、下駄箱を吊り棚にするという細やかな配慮にも注目したい。

DSC_2010

ハンガーパイプがあるので、雨具やコート、ダウンジャケットなどもたっぷりとここに掛けることができ、ゲスト用のクロークとしても役に立つ

冬に人の家に遊びに行ったときに、かさばるコートやダウンジャケットのやり場に困った経験は多かれ少なかれ誰にでもあると思うが、「玄関のここに掛けてください」と言われるとお互いに楽になるはずだ。

DSC_2016玄関から廊下を進むとすぐに2階に上がる階段があり、そこを通り過ぎるとLDKに繋がる。階段の向かいにトイレを配しており、2階からもスムーズにトイレに向かうことができる。この家に一つだけあるトイレは、最も適切な場所に設けられている。

DSC_1959

 

勾配天井が開放感をつくり出す、南北に伸びるLDK

DSC_2035

LDKと廊下を仕切る建具は建具職人による造作。ちなみに、このデザインは奥様が考えたもの。モールガラスを選び、中の様子は見えないが光はしっかりと通すようにしている。

LDK側から見る廊下と玄関はこちら。

DSC_2004

北側のダイニングから南側にあるリビングへと伸びる、奥行き感のあるLDKだが、勾配天井により縦にも広がりが感じられる空間となっている。そこに梁がリズミカルに連なっている

DSC_1936

そんなリビング&ダイニングを見渡せるように、対面キッチンを中央にレイアウト。キッチン側の壁はシナ合板で仕上げ、明るく上品な雰囲気を醸し出している。

DSC_1942

奥のリビング側から見る室内全景がこちら。

DSC_1917

TVボード分のスペースを外に迫り出す形にしているので、テレビや床置きエアコンがすっきりときれいに収まっているのも見逃せない

DSC_1930

ちなみに上の写真に見えるダイキンの床置きエアコン。見ての通り足元から暖めてくれるので、とても気持ちよく冬を過ごすことができる。

ダイニングの窓からは麒麟山をはじめとした津川の景色が眺められる。道路側だが、高低差がある土地で、建物が道路よりも高い位置にあるので、通りを歩く人の目も気にならない

Iさんご夫婦は食事中にテレビを見ない生活を希望していたため、ダイニングはテレビから離れた場所にレイアウト。ゆっくりと景色を眺めながら家族で食事の時間を楽める設計だ

 

家の中心には、両サイドから行き来できるキッチン

次に半個室風のキッチン内部を見てみよう。

DSC_1922

DSC_1928

天井を低めに抑えることで、開放的なリビングとのメリハリを出しており、料理に集中しやすい空間となっている。両サイドから出入りができるので、帰宅後にスムーズにキッチンに入れるし、そのまま通り抜けて洗面室や浴室へ向かうこともできる

床はキッチン手前だけ水に強いタイル張りにしているので、足元のマットも不要。ストレスのない暮らしを送れるように小さなことまで考えられている。

DSC_1924

そして、キッチンの後ろには造作のカップボード。上の戸棚以外は扉は設けずシンプルにしているが、炊飯器やゴミ箱を置くスペースなど、使いやすさに配慮した造りになっている

壁は有孔ボードにしてアクセントに。フックを付ければキッチンで使う色々な道具、例えばラップやキッチンペーパー、キッチンばさみなどを壁に掛けておくこともできる。

 

寝ることに集中できる6畳の和室

DSC_1914

キッチン奥を曲がった先の廊下の引き戸を開けると、6畳の和室が現れる。こちらは装飾を抑えた空間。正面に設けられた障子が窓辺を美しくまとめている。壁には和紙を張っているので、反射する光も柔らかく心地いい。

1階に寝室が設けられているため、平屋のように生活できるのもI邸の特徴

将来お子様たちが家を離れたら、2階は収納とゲストルームにして、ご夫婦は1階だけで暮らせる。

 

さまざまな機能が凝縮した洗面脱衣室

DSC_1946

寝室を通り過ぎて奥へ進んだ突き当たりは、洗面脱衣室兼サンルーム。大容量の造り付けの棚を備えているので、タオル類はもちろん、家族全員の普段使いの服もこちらに置いてクローゼットのように使える

服を脱ぎ、洗濯し、干し、乾いたら畳んで棚に入れ、それを着る。このサイクルがこの場所で完結するので、服をあちこちに運ぶ必要がなく、毎日の家事の負担も軽減される

掃き出し窓を開ければ軒下スペースがあるので、外に干すのもスムーズだ。南と西からの日差しで洗濯物がよく乾く。

DSC_1950

造作の洗面台は鮮やかなグリーンのタイルで明るい印象に。壁にはキッチンと同様に有孔ボードを張っている。

DSC_1953

浴室は一般的な1坪タイプのユニットバス。高い位置に窓を設けているので、小さい窓でも程よい明るさになっている。

 

2階は小屋裏のような小部屋だけを用意

DSC_1995

再び玄関前に戻り、今度は階段を上がってみよう。

DSC_1998

階段を登り切った2階は天井が低い小屋裏のような空間で、2階にあるのは2部屋の子ども部屋と収納だけ。

2階までしっかりとお金を掛けてつくり込むのではなく、あくまで予備的なスペースと位置付けコストを上手に抑えているのも特徴だ

そのため、子ども部屋は収納部分を含めて5.6畳とコンパクトに。南側と北側に同じ広さの部屋を左右対称に配している。

北側がこちら。

DSC_1977

DSC_1965

1月上旬のこの日は、正方形の窓から津川の雪景色を眺めることができた。この部屋は、四季折々の自然風景を味わえるこの家の特等席のような場所だ。

南側の子ども部屋がこちら。

DSC_1979

南側の高い土地に隣家が立っているため眺望はないが、日当たりはいい。

DSC_1989

限られた空間を効率よく使えるように収納はコンパクトながらも機能的に。ハンガーパイプの位置を低めに抑えることで、天井が低い空間でも上段を有効活用できる。

また、壁には有孔ボードを張っているので、フックを使って好きなものを飾り、自分らしい空間づくりを楽しむことができる。

延床面積28坪と小さめの家だが、総2階ではなく1階を広めにしたプラン。それゆえに窮屈に感じることなく伸び伸びと暮らせる。

友人家族を呼んでワイワイ過ごすことが多いというIさんご家族の休日が、この家ではいっそう楽しいものになりそうだ。

 

I邸
阿賀町(旧津川町)
延床面積 28坪(1階21坪 2階7坪)
竣工年月 2019年1月
設計・施工 株式会社 Ag-工務店
設計協力 加藤淳 一級建築士事務所

(写真・文/鈴木亮平

The following two tabs change content below.

鈴木 亮平

新潟県聖籠町在住の編集者・ライター・カメラマン。1983年生まれ。企画・編集・取材・コピーライティング・撮影とコンテンツ制作に必要なスキルを幅広くカバー。累計800軒以上の住宅取材を行う。