#022 庭でアウトドアも満喫できる、壁厚220mmの超高断熱住宅

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鈴木 亮平

新潟市在住のフリーランスの編集者・ライター(屋号:Daily Lives)。1983年生まれ。企画・編集・取材・コピーライティング・撮影とコンテンツ制作に必要なスキルを幅広くカバー。紙・WEB問わずコンテンツ制作を行う。

8月初旬、30度を超える真夏日に、新潟市秋葉区にあるI邸を訪れた。

容赦なく照り付ける太陽と、新潟特有のねっとりとした湿気がまとわりつく日だった。

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60坪の土地の手前半分は芝生の庭とアプローチ。木塀によって程よく目隠しされた庭には、深い庇に取り付けられたタープが日陰をつくっていた。

玄関前に停車しているのはトヨタのランドクルーザー。サーフィンやスノーボードが好きなご主人の愛車だ。たっぷりと荷物を積める車は、家族でアウトドアに出掛けるときも活躍する。

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雁木のように間口いっぱいに伸びる庇は、夏の強い日射を遮り、雨や雪から建物を守ってくれる。それと同時に、安定感のある佇まいが落ち着いた風景をつくり出している。

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新築でありながら、どこか郷愁を感じさせるIさん家族の家を訪問した。

 

HEAT20のG2グレード。UA値=0.32の高断熱仕様

転勤が多いご主人の仕事柄、これまで引っ越しを繰り返しながら賃貸住宅を渡り歩いてきたという。

この家に住む直前は、近所にある奥様の実家で同居をしていたが、2人目のお子さんも成長してきていよいよ手狭になり、新築を考え始めた。

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購入した土地は、小川が流れる遊歩道に面した古家付きの土地で、広さは117坪もあったという。「実際にはそこまで大きな土地は要らないので、購入してから土地の半分を売却したんです」とご主人。

調べるのが好きなご主人は、家づくりに関する様々な本も読んでいた。

「『新しい家づくりの教科書』(2016年、新建新聞社発行)を読んで高気密高断熱住宅にしたいと思いました。内装や間取りなどは家が建ってからでも変えていけると思いますが、断熱性能を後から上げるのが難しいことをその本から学んだからです。それに、断熱性能が高い家は結露が起こらないので建物が長持ちするということも知りました。だから、できるだけ最初に断熱性能を高めておきたいと思ったんです」。

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宮崎建築に依頼をした理由は、代表の宮﨑直也さんが高気密高断熱住宅の知識や実績を多く持っていたからだ。

そうして、外側の全ての壁に断熱材を付加し(付加断熱)、高性能グラスウール220mmという分厚い断熱の壁をつくることにした。

断熱を布団に例えるなら、通常の家が羽毛布団1枚のところを、この家は羽毛布団2枚掛けをした状態と言える。

APW
窓はAPW430。220ミリという壁の厚さは、窓枠の奥行にも現れている。

窓はトリプルガラス+樹脂製サッシを組み合わせたYKKAPが誇る高断熱窓「APW430」を南面以外の全ての窓に採用した。冬の日射取得を考え、南面は同じ樹脂製サッシでもペアガラスの「APW330」を採用。2種類の窓を適材適所に配している。

その結果、UA値=0.32Q値=0.95という高い性能値となり、HEAT20のG2グレードをクリアした。(最近では、国が定める次世代省エネ基準よりもはるかに厳しい基準であるHEAT20のG2グレードが高断熱住宅の目標値とされることが増えている。)

 

床下エアコンで、開放的な家全体が快適温度になる

建物の形は4間×4間(32畳)の正方形の総2階に6畳程の玄関土間が付いた構成だ。

玄関ドアを開けるとゆったりとした土間スペースが広がっており、その開放感に驚かされる。

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奥にはご主人のサーフボードやウェットスーツ、アウトドア道具が格納されており、手前には造作の下駄箱が伸びている。

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ご主人は、サーフィンを20年前から続けており、雪がある時期はスノーボードに出掛ける。さらには、北アルプスなどへ登山に行くこともあるという、根っからのアウトドア好きだ。広い玄関土間は、道具の収納や車への積み下ろしがスムーズになるように意図されたスペースだ。

土間とリビングの間は幅1間(180cm)分を建具で仕切ったり繋いだりできるが、当然玄関部分もしっかりと断熱されているので、開放していても快適だ。

この日も最高気温が34度という暑い日だったが、玄関ドアを開けて中に入ると自然な涼しさに包まれた。特にエアコンの強い風や音を感じるわけではなく、不快な外の気温や湿気を忘れるような、ちょうどいい室温と湿度だった。

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玄関から見たLDKがこちら。

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味わいのあるオークの無垢フローリングの空間が広がっており、2畳分の吹き抜けから注ぐ光が1階全体を明るく照らしている。

キッチン前のカウンターは、簡単な食事やお茶、リビング学習のスペースとしてもちょうどいい。

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その隣の造作棚には長男のランドセルや本などの日常使いのものが並ぶ。そして、その下に見える格子の中には、この家の暖房システムである「床下エアコン」が仕込まれている。

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ちなみにこれは特殊なエアコンではなく、家電量販店で普通に買える8畳用のものだ。家自体が非常に高い断熱性能を備えているので、このサイズのエアコンで34坪(約68畳分)の空間を隅々までほぼ均一な温度に暖めることができる。

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「年末に住み始めたんですが、冬がとても快適でしたね。玄関のドアを開けると、入った瞬間から暖かかったです。冬の間、床下エアコンはつけっ放しで過ごしていましたが、本当に快適で。以前は、朝ヒーターを点けて部屋が暖まってからじゃないと動けませんでしたが、すぐ起きて活動できるようになりました」(奥様)。

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「今は2階に付けているエアコンを使っていて、28度設定にしています。泊まりで出掛ける時もエアコンの電源は入れたままにするんですが、この間1泊2日の旅行から帰ってきたらすごく快適で。湿度もちょうどいいですね」とご主人。

当然、真夏でも寝苦しくて起きるようなことがないので、睡眠の質も高まっている。

 

理想のキッチンをオーダーメイドで

キッチンは奥様が細かい要望を伝えながら宮﨑さんに造ってもらったオーダーメイド

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「メーカーのシステムキッチンのいいとこ取りをするような形で造って頂きました。例えばシンクの下をあけてゴミ箱置きにしたり、タオルバーを長くして布巾を掛けられるようにしたり。直接大工である宮﨑さんに伝えられたので、すごくスムーズでした」と奥様。

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壁側のカップボードももちろんオーダーメード。「パンやお菓子作りが好きで、ガスオーブンを入れたんです。オーブンの大きさに合わせて周りの吊り棚の位置を決めていきました」。

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キッチンの隣にはパントリー兼家事スペースを設けたりと、キッチン周りは奥様が特にこだわって宮﨑さんと一緒に造り込んでいった場所だ。

前は、休日によく外出をして、そのまま外で食事をすることが多かったという。しかし、使いやすいキッチンができ上がり、家が非常に快適になったため、ここに住んでから外食の回数が減ったという。

それにより、外食に掛かっていた生活コストも安くなっている。

 

引き戸を開ければ、家全体がワンルームに

次にこの家の中央部に設けられた階段を上がり、2階へ向かった。

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2階のホールには奥様のピアノが置かれており、その先は吹き抜けになっている。家の中央に階段と吹き抜けがあるため、エアコンによる冬の温かい空気も、夏の冷気も自然と循環する。これにより、特に天井ファンを付けることなく、家の隅々が快適温度に保たれるそうだ。

将来的に6畳2間に分けられる12畳の部屋は、家族の寝室とてして活用中。

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戸を閉めていても3方向から光が入る明るい空間だ。引き戸を開けておけば、いっそう明るく開放的になる。

ホールを挟んだ向かい側にも6畳の部屋があり、こちらは現在は予備室兼クローゼットとなっている。将来的には夫婦の寝室として活用予定だ。

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ホールには洗面台を設けており、寝る前の歯磨きにちょうどいい。

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また、2階の建具はすべて引き戸にしているため、開放をすれば大きなワンルームのようにもなるし、2階から吹き抜け越しにリビングを見下ろすこともできる。

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この抜け感が家を広く感じさせてくれるし、この家自体が大きなワンルームとも言える。

 

肩ひじ張らない、自然体の暮らしを楽しむ

「この家に住み始めて、すごく前向きな気持ちになりました。料理をする時間も楽しくなりましたし」と奥様。

「前は家族でよくピクニックに出掛けていたんですが、今は家に居ながら庭先でピクニックができるようになりました。家で色々なことが完結できるようになったのもいいですね」とご主人。

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芝生の庭にはアオダモやジューンベリー、ミニトマトや朝顔も植えられている。花壇に植えられた花々もまた、美しく庭を彩っている。

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「Iさんはすごく勉強をされていましたし、家に求めていることも明確でした。だからこそ、大きな軌道修正をすることなく、この家を完成させることができました」と宮崎さん。

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ところで、ご主人の実家は村上にあるという。地元では家の軒先に鮭を吊るすのが当たり前の風景だ。「この家の軒下にも鮭を干してみたいですね」と、ほほ笑む。

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生活感を出さないようにして整然とした空間で暮らすのではなく、肩ひじ張らず好きなように家を使いこなす。

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経年変化が楽しめる自然素材がふんだんに使われた家が、今後10年20年と経過していく中で、どのように熟成されていくのか?そんな変化も今から楽しみだ。

 

I邸
新潟市秋葉区
延床面積 113.04㎡(34.19坪)
竣工年月 2018年12月
設計・施工/宮﨑建築株式会社

写真・文/鈴木亮平

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鈴木 亮平

新潟市在住のフリーランスの編集者・ライター(屋号:Daily Lives)。1983年生まれ。企画・編集・取材・コピーライティング・撮影とコンテンツ制作に必要なスキルを幅広くカバー。紙・WEB問わずコンテンツ制作を行う。