#032 在宅ワークにも対応。レトロな風合いのリビングに風そよぐ住まい

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鈴木 亮平

新潟市在住の編集者・ライター(屋号:Daily Lives)。1983年生まれ。企画・編集・取材・コピーライティング・撮影とコンテンツ制作に必要なスキルを幅広くカバー。累計500軒以上の住宅取材を行う。

燕市水道町。新しくできた分譲地の中でも、3面が道路に接した59坪の土地をKさん夫婦は購入した。家が完成する2020年3月まで県外で暮らしていたKさんご家族だが、ご主人が燕市、奥様が新潟市秋葉区と、共に新潟県出身。

お子様が小学校に上がる時期に、新潟へUターンして家を建てることにしたという。

ご主人は県外にある電機メーカーに勤務しており、20年近く新潟を離れて暮らしてきた。

今回、職場からは通勤圏外である燕市に家を建てたが、上司からリモートワークで勤務することの許可が出たことで、仕事を変えることなく新潟へUターンすることに成功。

偶然にも、家が完成してリモートワークにシフトしたタイミングと、新型コロナウイルス感染拡大の影響で、世の中にリモートワークが普及したタイミングが重なった。

ご主人の職場もリモートワークに移行したが、万全の体制で新しい働き方のスタートが切れたという。

K邸は一般的に家に求められる「くつろぐ」という機能だけでなく、「働く」という機能も盛り込まれている。

 

庭木が彩りを添える白い外観

K邸は線がすっきりとした片流れ屋根のフォルムに、白い金属系サイディングが組み合わせられたシンプルなデザイン。かといって無機質なわけではない。カーポートの奥には庭木に囲まれた濡れ縁もある。

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家の奥にはエメラルドグリーンの丸いガスタンクが見えるが、それがあるために、そちら側には家が立っておらず抜けのある景色が広がる。

南西側は一面木塀で目隠しされており、水平に伸びるラインが美しい。木の格子がアルミ製カーポートの存在感もやわらげている。

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砂利のアプローチを進んで行くと杉板張りのポーチが現れた。

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ポーチに面した押入サイズの外部収納は、車のタイヤや除雪道具などを入れるのに欠かせない収納スペースだ。

木製の玄関ドアを開けると、正面には地窓があり、その奥の植栽が迎えてくれる。

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横に長い玄関はサイドがシューズクロークになっておりハンガー掛けも備えられている。

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玄関のすぐ右側は4.5畳の和室。

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こちらは客間で、ゲストの宿泊用としても使える場所。普段は、小学校2年生になる娘さんが、寝転がりながら読書を楽しんでいるという。

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押入、仏間、板間が3等分に設けられており、板間はひな人形を飾るための場所でもある。

光が柔らかく回るのは和紙の壁紙によるものだが、K邸は、LDKや廊下、寝室や子ども部屋などほとんどの空間が和紙の壁紙で仕上げられている。

 

古い家具が似合う落ち着いたトーンのLDK

廊下を進んで行くと階段が現れた。

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「窓のない階段ホールが暗くならないように、奥のダイニングとの間には透明なポリカーボネート板を使いました。まっすぐ進めばダイニング、右に行けば洗面脱衣室を通ってキッチン側へと回れる回遊動線にしています」と、加藤淳一級建築士事務所の加藤淳さん。

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「薄い壁とポリカーボネート板、引き戸、階段が集まるこの空間の施工が、最も難易度が高い箇所でした。設計事務所ならではの納まりですね」と、株式会社Ag-工務店の代表・渡部栄次さん話す。

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ダイニングに入ると、そこは吹き抜けの開放的な空間で、オークの床に落ち着いたトーンの家具が調和していた。

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ダイニングには、教会で使われる古いチャーチチェアが置かれている。

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奥のリビングにはカーキ色のファブリックのソファが置かれ、その隣には結婚時にアンティークショップで買ったという古いキャビネットが配されている。

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それらのセレクトは奥様によるものだが、実は奥様は「江南の家」(新潟市江南区・2015年竣工)の奥様の妹。「古くて味わいのある道具が好きなのは、姉の影響でもあります」と話す。

リビングのソファに腰を掛ければ、コーナーの窓から濡れ縁や植栽が眺められ、その隣にはテレビ、左を見ればダイニングやキッチンにいる家族が見える。

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天井近くにある2階の子ども部屋や書斎の小窓にも目が届くなど、LDKは縦にも横にも広がりつながっている。

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道具の「用の美」を引き立てるキッチン

対面型キッチンは手元を隠せるように高めの壁が設けられており、その奥には棚が造り付けられている。

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電子レンジなどが納められた右側の棚は、自身もキッチンに立って料理をすることが多いという一級建築士・加藤淳さんの提案。

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上段には電子レンジと炊飯器、中段にはポットとケトル、キャニスターに入れられた米が並ぶ。その下に見えるのは、カゴバッグに入れられたタマネギやジャガイモなどの野菜だ。

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その左側を見れば、高窓の下に設けられた飾り棚に、木の器やすり鉢、わら鍋敷きやざるなど味わいのある道具が並ぶ。

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長く使える道具が丁寧に選ばれており、それらが落ち着いた色合いの空間に調和していた。

キッチンはウッドワン社製。天然木で仕上げられたキャビネットに、ステンレスの天板が組み合わせられたシンプルなデザインは、シンプルな所作を導いてくれそうだ。

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中干しのように外干しをする

キッチンの隣に設けられたパントリーを通り抜けると、洗面脱衣室へとつながる。

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造作の洗面台と収納棚が備えられており、洗濯機はコーナーのくぼみに納められている。

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洗濯物はその場で干すこともできるが、窓の外にあるデッキで外干しも可能。

この物干しスペースは西日で洗濯物が乾きやすく、雨が降っても濡れにくいのが特徴だ。細かい格子により、外から見えにくい造りになっている。

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コックピットのようなワークスペースで、在宅ワークを快適に

次に階段を上がり2階へと向かった。階段を上がった先の左側の引き戸を開けると細長い北西向きの空間が広がっているが、そこは半分が物干しスペースで、もう半分がご主人のワークスペースになっている。

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奥まった場所にある2畳程のワークスペースは、デスクに向かいながらも手を伸ばせば届く位置にいくつもの棚が造作されたコックピットのような空間だ。

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ご主人はここでリモートワークを行っているが、オフィスで働くよりも集中力を高めやすく快適に業務ができているという。

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「デスクの横に小さな窓があり、そこから弥彦山を見ることができます。この景色が息抜きになりますし、北西側の窓からの光で時間の感覚もつかみやすくなっていますね」とご主人。

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また、正面の窓を開ければ吹き抜けを介して1階にいる家族ともつながる。集中する時間と、家族とつながる時間を簡単に切り替えられるのもこのワークスペースの特徴だ。

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週に2回は会社のメンバーとオンライン会議も行っており、特に不便さは感じないという。在宅ワークにして1カ月半が経過したが、上司からは「効率が落ちていない」という評価も受け、在宅ワークが合理的なワークスタイルであることが証明された。

唯一の問題は運動不足に陥りやすくなることで、運動不足解消のため、ご主人は週末になるとランニングをするようになったという。

現在ワークスペース部分は約2畳だが、物干しスペース部分を含めると約4.5畳の空間だ。

仮にデスクが手狭になった場合でも、最大4.5畳まで拡張できる。

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(こちらのワークスペースについて詳しくは、「在宅ワークを成功に導く鍵。それはワークスペースの設計にあり。」を参照)

 

檜の無垢フローリングで安らげる明るい個室

廊下を奥へと進むと、納戸、子ども部屋、寝室の順に部屋が並んでいた。

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5.3畳の子ども部屋には、外からの光を取り込む引き違い窓の隣にもう一つ窓がある。その窓を開ければ、ご主人のワークスペースと同様に1階とつながる。

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小学校2年生になる娘さんは、夜9時には自分の部屋で1人で眠るが、この窓を開けてLDKからの光を取り込むことで安心して眠れるという。

窓を開ければLDKにいる家族に声を掛けることもできる。

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窓からのぞいた時の、LDKとの距離感がいい。

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廊下の突き当たりは8畳の寝室で、その一角はコンパクトなクローゼット。ロールスクリーンを下ろせばすっきりと目隠しできる。

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2階の床は全て檜の無垢フローリングが使われており、その柔らかい質感や明るい色合いが心地いい。

 

奥様が望んだ、アンティーク家具や工芸品がなじむ空間に、いろいろな窓から緑が望める設計や便利な家事動線など、感覚的な魅力と機能の両方がバランスよくまとめられたK邸。

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「視界の抜け感や風通しの良さを重視しており、1階から2階へも立体的に風が通るようにしています。耐震性能は最高等級の3、断熱性能はHEAT20のG1グレードと、性能にも力を入れています」と加藤淳さん。

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加藤淳一級建築士事務所 加藤淳さん

施工をした株式会社Ag-工務店の渡部栄次さんは「お施主さんと設計事務所の要望に応え、納まりの美しさと強度・メンテナンス性の両方を満たす施工をするのが工務店の役割。断熱についてはいつものように気密を高める充填を行っています」と、意匠性と実用性の両方を大切に考えながら造り上げた。

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株式会社Ag-工務店 渡部栄次さん

家の中を流れゆくそよ風がスッと肩の力を抜き、窓辺の緑が心を癒やしてくれるK邸。

オフィス機能まで備えた住まいは、暮らしにいつも寄り添い家族を支えてくれる。

 

K邸
燕市
延床面積 106.34㎡(32.1坪)
竣工年月 2020年3月
設計 加藤淳一級建築士事務所
施工 株式会社 Ag-工務店
(写真・文/Daily Lives Niigata 鈴木亮平

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鈴木 亮平

新潟市在住の編集者・ライター(屋号:Daily Lives)。1983年生まれ。企画・編集・取材・コピーライティング・撮影とコンテンツ制作に必要なスキルを幅広くカバー。累計500軒以上の住宅取材を行う。