#033 新潟の冬を快適に過ごせる!日射取得を重視したUA値=0.27の超高断熱住宅。

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鈴木 亮平

新潟市在住の編集者・ライター(屋号:Daily Lives)。1983年生まれ。企画・編集・取材・コピーライティング・撮影とコンテンツ制作に必要なスキルを幅広くカバー。累計500軒以上の住宅取材を行う。

新潟市秋葉区の住宅街に立つO邸。敷地は70坪の角地で、東側と北側の道路に面している。

建物は杉板張りの外壁に覆われ、その前に植えられたアオダモやヤマボウシの庭木が風に揺れる。

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O邸の延床面積は約25坪。「超高断熱の小さな木の家」をコンセプトに掲げるエスネルデザインが設計を、HEAT20G2グレードの高断熱住宅を手掛ける宮﨑建築株式会社が施工を担い、UA値=0.27の超高断熱住宅が完成した。

Oさんは、小学校4年生と1年生のお子さんと、Oさんご夫婦の4人家族。仕事柄転勤を繰り返していたが、2019年の春に新潟市に戻ってきたタイミングで、ご主人の実家に近い秋葉区のアパートで暮らし始め、本格的に家づくりの情報収集をスタートした。

冬暖かく過ごせる高気密高断熱住宅に絞り込んで調べていく中で、エスネルデザインにたどり着き依頼を決めたという。

「断熱性能が高い家づくりをしているのに加え、家にお金を掛け過ぎることなく、ゆとりある生活が送れることを目指す考え方にも共感しました」とOさん夫婦は話す。

 

植栽と家庭菜園を楽しむ暮らし

2019年5月にエスネルデザイン村松悠一さんに連絡を取り、後日、面談と打ち合わせを実施。ファーストプラン3案の提示を受け、その中から現在の家のベースとなる案を採用した。

その後2020年の初夏に着工し、その年の10月に完成。

70坪の土地の北東コーナー側に建物を配し、残ったL字の空間はカーポートや庭、家庭菜園として活用。O邸の庭と隣家の庭が隣り合っているため、庭が実際以上に奥行きを感じさせる。

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社宅やアパート暮らしでは実現できなかった家庭菜園は、ご夫婦が家を建てたらやってみたかったことの一つ。トマトやピーマン、オクラやモロヘイヤ、オオバなどの野菜が夏の日差しを受けてキラキラと輝いていた。朝収穫したトマトはその日の料理やお弁当に使っているという。

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「庭ができたことで、夕方の草取りや水やりが習慣になりました。春先に木々の芽が出てくるのも新しい楽しみになりましたね」(奥様)。

EN GARDEN WORKの小川俊彦さんが手掛けた庭は、建物正面の外観を整えるための植栽(北側)と、リビングのコーナー窓から眺められる植栽(南西側)の2つに分かれており、どちらも杉板外壁によく似合う。

コーナー窓のそばに集中して落葉樹が植えられているが、エスネルデザインの村松悠一さんはそれを「グリーンウインドウ」と呼んでいる。家の中にいながら木々を間近に眺めることで季節感を楽しむことができるし、木々が成長するに連れて夏場の日射遮蔽に効果を発揮するようになる。

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室内のロールスクリーンに樹影が映る様子も味わい深い。

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杉板外壁の中でも、吹き抜けがあるリビング部分の外壁だけは縦ルーバーにして変化を付けている。垂直に並ぶ窓と呼応させることで縦に広がる様子をさり気なく表現するという遊び心も面白い。

無塗装の杉板は少しずつシルバーグレーへと変化をしているが、自然素材の経年変化を大切に考えるのもエスネルデザインの設計思想。

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地面を覆うグランドカバーも緻密に計画されており、クリーピングタイムやコウライシバ、ヒメイワダレソウなどが建物に彩りを添える。

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一般的な住宅よりもコンクリート部分が目立つ高基礎周りに植えられたグランドカバーは、コンクリートの硬い雰囲気をやわらげる役割も担っている。

 

全館冷暖房のコンパクトな住まい

社宅やアパートで暮らしてきたOさん夫婦は、冬場の窓の結露や石油ファンヒーターによる空気の汚れに悩まされてきたが、新しい家では10畳用のエアコン1台で真冬でも家全体がムラなく暖まることに驚かされたという。

冬用のエアコンは、収納を兼ねた高さ1.4mの床下に暖気を送り込むように設けられており、真冬は24時間連続稼働させる。設定温度は22℃で実際の室温も22℃。リビングには床下・1階・2階・外部の4カ所の湿度と温度を常時モニタリングできる温湿度計を備えているが、高い気密断熱性と大きな吹き抜けにより、上下階の温度差は1度未満に収まっている。

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洗面台の下部に設けられた床下エアコン。(竣工時の写真)

「この家に住んでから戸を開けたままにするのが当たり前になりましたね。床下から空気を暖める仕組みのため、床が冷たくなることもありません。そして、冬は太陽高度が低いため、南側と西側の大きな窓から日差しがよく入りますが、暖房が必要ないくらいに家の中が暖まることもありますよ」とご主人。

昨年の秋に住み始めて約9カ月が経過。春先の一時期以外はエアコンで室温をコントロールしているという。

高気密高断熱住宅では、冬場は室内が過乾燥になりやすいが、浴室の湿った空気を室内へと送り込む循環ファンを使うことで湿度の調整がうまくいっている。「洗濯物はガス乾燥機の“乾太くん”を使いますが、料理で発生する湯気やお風呂の湿気で湿度が上がるので、加湿器を使う程ではありません」(奥様)。

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浴室のドアの左上にあるのが循環ファン。(竣工時の写真)

窓には高い断熱性能を誇るトリプルガラス+樹脂サッシを使用しており、気密性能を高めるために、引き違い窓ではなくすべり出し窓やFIX窓を使っているのも特徴。もちろん冬場の結露はないという。

「リビングのコーナー窓にはロールスクリーンが取り付けてありますが、設置場所が窓に近い位置のため、カーテン屋さんが結露で汚れないかと心配していました。もちろん結露しないので汚れることはありません」と奥様。

梅雨時は床下エアコンを除湿モードにして湿気を取り除き、夏場は2階に設置されたエアコン1台で全館冷房を行っている。

 

家事を楽にする、キッチン⇔マルチWICの動線

1階は床面積14坪のコンパクトさだが、玄関で靴を脱いで2、3歩進むと、大きな吹き抜けのある畳リビングが目の前に広がる。

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1階部分と2階部分で対になった窓がいくつもあり、そこからたっぷりと光が注ぐため、日中は朝から夕方まで常に明るい。

キッチンはそんな開放的なリビングを見渡せる対面式で、ウッドワン社の天然木を使ったキッチンとオーダーメイドのカップボードが見事に調和している。

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キッチンから眺めるリビング全景。

キッチンの端にはガラス窓が付いているが、そこは「外気収納」と呼ばれるスペース。

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キッチンと造作カップボード。(竣工時の写真)

高断熱住宅では冬でも家中が暖かくなるため、野菜などを保管する場所に困ることがある。外気収納はあえて断熱外につくられた空間で、冬場に野菜などを保管する季節限定の冷蔵庫となる。

「冬に外気収納のドアを開けると、中がヒンヤリとしていることが分かります。冬は野菜を収納するだけでなく、鍋料理を入れておくのにも重宝していました。夏場は食品以外の物を入れる収納として使っています」(奥様)。

そんなキッチンと横並びに設けられているのが、エスネルデザインの「マルチWIC」だ。約4.3畳のスペースに、洗面-洗濯-脱衣-収納-物干しが機能的にまとめられており、家事の時短に貢献する。

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きめ細かく造作されたマルチWIC。(竣工時の写真)

造作洗面台の下部には床下エアコンのスペースも組み込まれていたり、造作家具がシステマチックに設計されている点が面白い。

「大人の服は2階の寝室のクローゼットに収納していますが、子ども服やタオルなどはこちらに収納しています。朝起きてから洗濯機を回し、乾太くんで乾燥させ、たたむところまで一気にできるようになりました。ハンガーに掛けて干す作業を省略できるので家事がとても楽ですね」と、その便利さについて奥様は話す。

季節物の服などは広い床下スペースに収納できるため、1・2階の収納スペースが最小限の広さで済むのもポイントだ。

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地下室のような床下空間。(竣工時の写真)

 

緻密に数値計算された断熱性能に、耐震等級3(積雪1.3m)の耐震性能。外壁だけでなく、内部の造作にもふんだんに使われた県産杉もO邸の特徴だ。

「家に帰って来た時に感じる暖かさや、朝起きた時も暖かくてすぐに動けることなど、やはり冬の過ごしやすさがいいですね」とご主人。

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1月に夜の10時頃から翌朝の7時頃まで停電でエアコンがストップする日があったが、外気が氷点下1〜3度だったにも関わらず翌朝の室温は1階2階ともに約20度だったことでも性能の高さを実感できたという。

停電などの災害時にも強いO邸。装飾を抑えたシンプルな矩形の住まいは、質実剛健と呼ぶのにふさわしい。

今後5年10年と歳月を重ねながら、植栽と建物が一層融合した風景がつくられていきそうだ。

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O邸
新潟市秋葉区
延床面積 82.86㎡(25.02坪)
竣工年月 2020年10月
設計 住宅設計エスネルデザイン
施工 宮﨑建築株式会社
(写真・文/Daily Lives Niigata 鈴木亮平

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鈴木 亮平

新潟市在住の編集者・ライター(屋号:Daily Lives)。1983年生まれ。企画・編集・取材・コピーライティング・撮影とコンテンツ制作に必要なスキルを幅広くカバー。累計500軒以上の住宅取材を行う。