鈴木 亮平
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2017年6月に沼垂テラス商店街(新潟市中央区沼垂東)で創業した無垢フローリング専門店・アンドウッド。2021年に本馬越へ移転し、2025年に創業9年目を迎えました。

2021年6月に「創業5年目、新たなショールームでスタートしたアンドウッドのすべて」というタイトルで、代表・遠藤大樹(えんどうひろき)さんの取り組みをインタビュー形式で紹介しました。
その後、
- 「創業6年目、お薦めの床材」(2022年12月)
- 「創業7年目、2023年の振り返りと今後の展望」(2024年1月)
- 「創業8年目、看板商品のチークをリニューアル」(2025年1月)
と、年1回のペースで遠藤さんの取り組みを紹介しています。
そして今回の本記事(2026年1月に取材)では、2025年のアンドウッドの事業を振り返ります。では、さっそくお話を聞いてみましょう。

住宅着工戸数が減少した2025年。アンドウッドの売上は?
鈴木 アンドウッドの遠藤さんの取り組みを伺うこのインタビュー記事。今回で5回目になりますね。毎年1回取材を行うことで、社会情勢や住宅業界の変化が読み取れますし、遠藤さんがどのように時代に対応して事業を営んでいるかが分かります。いろいろな視点で味わえる記事群になってきました。
2025年は建築費の高騰や金利の上昇、4月の法改正の影響などがあり、住宅の着工戸数が大きく落ち込んだ年でした。遠藤さんもそんな市況の影響を感じられましたか?
遠藤さん いえ、実は2025年は受注件数・売上ともに過去最高となりました。アンドウッドが認知されたというよりも、世の中の流れの中で必要とされたという印象です。無垢フローリングを扱う同業他社もそうだったのではないかなと想像しています。

鈴木 住宅の市場環境が厳しい中で、むしろ受注件数・売上ともに伸びていたんですね!その要因はなんでしょうか?
遠藤さん 住宅着工戸数全体で見ると減っているけど、「無垢フローリングを入れたい」層は多かった。そういうことなのではないかなと想像しています。
鈴木 興味深い考察です。着工戸数が減っている中でも、その中には様々な価値観の層がある…ということですね。定量的なデータでは読み取りにくいことですよね。
遠藤さん 一方で長引く円安の影響は大きいですね。床材が売れて入ってきたお金で次の床材を作ります。床材は海外で作っているものなので、円安の状態が続いていると製造しにくくなってしまいます。

アンドウッドを代表する床材を目指して
鈴木 ところで、遠藤さんは毎年新しい床材を作っていますよね。最近はどんな考え方で作っていますか?
遠藤さん 以前から、床材を作る際に歩留まりを重視していると話してきましたが、歩留まりのいい床材を作っても、それが求められず売れないようでは作る意味がありません。
歩留まりよく作った上で、そこにきちんと価値を持たせたい。そういう考え方が以前よりも強くなっています。そして、「あの床と言えばアンドウッドだよね」と言われるような床材を作ってみたいですね。
若い頃にトキワ荘で漫画を描いていた藤子・F・不二雄さんが「ドラえもん」を描いて、それが代表作になったみたいな。そんな床材を作りたいです。

鈴木 以前は森林資源を有効に使っていくことを大きな目的にしていたと思いますが、今はその上でさらに新しい価値のあるものを作っていこうとしているんですね。
ちなみに新しい床材のアイデアはどういうところから生まれてくるものですか?
遠藤さん 住宅業界の人が集まる会合に行って、どんな床材を使っているかを聞いたり、どんなものがトレンドになっているかを聞いたりもしますし、あとは映画も参考になります。
例えば海外のアニメを見ていると「大きめのヘリンボーンを使っているな」とか発見がありますね。実写よりもアニメの方が分かりやすいです。
随分前に海外のアニメで見た床を参考にパーケットフローリングを作ったことがあり、それは結構売れましたね。スタンダードにはなりませんでしたが。
鈴木 日本のアニメよりも海外のアニメですか?
遠藤さん そうですね。海外のアニメの方が参考になります。特にディズニーですね。あとはゲーム。「ファイナルファンタジーⅦ」の床などはけっこう見ていました。アニメやゲームの世界から新しいヒントが得られることがあります。
優しい木目が特徴的な、かつら剥きをしたヒッコリー
鈴木 次に、遠藤さんが2025年に新しく開発した床材について解説をお願いできますか?
遠藤さん はい、今回4つ新しい床材を紹介しようと思います。
まず1つ目が「ホワイトヒッコリー」ですね。アメリカで採れる木で、クルミの仲間です。ヒッコリーって心材の赤身(あかみ)部分と外側の白太(しらた)部分が入り混じる「源平(げんぺい)」が出やすい樹種なんですが、これは白太だけを使っています。
ピーリングカットと呼ばれる方法で、丸太の白太部分だけを厚さ2mmのかつら剥きにして床材の表面に使っているのが特徴ですね。

鈴木 個性が強い床材ではないですが、木目を見ると「これは何の木なんだろう?」となる不思議な床材ですね。オークのように「これを選べば失敗することはないだろう」という安心感があります。
遠藤さん そうですね。普遍的なデザインの床を作るのって一番難しいと思ってるんですが、今回それができたんじゃないかなと思います。今後認知されていけば、オークやバーチのように長く求められる床材になると思います。

鈴木 この床材を作ろうと思ったのはどんな理由からですか?
遠藤さん 一番最初の理由としてはコストがあります。コストをなんとか安くしたいなあというのがあって。ピーリングカットはノコギリで挽く挽き板よりも歩留まりが良くなるのでコストが安くなるんですよ。
でも作ってみたら想像以上に面白い木目が出て雰囲気のいい床に仕上がりました。板目とも柾目とも言えないような独特の木目はピーリングカットならではです。

ちなみに最近はピーリングカットを指定して床材を選ぶ方もいてびっくりさせられています。

鈴木 じゃあ、今後ピーリングカットの床材を増やしていきますか?
遠藤さん いえ、樹種によっては毛羽だったりもしそうで…。わりと粘りのある木がピーリングカットに合っているように思います。
ムラのある白塗装が施された浮造りのチーク
遠藤さん 2つ目は、「チーク ユニ アンティークホワイト」です。

これはチークの表面を凸凹にする浮造り加工をして、そこに白い塗料を入れて仕上げたものです。金属のブラシを回転させて表面のやわらかい部分を削ると、このような凹凸ができ上がるんですよ。
さらにホワイトの塗料を入れて表面を洗うと、溝の部分にだけ塗料が残り、このような仕上がりになります。

鈴木 不思議な質感ですね。使うのにちょっと勇気が必要そうな気もしますが、リノベーションとか店舗とか、あとはアトリエのような空間とかに似合いそうですね。ちなみにこの床材を作ろうと思った理由は何ですか?

遠藤さん 理由は、勢いですかね。チークをそのまま床材にするだけでは面白くないよなあという感覚があったので。
提携している工場の設備を見ると、浮造りもホワイトを入れることもできる。それで、勢いでやってみようと思って作ったんです。
でもちょっとやり過ぎたかな?とも思っています。
鈴木 どういう空間向けに作ったんですか?
遠藤さん あまり考えていなかったですね。本当に勢いで作ったので(笑)。
鈴木 なるほど(笑)。でも遠藤さんが想像しない使い方をしてくれる方が現れると思いますし、この床でどんな雰囲気の空間ができ上がるのか楽しみですね。
重厚感たっぷりのユーラシアンチークのヘリンボーン
遠藤さん 3つ目は「ユーラシアンチーク ヘリンボーン」です。

ユーラシアンチークのヘリンボーンはどこの会社も作っていなかったですし、普通のチークよりも濃い色のヘリンボーンを作ってみたかったんです。ものすごい豪華な感じになるので。
鈴木 これはすごい重厚感がありますね。触ってみるとチークよりも硬く、重さもあります。この床はどんな空間にはまりそうですか?

遠藤さん 僕の勝手なイメージですが、壁が崩れ落ちそうな廃墟のような空間に合いそうな気がします。
それから、とても重厚なので土足で使うこともできます。まだ見に行ってないですが、最近完成した新宿のイタリアンレストランの床に使って頂きました。
ちなみにこれは無塗装の状態ですが、このまま使ってもかっこいいと思います。

鈴木 無塗装でこんなに濃い色なんですね。オイル塗装がされているのかと思いました。
遠藤さん オイルで仕上げるとさらに濃い色になりますよ。ちなみにユーラシアンチークのヘリンボーンは価格が高く、たくさん出る床材でもありません。
これはアンドウッドとしてはロングテール(売れ筋ではないニッチな商品をラインナップとして持つこと)の商品ですね。
ぼてっとした比率がかわいい、新たなミズナラヘリンボーン
遠藤さん 4つ目は「オーク ヘリンボーン パーケット」です。これは正確にはミズナラですね。

元々うちで幅190mm×長さ1,900mmのミズナラの床材を扱っていて、これを作る際に出てしまう端材をうまく活用できないかと思って作ったものです。正方形のパーケットに近い1:2の縦横比が特徴です。
鈴木 これは見たことがないヘリンボーンです。2枚並べると正方形のパーケットになるのも面白いですね。ぼてっとした縦横比でありながらも上品で、そのギャップも魅力的です。

遠藤さん 僕も今まで見たことがないサイズのヘリンボーンになりました。自分でも使ってみたいですし、マンションリノベなどで人気が出る床材じゃないかなと思っています。

長さ600mmのヘリンボーンがワイルドな空間をつくり出す
鈴木 ご紹介いただいた4つの床材。どれも個性が際立っていて面白いですね。次に2025年に使われ方が面白かった床材について教えて頂けますか?
遠藤さん 新潟市内のタコス屋さんで使われたオークのラージヘリンボーンですね。こちらは1つのピースが120mm×600mmと大きいんですよ。椅子との対比を見ると分かりやすいと思います。

鈴木 たしかに普通のヘリンボーンと比べてワイルドな感じがしますね。繊細という印象ではなく、ラフでごつい感じがします。
遠藤さん ピースが大きいのでパーケットっぽくも見えますね。でも、これはあまり認知されていないですし、この大きさというのがあまりニーズとしても高くないです。今ある在庫を売り切ったら、今後は作らない可能性もあります。
鈴木 たしかに、大きいパーケットというのがイメージにない人が多いと思うので、採用には慎重になるかもしれませんね。そう考えるとこの施工事例写真は貴重ですし、この写真を見て使う人が増えるかもしれませんね。ワイルドな空間をつくりたい人にはとてもいいサイズだと思います。
気になっている方は在庫がなくなる前に購入をした方が良さそうですね。

改めて安全性・寸法安定性・耐久性を重視した床材づくりを進める
鈴木 では最後に遠藤さんから2026年の抱負を語って頂けますでしょうか?
遠藤さん 以前もお話をしたと思うんですけど、円安がものすごくしんどい状況です。そういう場合、ややもするとコストをどんどん下げて品質が悪くなるというのはよくある話です。
でも僕は今、粗利を下げてでも、むしろ品質を上げていこうとしています。
自分への戒めのために「本日のand wood」にも書いたんですが、安全性・寸法安定性・耐久性の3つを大切にしていきたいと思っています。
これは僕が会社を立ち上げた時に掲げたことでもありますが、改めて守ることが今の抱負ですね。

鈴木 安全性・寸法安定性・耐久性。床材における最も大事なことですよね。
遠藤さん 「貧すれば鈍する」という言葉がありますけれども、実際、人はそうなりやすいんですよ。「粗利を下げないために、品質を下げて売っていこう」って。
でも、息の長い商売をしていくには、そうなってはいけない。

それに加えて、引き続き丸太の歩留まりも大事にしてフローリング製造を行っています。そういう基本的なことを大事にすることで、いいものが生まれているとも感じていますね。
今回も歩留まりを意識することで、ピーリングカットした「ホワイトヒッコリー」や、端材を活用した「オーク ヘリンボーン パーケット」が生まれました。
そして、安全性・寸法安定性・耐久性を大事にすることで、お客さんと長く付き合うことができ、新しい商品が売れていきます。
そこで出会ったお施主さん、設計の方、デザイナーの方にその床の良さを逆に教えて頂くこともありますし、そういうふうにしてアンドウッドが回っているのかなと思います。
鈴木 とても堅実ですね。その上で「チーク アンティークホワイト」のようなチャレンジングな床材を作っているのも面白いですよね。これは受け入れられるだろうという製品と、売れるかどうか分からない製品を混ぜていく感じでしょうか?
遠藤さん そうです。でも一つルールを決めていて、新しい床材を作ったら、同時に廃番もつくるようにしています。そうして入れ替えながらやっているんですよ。

鈴木 なるほど!そう考えると、アンドウッドさんが扱っている床材でいいなと思ったものがあっても、場合によってはその時にしか入手できないかもしれない。そんな一期一会があるのも面白いところですよね。

2017年に新潟市で創業したアンドウッドは現在創業9年目。
創業時から一貫して一人で会社を運営し、信頼できる海外の提携工場と共に床材の開発・製造を行い、全国の建築関係者へ販売を続けています。
新しいスタンダードを目指す床材から直感的に面白いと思う床材まで。家づくりを検討中の方は、アンドウッド遠藤大樹さんがつくり出す個性的な床材の世界をのぞいてみてはいかがでしょうか?

and wood(アンドウッド)
住所:新潟市中央区本馬越2-18-1
電話:025-385-6763
Instagram:@and_wood_japan
取材・文/Daily Lives Niigata 鈴木亮平
鈴木 亮平
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