【Daily Lives Niigata10周年記念企画】2016年に訪れた「15坪の家」を10年ぶりに再び訪問

Yhouse-12
The following two tabs change content below.

鈴木 亮平

新潟県在住の編集者・ライター・カメラマン。1983年生まれ。取材・撮影で訪れた住宅は2025年10月に累計1,000軒を達成。近年、モダニズム建築巡礼と1960年代につくられた団地巡礼にはまっています。

Daily Lives Niigataをスタートして10年が経ちました

みなさまこんにちは。Daily Lives Niigataの鈴木です。

実は今年2026年はDaily Lives Niigataをスタートしてちょうど10年の節目の年になります。

2016年7月19日に最初の読み物記事「#001 延床面積15坪。小さな住まいに流れる、心地いい時間。」を公開しました。

#001 延床面積15坪。小さな住まいに流れる、心地いい時間。

こちらはネイティブディメンションズ一級建築士事務所・鈴木淳さんが設計を行った、新潟市内に立つ狭小住宅。

オーナーご夫妻がなぜ小さな家を建てようと思ったのか?どのようなコンセプトの家なのか?オーナーご夫妻はこの家でどのように暮らしているのか?

そんなことをまとめた記念すべき最初の記事になっています。

 

10年前に取材したオーナー様宅を再訪

今年に入り、Daily Lives Niigataの10周年を記念する記事を制作したいと思い、前述の記事のオーナー様宅を10年ぶりに訪ね、10年という年月を経て暮らしや住まいがどのように変化したのか(あるいは変化しなかったのか)をインタビューしてみたいと考えました。

それは長く使っていく住宅の本質を伝える上で大きな意義があるように思ったからです。

そうして、オーナーのY様ご夫妻、ネイティブディメンションズ一級建築士事務所・鈴木淳さんからご協力を頂き、10年ぶりの取材を実現することができました。

ではここから10周年記念企画の記事をご覧ください。

Yhouse-04
築12年になるY様邸。オークの玄関ドアは経年変化で重厚さを増している。

10年の間に変わったことは?

――この度は10周年記念の取材にご協力を頂きありがとうございます。10年も経った感じがしないですが、お会いするのは10年ぶりになりますね。さっそくですが、この10年の間に暮らし方などどのような変化がありましたでしょうか?

ご主人 家での暮らしというのは特にこの10年で変わったことはないんですが、庭木に付く毛虫の問題を解決しました。毛虫は最初の年からポーチの横のモミジの木に付いていて、その後もずっと悩まされ続けて、一時期は「木を切ろうか」と思うくらいノイローゼ気味になっていたんです。

毎年噴霧器で殺虫剤をまいていたんですが、だんだんと面倒になって、葉っぱを一枚一枚見ながら毛虫が付いてる葉っぱを切るようになりました。

2026-Yhouse-01
2016年撮影。高基礎と深い軒・ケラバが特徴的な外観。
Yhouse-03
2026年撮影。シンボルツリーのモミジが大きく成長した。

奥様 そうそう。主人は一時期、発狂しそうになりながら葉っぱを切っていたんですよ。

ご主人 でもある日「ベニカスプレー」という殺虫剤をシュッシュッっとまいたら、毛虫がみんな死んだんです。次の年にほんのちょっと毛虫が出た時にまいたら、その年はそれっきり出てこなくなって、ここ2~3年はそのやり方にしています。毎年6月下旬~7月初旬の晴れの日が続く時にスプレーをしています。毛虫が大きくなる前にやるのがポイントですね。

Yhouse-28

Yhouse-29

――なるほど…。家のお話を聞こうと思いましたが、木に付く毛虫がこの10年の大きなトピックだったんですね!

ご主人 それから雑草にも悩まされていました。防草シートを敷いてもらっていたんですが、それでも間から雑草が出てくるんですよ。どうしようかと思って一度防草シートを剝いでみたら、下に根っこがびっしり生えていたんです。焼きそばみたいに。それを全部取り除いたら、その後ほとんど生えてこなくなりました。

――毛虫や雑草にしっかり立ち向かって解決をしていったんですね。なかなか防草シートを剥いで根っこを取り除く人は少ないでしょうから、貴重な知見だと思いました。家の中はどうでしょうか?

奥様 6年程前に吹き抜けのところの物干しを変えましたね。

ご主人 元々はワイヤーだったんですけど、たるんで洗濯物が真ん中に寄るようになってしまって。そんな時に、他のミニストック(※)のおうちで金物が付いているのを見てうらやましいと思い、金物に変えてもらいました(笑)。

(※)ミニストック…ネイティブディメンションズ一級建築士事務所・鈴木淳さんが提唱する狭小住宅の名称。高い省エネ性能を持ち、床下空間には大容量の収納スペースが備えられている。

階段から眺める1階の景色。障子戸が柔らかい光を屋内に届けてくれる。掃き出し窓の外にはウッドデッキが連続。左上に見えるワイヤーが物干しになっている。
2016年撮影。写真左上にワイヤータイプの物干しが見える。
Yhouse-18
2026年撮影。左上に見える物干しはがっちりとしたレール状の金物に変わった。

あとは、掃除の頻度が最初の頃よりも落ちてきましたね。以前は隔週くらいで大掛かりな掃除をしていたんですけど、最近は月1とかもうちょっと長めになっています。掃除は掃除機をかけて終わりにすることが増えました。

 

夏冬の暑さ寒さを感じない住まい

――改めてご自宅で満足しているのはどんなことでしょうか?

ご主人 家の中の質感やでこぼこしている感じとか、どこを見てもいい感じだなあと思いながら暮らしています。テレビ側の壁に窓がないのもすっきりしていていいですね。西日も入ってこないですし。

奥様 そうそう。全然飽きないですね。あとは、真夏も真冬も家の中が快適なことですね。職場の方と話をしていると、家の中が暑い寒いという話題になりますが、あまり共感できないまま相槌を打つことが多いです。そういう時に改めて快適な家に住めていることにありがたさを感じます。

3mもの長さを持つ特注のオーク材のテーブル。左の開口部からたっぷりと光が降り注ぎ拡散するので、曇りの日でも家中に程よく光が回る。
2016年撮影。中央にあるのは3mもの長さを持つ特注のオーク材のテーブル。
Yhouse-09
2026年撮影。絵画や植物が変わっているが、10年が経過しても大きな変化は見られない。

――十数年経っても日々家の良さを感じながら暮らしているんですね。改善していきたいことなどはありますか?

ご主人 庭でしょうかね。木の根元に生えていた苔もだいぶ枯れてしまったので。

奥様 一方で主人の実家からもらってきた植物をコンクリートの間に植えたら増えていったので、これをもっと増やしていきたいなあと思っています。水をあげるくらいで特に手も掛かりませんので。

Yhouse-30

――住んでから設備機器の交換や建材の補修などのリフォームはされましたか?

ご主人 エアコンは去年か一昨年に交換をしました。これまでにエアコンはガス漏れなどで真夏に3回故障して修理をしたのですが、10年が経過したタイミングだったので2台とも交換をしましたね。

奥様 あとは壁の塗装ですね。2年目に一度ヒビを補修して頂き、その後5年目くらいに壁にあけてしまった穴を補修してもらったんですが微妙に色が合わなくて、10年目でもう一度塗装をして頂きました。

2階の半分はオープンスペース。ロフトへと上がる固定階段も設けられている。将来的に間仕切りを付けることもできる。
2016年撮影。2階の半分はオープンスペース。ロフトへと上がる固定階段が設けられている。
Yhouse-22
2026年撮影。こちらも雑貨や植物が増えている以外に大きな変化が見られない。

ご主人 それから玄関ドアの色が変色していったので、やすりをかけて自分で塗装をしたいなと思い、わりと早々にクリアのオイル塗料の用意をしていたんです。でも今の質感がなくなるのももったいないように思い、結局塗り直さずそのままにしています。

Yhouse-31

あとはレッドシダーのウッドデッキの釘が浮いてきていてちょっと気になっていますね。何もしないと苔みたいなものが付いて緑っぽくなったりするので、年に1回くらいデッキブラシをかけて掃除をしています。

Yhouse-16

 

完成見学会のOB枠でミニストックオーナー同士の交流も

――ミニストックに住んだことでできた人とのつながりはありますか?

奥様 遊びにきてくれた友達がうちを気に入ってくれて、その後ミニストックを建てたのが一番大きい出来事です。あとは、ミニストックの完成見学会にOB枠があるので、そこに遊びに行った時に他のミニストックのオーナーさんと会ったりしますね。

Yhouse-19

ご主人 オーナーさん同士が集まるとエアコンの設定温度を何度にしているかとか、情報交換をすることもあります。僕は掃除の仕方について他のオーナーさんに質問をされることが多く、ホコリを飛ばすためにブロワーを使うことをお薦めするんですけど、なかなか採用する人はいないみたいです(笑)。

あと鈴木さんの自宅が完成する前は、家づくりを検討中の方を鈴木さんがお連れしてこの家を見て頂くことがありましたので、初期の頃のミニストックのオーナーさんにはここに来て頂いていましたね。

2026-Yhouse-06-EDIT
2016年撮影。
Yhouse-12
2026年撮影。

――鈴木さんとの交流も継続的に続いているんですね。

ご主人 街でばったり会うこともよくありますし、新しいミニストックが完成した時の見学会でお会いしています。見学会のOB枠は鈴木さんに家のメンテナンスの相談ができるという点でも良い機会になっていますね。

 

小さいからきれいな状態を保ちやすい。広い収納も魅力

――ミニストックはYさんご夫婦にとってどんな存在でしょうか?

ご主人 10年前にも話しましたけど、僕の実家はすごく大きくて、古い部分もあったので小さい頃は隙間風だらけでした。だから昔から新しいおうちを建ててピカピカな状態で住みたいと思っていて、その夢を実現したのがこのミニストックなんです。小さい家だから掃除がパパっとできてきれいな状態を保ちやすいですね。

奥様 どこを見てもお気に入り。帰ってきてホッとする場所であり、これからもずっと住んでいきたい場所です。

2026-Yhouse-02
2016年撮影。オークのフローリングが張られた玄関。
Yhouse-05
2026年撮影。フローリングの色が経年で変わっていること以外に大きな変化は見られない。

――ミニストックはどんな人に向いている家でしょうか?

ご主人 シンプルに暮らしたい人でしょうかね。でもミニマリストじゃなければいけないわけではなく、床下に広い収納スペースがあるので、物をたくさん持っている人にとっても住みやすい家です。

4.5畳の寝室は天井高を抑えたこもれる空間。寝室だけは床材にカーペットを選んだ。
2016年撮影。4.5畳の寝室。床材はカーペット。
Yhouse-25
2026年撮影。カーペットの消耗もなく変わらない美しさが維持されている。

 

鈴木淳さんの家づくりの目標は「変わらないこと」

――ありがとうございます。最後に少し鈴木さんからもお話をお聞きしたいと思います。鈴木さんにとってこのミニストック-01とYさんご夫婦はどのような存在でしょうか?

鈴木淳さん Yさん夫婦は神ですよ(笑)。本当にありがたい存在です。当時は自分はただの野良建築士でしたからね。雨の日にさまよってる子犬ちゃんだった僕をそっと抱えてくれたのがYさん夫婦です。

最初にYさん夫婦から「家を建てたいのですが」というメールを頂いて、1回目に会った時に「お願いしたいです」とお話し頂いたのですが、僕の方が止めたんですよ。「2週間後にもう1回会いましょう。もう一度じっくり考えてからにしてください」って言って。

そして、このミニストック-01が建ったおかげで、「小さくても大丈夫なんだ」と納得して信じてくれる人が数珠つなぎに続いていきました。本当に0から1にしてくれたのがYさん夫婦です。

Yhouse-48
ネイティブディメンションズ一級建築士事務所・鈴木淳さん

――それからミニストックがいくつも建ち、現在はミニストック-18まで完成しているわけですが、その間にミニストックシリーズにはどんな変化がありましたか?

鈴木淳さん 「ミニストックをつくる設計事務所」としてやっていこうと思っていたので、変化しないことを目標にしていたところもあるんですよ。もちろん進化する部分はあるんですけど、家って何十年と住むものなので、基本的に変わらないことが大事だなあと思っていたので。

なので今もこのテーブルを設計していますし、壁の色も玄関の仕様も、この01を引き継いでいるミニストックが続いているんですよね。

それに、変わらないことはお客さんに対しての責任でもあると考えています。逆に「今はこれが人気ですよ」みたいなことはあまり言いたくないんです。

Yhouse-27

――変わらないことが大事。ハッとさせられる考え方です。その中で今後の展望はどのように考えていますか?

鈴木淳さん 2014年に完成したこのミニストック-01を今建てようとすると、当時の1.5倍くらいの建築費になってしまいます。なかなか建てにくい時代になっていますので、形は変えずにもう少し安くつくれるように規格化はやっていきたいなあと考えています。あとはミニストックの賃貸とかですね。

元々「誰でも住める家」「気軽に住める家」というのもコンセプトだったので、今の時代に気軽に住める住まいが何なのかを考えていくと、規格化や賃貸を視野に入れていく必要があるのかなと考えています。

玄関より居室を眺める。左がネイティブディメンションズの鈴木淳氏、右がY夫妻。
2016年撮影。玄関より居室を眺める。
Yhouse-07
2026年撮影。10年前と同じ場所に座るネイティブディメンションズ鈴木淳さんとYさん夫婦。

10年ぶりに訪れる家というのは、家具の配置が変わったり内装の傷が増えたり、多くの変化が見られるものと思っていたのですが、庭木の成長以外あまりにも変化が少ないことに驚かされました。

また、Yさんご夫婦の家への満足感も10年を経ても変わることなく、快適な住まいで穏やかな日常を楽しんでいる様子が伝わってきました。

十年一昔という言葉があるように、10年という歳月の中で世の中は大きく変わっています。しかし、この家の中はまるで時がゆっくりと流れていたかのように多くのことがそのままで、「変わらないこと」の魅力や面白さを感じることができました。

Yhouse-34

Daily Lives Niigataも10年を経たことで、今回のように時の流れを伝える記事を制作できるようになりました。

住宅や建築という数十年単位で使われていくものがどう変化していくのか?

長く続けてきたことで私自身新しい景色が見えるようになったと感じています。

今後はこれまで以上に「時の流れ」を意識をしながら住宅や建築の取材に取り組んでいきたいと思います。これからもDaily Lives Niigataをよろしくお願い致します。


取材協力/Y様ご夫婦、ネイティブディメンションズ一級建築士事務所 鈴木淳さん

Y邸
所在地 新潟市中央区
延床面積 52.17㎡(15.78坪)
竣工 2014年5月
設計 ネイティブディメンションズ一級建築士事務所(インスタグラム)

(写真・文/鈴木亮平)

The following two tabs change content below.

鈴木 亮平

新潟県在住の編集者・ライター・カメラマン。1983年生まれ。取材・撮影で訪れた住宅は2025年10月に累計1,000軒を達成。近年、モダニズム建築巡礼と1960年代につくられた団地巡礼にはまっています。