【インタビュー】新潟市沼垂テラスにある無垢フローリング専門店「アンドウッド」のお仕事

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鈴木 亮平

新潟市在住の編集者・ライター・カメラマン。1983年生まれ。企画・編集・取材・コピーライティング・撮影とコンテンツ制作に必要なスキルを幅広くカバー。累計800軒以上の住宅取材を行う。

今回インタビュー取材に訪れたのは、新潟市中央区沼垂東3丁目の沼垂テラス商店街にショールームを構える無垢フローリング専門店「アンドウッド」。

※2021年3月に、新潟市中央区本馬越2丁目18−1に移転。

住宅の床材として人気の高い無垢材は、自然素材ゆえの独特の表情から、空間の雰囲気に大きな影響を与えるものです。

アンドウッドは無垢フローリングに特化したお店で、2017年6月に代表の遠藤大樹さんがお一人で創業しました。

無垢材の特徴から産地の事情まで、高い専門知識を持つ遠藤さんにお話をうかがいました。

 

―――起業して1年4カ月になりますが、無垢フローリングの製造販売を独立して始めようとしたきっかけは何だったのでしょうか?

遠藤さん:
以前、東京の無垢フローリングを扱う商社でバイヤーとして働いていました。仕事柄頻繁に海外出張があり、家にいる時間が少なかったんです。やがて子どもが生まれたのですが、私が大阪出身で妻は新潟出身。頼る親もいない東京での育児の負担は妻にとってとても大きくなっていきました。

そこで、妻の実家がある新潟に移り住むことに決めたんです。自ずと私は勤めていた会社で働けなくなるため、起業を選びました。

あと、独立をしてやってみたかったことがありました。それは、ビジネスとしては非効率になってしまいますが、自分が買い付けからエンドユーザーへの販売まで一貫して関わり、木のことを詳しく説明するということです。木を売るのに説明義務があると思うんですよ。木ってそれくらい貴重な素材だと思っているので。

それに、説明されてどういったものか分かる方がお客さんも嬉しいんじゃないでしょうか?例えば牛肉を食べる時に、そのお肉が村上牛なのか、産地がよく分からない牛肉なのか、分かってて食べるのとそうでないのとで感じるものが違いますよね。床も毎日使う中で、どこの木なんだというのが分かっていた方が面白いと思うんです。

 

―――遠藤さん自身が、木のことを深く知りたいという探求心がかなり強いんですね?

遠藤さん:
自分自身がやっぱり知りたいものですから、例えばこの木はどこから来た丸太なんだろう?とか。でも実はそれって、デザインにも関係してくることなんですよ。

これは今度インドネシアから輸入してくるチークのパーケットなんですが、ちょっと緑が入っているんです。下の赤みが強いチークと比べてみると分かると思うんですが。

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で、確認をしたら、歩留まりの関係でいつもとは違う森で採ってきたものだったんです。産地が変わると木目や色も変わる。つまり、空間のデザインにも影響を与えるんです。だから、ただ「チークです」と言って売るのではなくて、「どこの国のどの森のチークだからこういう色なんだ」というのを売る側として言えた方がいいと思っています。違う色のチークを同じチークとして売っちゃダメだと思うんですよ。そういう意味でも説明義務というのがあると思っています。

 

―――仕事のやりがいや面白さについて教えてください。

遠藤さん:
竣工写真を撮っている時が一番やりがいを感じる時ですね。ちょっと自分でもやり過ぎかな…と思うこともあるんですけど、たぶんフローリングの製造から最後の竣工写真まで一人でやっている人っていないと思います(笑)。

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竣工時の状態って自分が造っている建材の完成形なんです。建材ってそのままの状態では未完成品です。プラモデルのパーツみたいなもので。この木はこういう風に使ってもらえたらいいなというイメージがあって、それが形になった時、時には想像以上のものになって出てきた時はやっぱりめちゃめちゃ嬉しいですね。あと、職人さんがすごくきれいに施工をしてくれると感動します。

竣工写真はカメラマンさんに頼るのではなく、自分で撮りたくなりますね。見るポイントが特殊だからというのもありますが(笑)。撮りたいポイントというのがカメラマンと自分とで少しズレがあるんです。

 

―――この仕事をしていて感じる「苦労」にはどんなものがありますか?

遠藤さん:
やることがなくなる時、というのがふとした瞬間にできるのですが、それは恐怖ですね。逆に寝る間もないくらいに忙しい時があるんですが、それは苦労ではなくて喜びなんですよ。

それはお金のことというよりも、「自分が作っているフローリングが誰からも必要とされていないんじゃないか?」という感覚になるからで、それはすごく悲しいことですね。

実際にはそういう時期はたまにしか来ないんですが、その間は出口のないトンネルにいるような感じで。「いつこれ抜けるんだ!?」みたいな。それが苦労ですね(笑)。

 

―――逆にこれまで獲得してきたことはどんなことがありますか?

遠藤さん:
新潟の新しいお客さんですね。「住学(すがく)」という建築士や工務店の方が集まるイベントに参加して新潟の色々な建築士の方と知り合うようになりましたが、とても面白い方が多いです。

木を「こういう使い方してくれるんだ!」とかいろいろな発見がありますし。東京では出会えなかった方たちばかりで、新潟でこれだけ色々な建築士の方に会えるというのは意外でもありました。

あとはお金の話になりますが、自分のお金で海外送金をしたりするので、会社員だったころと比べて真剣度が変わりましたね。値付けを100%自分の判断でできるというのも、プレッシャーがありつつ楽しさがあります。

市場価格を基準にしつつも、枯渇しつつある材が市場価格で安い場合は高めに設定をしたりと、長い目で見て理にかなった判断を心がけています。木が枯渇してしまったら、今の子どもたちが将来使えなくなってしまう。そういう世代間の不公平はなくすべきだと思っています。

 

―――今後の展開について教えて頂けますか?

遠藤さん:
来年(2019年)の1月に法人化して株式会社にする予定です。あと、従業員を入れると思います。となると、その従業員に僕と全く同じ動きをしてもらうことになると思います。海外での買い付けから建物の竣工まで関わるような。

木が好きとか、建築が好きとか、輸入に興味があるとか、そんな人と仕事をしたいですね。スキルは後からついてくるものだと思っています。僕は模索をしながらノウハウを身に付けてきたんですが、それを凝縮して伝えることができるので1年くらいでスキルを身に付けてもらえるのではないかと思います。

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―――限りある木材を今後どのように活用していくといいのでしょうか?

遠藤さん:
リペアに興味があります。古い建物が潰されることが多いですが、その建物を残しつつ必要な箇所に新しいものを入れる。これが理想です。その時に、そこの床のリペアをしたいです。

あとは、新築して10年20年経った家の床のリペアですね。新築時はウレタン塗装だったけど、今度はオイル塗装にしてみるとか。こういう事業をやりたいですね。ただ、完全にきれいにするのではなく傷などは残しつつリペアをして、ジーンズのように使っていくような直し方も実践しているところです。

それから、新品の床を使う時に、その床が最終的にどうなるか?というのを想像して使って欲しいというのがありますね。具体的にどういうことかと言うと、例えば築50年のマンションに樹齢200年のいい木を施工しましたと。そのマンションがあと50年もつとしたら、樹齢200年の木がわずか50年でゴミと化してしまいます。それは違うだろうと思うんです。だから、そういうマンションに施工する場合は、はがせるような仕組みで施工したらどうかと思います。

植林をしている杉やパインならそこまで考える必要はないですけど、植林をしていないレアな木に関しては、そのような使い分けをする必要があると思います。木は内装材だったら200年300年と世代を超えて使っていける材料ですので。

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―――最後に一言お願いします。

遠藤さん:
色んな話をしましたが、無垢のフローリングは見た目の面白さから入って欲しいですね。例えばオークひとつをとっても張り方によってたくさんの形状があるんですよ。90mm幅のタイプと、幅広のタイプでかなり印象が変わります。これがヘリンボーンだったり、節ありか節なしかでも変わってきます。その面白さを伝えたいですね。

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人によって好みは分かれるので「おすすめの張り方」というのはないですが、個人的にはヘリンボーンなどの寄せ木張りが好きです。

 

幅広い知識を持つアンドウッドの遠藤大樹さん。理屈抜きの見た目の美しさや面白さが無垢フローリングの魅力ですが、木の背景を知ることでさらなる思い入れを持って無垢フローリングと付き合っていけるのではないでしょうか?

ちなみに、アンドウッドのWEBサイトには、遠藤さんが海外の産地や製材所の様子を詳しく紹介する「木材調達記」というコンテンツがあり、こちらがとても面白い読み物になっています。

新築やリノベーションの計画を始めたら、まずはフローリングから考えるというのも面白いかもしれませんね。沼垂テラスにあるショールームは予約制ですが、予約せずにふらりと訪れるなら沼垂テラス商店街の「朝市」などのイベント時がおすすめですよ。

取材協力:
and wood(アンドウッド) 代表・遠藤大樹さん
旧住所:新潟市中央区沼垂東3-5-25
→2021年3月以降の住所:新潟市中央区本馬越2-18-1
電話番号:025-385-6763
ショールーム営業時間:9:00-18:00(予約制)

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写真・文/鈴木亮平

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