#019 築40年。隙間風が吹く極寒の建売住宅が、断熱リフォームで春のように暖かい家に再生!

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鈴木 亮平

新潟県聖籠町在住の編集者・ライター・カメラマン。1983年生まれ。企画・編集・取材・コピーライティング・撮影とコンテンツ制作に必要なスキルを幅広くカバー。累計800軒以上の住宅取材を行う。

新潟市西区旧黒埼町の住宅街に立つA邸。

60代のAさんご夫婦が暮らすのは、築44年の住まいだ。

1975年に新築の建売住宅を購入し、この家で二人の子どもを育てたが、子育てが終わり今は夫婦2人だけで暮らしている。

4年前に大規模なリフォームをすることを決め、一級建築士資格を持つ次男の紹介で、断熱リフォームの高い技術と知識を持つ宮﨑建築の宮﨑直也さんに出会い、工事を依頼したという。

(宮﨑建築の記事はこちらもご覧ください↓)

#009 必要なものは自分たちでつくる。古くて新しい農村での暮らし方。

 

宮﨑さんの仕事ぶりをよく知るAさんの次男は「大規模な断熱リノベは大工外注管理の態勢では難しいんです。そこで、断熱気密に正しい理解があり、かつ自身が大工である宮﨑さんは適任だと思いました」と話す。

老朽化が進んだ家は、外壁や屋根の張り替えはもちろんのこと、基礎や構造材の補強、さらには無断熱だった家を断熱化するという大掛かりな工事の必要があった。

しかも、家のすべてを断熱するのではなく、夫婦2人が生活をする1階の領域だけ部分断熱をするという難易度の高い工事だ。

しかし、それによってコストを抑えながら、定年退職後の人生を快適に暮らせる家に再生することができた。

リフォームの前と後で、暮らしがどのように変わったのか?Aさん夫婦に話を伺った。

 

<BEFORE>冬は6畳の部屋から出られない極寒の家

A邸は2階建ての木造住宅。2階には6畳の部屋が2つあり、1階はインナーガレージと水回り、そして6畳のダイニングキッチン、6畳の茶の間、6畳の寝室の3部屋が隣接する間取りだった。ガレージ部分を入れて、延床面積は約30坪程の住まいだ。

1970年代の標準的な木造住宅の仕様で、窓は熱を伝えやすいアルミサッシにシングルガラス。アルミ樹脂複合サッシ+ペアガラスが主流の現在の住宅と比較すると、窓だけ見ても性能がかなり低いことが分かる。そして、断熱材に関しては、壁・床・天井に断熱材が全く入っていない「無断熱」状態だったという。

「とにかく冬が寒くて…。6畳の茶の間の戸を閉め切って石油ファンヒーターを使い、こたつに入りながら過ごしていました。それでも外からの風が窓の枠や畳の隙間など、色んなところから入ってきて寒かったです。暖房をしていない隣の部屋にものを取りに行くのも億劫でしたし、お風呂やトイレに行くのもつらかったですね」と、かつての暮らしを振り返るご主人。

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燃焼時に大量の水蒸気を発生させる石油ファンヒーターを茶の間で使い、洗濯物もそこで干していたため、部屋の中は湿気だらけで、窓はいつも結露していたという。

「結露した水が流れ落ちる窓枠の部分に水が溜まるので、そこにタオルを置いて水を吸わせていました」と奥様。

茶の間の隣にあるキッチンは北向きで、日が出ても暖まることはなく、壁一面の窓ガラスから冷気が伝わってくる極寒の空間だった。隣の寝室も光が入りにくいため、暗く寒かったという。

「寝室が湿気っぽくて、朝起きると布団の下が湿っていましたので、夜は布団乾燥機で布団を乾かしてから寝ていました」(奥様)。

「あと、家の中なのに吐く息が白くなるくらい寒かったので、布団を何枚も掛けていましたね。朝はまず茶の間のファンヒーターのボタンを押し、もう1度布団に戻って、茶の間が暖まった頃に起きていました。それでも、なかなか布団から離れられなかったですね(笑)」とご主人。

家の中の急激な温度差により血圧が大きく変動し、失神や心筋梗塞を引き起こす「ヒートショック」が近年問題視されるようになっている。

高齢になる程にヒートショックが起こりやすくなるため、Aさんご夫婦が望んだ断熱リフォームは、今後の人生を健康的に送る上でも重要な意味があった。

 

<AFTER>冬の寒さを忘れるくらい、どこにいても暖かい家に

数カ月に渡る大規模な改修工事を終えたA邸。どのように家が生まれ変わったのか、リフォーム前の写真と比較して見ていこう。

1.外壁・屋根

かつての外壁はトタン張り、屋根は瓦屋根だったが、外壁は耐久性の高いガルバリウム鋼板+杉板に張り替え。屋根は金属製の屋根にすることで、荷重を減らし耐震性を向上させている。

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2階には西向き(道路側)の大きな窓があったが、こちらは外壁にして断熱性能を高めている。

玄関周りの外壁は板張りに変更。リフォームして3年が経ち、経年変化している。

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2.玄関・廊下・水回り

かつては玄関に入ると奥にある水回りや茶の間までがひとつながりだったが、玄関ホールから先を断熱ゾーン、手前を非断熱ゾーンに分けることで、普段の生活空間(合計31畳分)だけを快適な空間にしている。

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階段は既存のまま。経年変化した踏板がこの家の歴史を感じさせる。

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断熱ゾーンと非断熱ゾーンを分けるのは、厚みのある断熱建具

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ここを境に空気の温かさも床の温かさも全く別物になる。

玄関横に見えるドアを開けるとガレージに繋がる。

トイレ・浴室・洗面室は十数年前にリフォームをしておりきれいな状態だったため、今回の工事では内窓を追加するだけにとどめている。

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廊下から見える間取りはリフォーム後も変わっていないが、断熱・耐震性能は大幅に向上している。

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廊下から玄関を振り返ると、先程の断熱建具が見える。

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夏や冬はここを閉めて使い、春や秋などの過ごしやすい季節は開放して空間に広がりを出すことができる。

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もちろんバリアフリーで段差がないため歩行の邪魔になることもない。「リフォーム前は段差が多くて、家の中でつまずくことが多かったです」とご主人。今は廊下も和室も同じ高さなので、家の中で転倒することもなく安全に生活ができるそうだ。

3.キッチン

6畳のキッチンは壁付けタイプで窓の面積も広かったが、その分寒く、冷蔵庫の納まりも悪かった。リフォーム後は窓の面積を抑え、高い断熱性能を持つ樹脂製サッシ+ペアガラスの窓に交換している。滑り出し窓なので気密性能も高い

また、耐震性能を高めるために耐力壁を増やし、そこに冷蔵庫を配置することで以前よりもすっきりとしたレイアウトになった。奥様の希望でキッチンはL字型のシステムキッチンに変更。食器棚も新調し、炊飯器や電子レンジなどの調理家電もきれいに納められている。

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床は廊下と同様に無垢のヒノキを使用しており、針葉樹ならではの柔らかく温かい踏み心地が気持ちいい。かつて無断熱だった床下には高性能グラスウールを105mm充填しているので、床がヒンヤリすることもない。

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無断熱の玄関ホールの床と比べるとその違いは歴然としている。

「冬に外から帰ってきてこの快適さを実感するたびに、宮﨑さんの顔を思い出します(笑)」とご主人。

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天板に花柄があしらわれたレトロなデザインのダイニングテーブルは、生まれ変わった空間の中で、家族の歴史と思い出を今に伝えている。

4.茶の間

6畳の茶の間には、仏間と床の間が並んでいたが、TVボードと吊り棚に刷新。空間がシンプルになり、以前よりも広く感じられるようになった

そして2間(約3.6m)分あった掃き出し窓は、1.5間(約2.7m)に縮小。その分、耐力壁を増やし耐震性能を強化している。また、障子を壁側に引き込めるため、窓のサイズは小さくなっているものの明るさは増している

「この家の図面が残っていたんですが、図面に記載されていた筋交いが実際には入っていない箇所もありました」と宮﨑さん。

古い建物においてはよくあることなのだという。壁を解体後、適所に筋交いと構造用合板を配して耐震性能を向上させ、さらに基礎を新設したり補強したりと、徹底的に改善を行った。

以前は強い風が吹くと家の中の建具がガタガタ揺れていましたが、今はそういう揺れは全くなくなりました。それから、外の音が聞こえなくなりずいぶんと静かになりましたね」(ご主人)。

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かつては、冬の間は茶の間の建具を全て閉め切っていたが、今は隣接する空間の建具は開放し、大きなワンルームにして使っているという。

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暖房器具は茶の間に置かれた9畳用の温水ルームヒーター1台のみ。これで31畳分の空間を十分に暖められる。温水ルームヒーターは空気を汚さないので、石油ファンヒーターのような窓を開けての換気は不要だ。

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「前は帰ってきた息子にいつも『空気が悪い!』と言われていました(笑)」(ご主人)。

「寝室の一部を物干しスペースにしていますが、冬場は特に洗濯物が乾くのが早いんですよ」(奥様)。濡れた洗濯物が加湿器代わりになり、乾燥を防ぐ効果も得られ一石二鳥となっている。

5.寝室

窓が少なく薄暗かった寝室は、北側に高窓を設けたことで日中は常時安定した光が差し込む明るい空間に生まれ変わった。窓の外のテラス部分(1.5畳)を増築したことで空間に余裕が生まれ、奥様の鏡台の納まりも良くなっている。

また、0.5畳分の収納ができたことで、物が片付きやすくなっている

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高窓には中に空気層をつくることで断熱するハニカムブラインドを採用。樹脂サッシとの組み合わせで一層高い断熱効果を発揮する。また、写真からは分からないが、北側の壁の中は通常の105mmの断熱材の外側にさらに50mmの断熱材を足す「付加断熱」がされている。「北側は壁の面積が大きいので、付加断熱の効果が出やすいんですよ」と宮﨑さん。

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宮﨑さんが緻密に計算した上で行った断熱改修と耐震改修。表層部分やキッチンなどの設備だけを入れ替えるリフォームとは異なり、宮﨑さんが行ったのは躯体や断熱という、健康で安全に暮らす上で最も重要な、住宅としての根幹と言える部分の徹底した改善だ。

「今は寝るときは羽毛布団1枚で十分だし、夜トイレに行くのに上着を着る必要もありません。冬でも朝気持ちよく起きられますし、外出から帰ってきても家の中の熱が残っていて暖かいんですよ」とご主人。

冬、建具を締め切り、冷たい隙間風に湿気や結露、石油ファンヒーターで汚れた空気に耐えながら過ごした暮らしは遠い過去のものとなった。

もうリフォーム前の暮らしには戻れないですね。もっと早くリフォームをすれば良かったとも思います。とにかく、これだけのことをしてくれた宮﨑さんには感謝しかない。宮﨑さんが住んでいる阿賀野市の方に足を向けて寝られないです(笑)」(ご主人)。

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Aさんご夫婦のように、シニア世代が若い頃に購入した住宅は老朽化が進み、建て替えか大規模な改修が必要となっている。

目には見えない「断熱性能」を向上させることで、暮らしは全く違うものに変わる。そして、健康寿命を伸ばすことにも繋がる

断熱性能の低い家を断熱リフォームで安全で快適な家に変えていくことを使命と考えている宮﨑さん。部分的な断熱リフォームという難易度の高い工事を終え、リフォームでできることの奥深さを証明してみせた。

そして、この断熱リフォームの成功は、次の奥様の兄弟の家の断熱リフォームへと繋がり、宮﨑さんの実績はその後も着実に増え続けている。

A邸(大規模リフォーム)
新潟市西区
延床面積 101.72㎡(30.77坪)
工事時期 2015年
設計・施工/宮﨑建築株式会社

写真・文/鈴木亮平

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鈴木 亮平

新潟県聖籠町在住の編集者・ライター・カメラマン。1983年生まれ。企画・編集・取材・コピーライティング・撮影とコンテンツ制作に必要なスキルを幅広くカバー。累計800軒以上の住宅取材を行う。