#024 ズレが生み出す、奥行きと奥ゆかしさ

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鈴木 亮平

新潟市在住のフリーランスの編集者・ライター(屋号:Daily Lives)。1983年生まれ。企画・編集・取材・コピーライティング・撮影とコンテンツ制作に必要なスキルを幅広くカバー。紙・WEB問わずコンテンツ制作を行う。

新潟市中央区の海辺に近い住宅街に立つK邸は、細い私道を入ったところにある。袋小路の突き当たりに位置しているので、車通りもなく落ち着ける環境だ。

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知人の紹介で加藤淳一級建築士事務所に辿り着いたKさんご夫婦は、他のハウスメーカーにも新築の相談をしていたが、なかなか要望を聞いてもらえなかったという。

「例えば、階段で上がれるロフトを希望しても、『ハシゴじゃないと難しい』と言われたり…。希望する家がつくれないように思えて、途方に暮れていましたね(笑)」。

そんな時に加藤さんに出会いプランを描いてもらったところ、しっかりと要望をくみ取った上で、さらに想像を超えた提案をもらい、感激したという。

「太陽の動きを描いた現地の写真を作ってくださって、日の入り方も丁寧に考えて頂きました」と奥様。

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総2階をベースに、変化を付けた家

約50坪の敷地の北側に建物を、南西側にカーポートを配置したところ、手前にゆったりとしたスペースができた。

LDKから目が届くし車も入ってこないので、子どもたちが安全に遊ぶのにちょうどいい。それに、来客があれば車を2台は止められる。

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外観は一見複雑な形に見えるが、ベースは3間×4.25間の総2階。そこに玄関とダイニングキッチン部分が迫り出した構成だ。

南側と東側には窓を多く取っているが、西日を避けるため西側は脱衣所の窓1カ所のみ、熱損失が大きくなる北側は最小限の明かり取りの窓だけにして、断熱性能を高めている

 

広いシュークロークがある玄関

玄関ドアを開けると、奥へと伸びる空間が広がっていた。

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広い土間は動きやすく、奥のシュークロークには、家族の靴はもちろん、雨具や傘、アウトドア用品までたっぷりと格納できる。

引き戸を閉めれば、玄関をすっきりと見せられるのもポイントだ。建具の上があいているので空気が籠もることもない。

 

長方形をずらし、変化と奥行きをつくり出す

靴を脱いで引き戸を開けるとそこがもうLDK。

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明るいバーチ(カバ桜)の床が爽やかで、南の窓からたっぷりと入る光が気持ちいい。一般的にLDKはシンプルな長方形の平面が多いが、K邸では長方形を半分に分割し、あえてずらして変則的な形にしている

そうして実現したのが、長く伸びる対角線だ。長方形よりも距離が取れるので、入口からキッチンを見ると通常よりも広がりが感じられる。

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加藤さんが描いた概念図。

また、ダイニングテーブルが見え隠れするのもこの平面の特徴。壁に隠れて見えない部分ができることで、それがまた奥行きを感じさせる。

見えそうで見えない。そのこそばゆい感じは奥ゆかしくもある。

ソファの後ろから玄関側を見ると、壁にはTVボードとデスクが造作されていた。窓にはマリメッコの鮮やかなシェードが掛けられ、シンプルな空間に彩りを添えている。

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写真左下に格子が見えるが、実はこの家は「床下エアコン」を採用しており、ここにエアコンが設置されている。

床下エアコンとは、従来は家の外と認識されてきた床下の基礎内を断熱して、エアコンで基礎内から暖める暖房方法。床に設けられた通気口から、じんわりと暖気が上がってくる。

「一冬越してみましたが、とても快適に過ごせましたね。施工中の様子も見せて頂いていたんですが、大工さんが断熱材をみっちりと入れていたのが印象的でした。家が暖かいな~と思う時、その断熱材が詰まった様子を思い出すんです」と奥様。

施工を行った株式会社Ag-工務店の、見えないところを丁寧にやってくれる姿勢にも感動し、安心感を覚えたという。

アパートよりも広い居住空間になり、快適さもアップしたにも関わらず、光熱費は安くなっているが、それは高い断熱性能の賜物だ。

 

さりげない高天井から柔らかい光が拡散

リビングを過ぎると、少し奥まった場所にダイニングとキッチンがレイアウトされているが、ダイニングだけ天井を1m上げて、南側に小さな高窓を切っていた。

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その窓からの光が白い壁に反射しながら、ぼんやりと拡散されている。

大胆に大きな窓をつくれば、直射日光が強くなり過ぎる。控えめな高天井と控えめな高窓が、バランスよく居心地のいい空間をつくり出していた

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コーナー部分の2つの窓は、高い断熱性能を持つトリプルガラスがはめられた樹脂製サッシ。FIX窓にしたことで、気密性能も高められ、窓回りをすっきりとしたデザインにできる。機能とデザインの両方を考えて選んだ窓だ。

 

共働きだから、家事の負担は極力少なく

ダイニングの隣にあるのは広いアイランドキッチン。

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白いキッチンが空間に調和しており、圧迫感を感じさせない。リビングやダイニングを見渡しながら、料理をしたりコーヒーを淹れたり。広いワークトップではゆとりを感じながら作業ができる。

夫婦共働きで2人の子育てをするKさん夫婦は、どちらかが家事や育児をするのではなく、互いに協力し合っている。例えば、毎日の朝食や休日の食事を作るのはご主人の役割だという。

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生後10カ月のお子さんを抱っこしながら家事をこなす姿は、世の父親の鏡だ。ちなみにこの家の床がピカピカなのは、ご主人が「オスモウォッシュ&ケアー」を使ってまめに手入れをしているから。

夫婦でスマホのアプリを使い、掃除のTODOリストを共有して管理をしているという。家への愛着が、そんな習慣につながっている。

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「アパート暮らしの時は花を飾ろうとは思いませんでしたが、この家に住んだら飾ってみたくなりました」と話す奥様。

ちなみに花屋で買うのではなく、「FLOWER」というアプリを使って定期的に送られてくる花を飾っているそうだ。

時間をかけずに生活を豊かにしてくれるツールを上手に取り入れている。

共働きの夫婦にとって、家事の時短は重要な命題だが、K邸はそのあたりもよく考えられている。その一つがリビングに直結したファミリークローク

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普段使いの服やティッシュペーパーなどのストック品、バッグなど、よく使うが表には出しておきたくないものを収納している。

その隣にあるのは約3.5畳の洗面脱衣室。奥には3本の物干しパイプが設置されており、洗濯・物干し・収納がわずかな移動距離で完結する。

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棚も使いやすいようにオーダーメイドで設計されており、洗剤などのこまごまとした日用品を白いBOXに入れてすっきりとまとめている。

 

個室が並ぶ2階に、階段で上がれる便利なロフト

次に階段を上がって2階へと向かった。

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階段を上がった突き当たりは造作の本棚で、ここにはぎっしりと本が格納されていた。階段を上り下りする際にここで本を手に取り、寝室やリビングでゆっくり読む。移動のついでに手に取れるのがいい。

床はパインの無垢フローリングで、1階とはまた違った表情に仕上がっている。

2階には個室が3つ並んでおり、ベランダに面しているのが6.3畳の主寝室。

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残りの2部屋は5畳弱の個室。将来は子ども部屋として活用する予定だ。

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壁の一部はOSBでアクセントに。下地材なので、ここにビスなどの金具を打つこともできる。

また、2階からさらに、ロフトへ階段で上がることができる。

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こちらがロフトスペース。

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身をかがめないと歩けない空間だが、普段使わないものを保管するのに重宝している。また、手前はご主人の書斎スペースで、座椅子に腰掛けながら自分だけの時間に浸ることができる世の男性が憧れる隠れ家のような空間だ。

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快適に過ごせる性能も重視

奥様は「これまで友人たちの家を見せてもらって、いいところを採り入れたいと考えていました」と話す。加藤さんはその希望をしっかり受け止め、それにプラスして、敷地条件や日照条件を鑑みて、居心地が良くなるようにプロならではの提案をした。

そして、断熱や気密といった家の重要部分を丁寧に施工していったのが渡部さんが代表を務めるAg-工務店。

その見事な連携でK邸は完成した。

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ダイニングに腰を掛ける加藤淳一級建築士事務所の加藤淳さん(左)と株式会社Ag-工務店の渡部栄次さん。

「冬でもとても暖かいですし、明るさもいいですね。何もかもが良くてとても満足しています」とご主人。

大胆でインパクトが強いデザインではなく、さりげなく心地いい空間がつくられたK邸。

そんな奥ゆかしくバランスの良い住まいが家族を癒やし、これから何十年と家族の拠り所として在り続けるだろう。

 

K邸
新潟市中央区
延床面積 99.13㎡(30.17坪)
竣工年月 2018年9月
設計 加藤淳一級建築士事務所
施工 株式会社Ag-工務店

(写真・文/鈴木亮平

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鈴木 亮平

新潟市在住のフリーランスの編集者・ライター(屋号:Daily Lives)。1983年生まれ。企画・編集・取材・コピーライティング・撮影とコンテンツ制作に必要なスキルを幅広くカバー。紙・WEB問わずコンテンツ制作を行う。