HEAT20・G2グレードに、鉄壁の日射遮蔽。猛暑の時代を生き抜く家

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鈴木 亮平

新潟県聖籠町在住の編集者・ライター・カメラマン。1983年生まれ。企画・編集・取材・コピーライティング・撮影とコンテンツ制作に必要なスキルを幅広くカバー。累計800軒以上の住宅取材を行う。

住宅に高い気密高断熱性能が求められる今、自動車の燃費のように、その性能を具体的な数値で説明する住宅会社・工務店・設計事務所が増えています。

特に近年、高気密高断熱住宅に力を入れているビルダーの間で用いられている指標がHEAT20です。

HEAT20の基準はG1・G2の2つのグレードがあり、新潟県の大部分が含まれる地域区分5においては、G1でUA値0.48、G2でUA値0.34となっています。

(※UA値=外皮平均熱貫流率。断熱性能を示す数値で、小さいほど性能が高い)

世界規模で環境問題・エネルギー問題が深刻さを増す中、住宅の高断熱化はますます進んでいくと考えられますが、阿賀野市の工務店、株式会社宮﨑建築の代表宮﨑直也さんは、2011年より熱計算ソフトQpexを活用し、断熱性能をシミュレーションしながら、近年はHEAT20のG2グレードをクリアした住宅を手掛けています。

自身も大工職人として、付加断熱の技術(通常の断熱材の外側にさらに断熱材を充填する技術)を身に付けており、数値計算に設計、施工と多能工で家づくりを行っています。

宮﨑直也さんについて詳しくは下記インタビューを参照。

【インタビュー】断熱リフォームのスペシャリスト。宮﨑建築・宮﨑直也さん

新築よりも断熱リフォームを積極的に行う宮﨑さんですが、先月新潟市にて、UA値0.28の超高断熱住宅を完成させました。

今回は高橋良彰建築研究所の高橋良彰さんとのコラボです。

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宮﨑直也さん(左)と高橋良彰さん(右)

どんな住まいなのか見ていきましょう。

 

猛暑を乗り切るための、鉄壁の日射遮蔽

敷地は北東向きの角地で、南側と西側には隣家が立っています。

隣家が迫る西側は採光が期待できないため、極力窓を少なめに。また、熱損失を抑えるために北側の窓も最小限に抑えています。

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北面ファサード。向かって右が西側。

では、東側はどうかというと、こちらも大きな窓を設けるのではなく、比較的小さな窓をバランスよく配しています。

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ポーチがある東側。

窓には、樹脂サッシにトリプルガラスが組み合わせられた、YKKAP社のAPW430が使われています。

では最後に、南側はどうかというと、1階に1間幅(約180cm幅)の引き違い窓がありますが、南側全体を見ると窓の面積はそう大きくはありません。

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日が当たっている面が南側。

いかに窓の性能を上げても、しっかりと断熱材を充填した壁と同等の断熱性能を期待できるわけではありませんので、特に冬の日照時間が少ない新潟においては、快適性や省エネ性を考えると窓の大きさはなるべく抑えるのも一つの方法と言えます。

しかも、北面以外では、窓の面積が大きくなるほどに夏の日射が室内に採り込まれやすくなるため、いかに高性能な窓を使っていても夏は冷房効率が落ちてしまいます。

それゆえに、宮﨑さんは断熱性能と気密性能に加え、日射遮蔽もよく考えて設計をしています。

一般的には、南側からの光を採り入れることがよしとされますが、夏の日射は室温をぐんぐん上げる厄介な存在です。

そんな厳しい直達光を遮るのに軒が重要な役割を果たしますが、宮﨑さんが手掛ける住まいには、伝統的な日本家屋のようにしっかりと軒が出ています。

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軒で日差しの侵入を防げますし、軒先にすだれやシェードを取り付ければ、さらに徹底した日射遮蔽が可能となります。

 

壁厚210mm。分厚い断熱材で熱を逃がさない

ちなみにこちらのお住まいの壁の厚さは210mm。通常の120mmの断熱材の外側に90mmの断熱材を加える「付加断熱」をしています。

1枚でも暖かいダウンジャケットを2枚重ね着しているようなものですので、冬の暖房効率も夏の冷房効率もグッと高められます。

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壁が厚いため、窓回りには小物を置ける余裕も。

ちなみに冬はダイニングに隠された床下エアコン1台で、

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夏は2階の廊下に設けられたエアコン1台で全館を快適温度に保つことができます。

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宮崎さんの気密断熱性能へのこだわりは、郵便受けにも見ることができます。

気密性を徹底的に高める場合は、壁に穴を開けるタイプの郵便受けは避けられるものですが、今回の住まいでは壁に郵便受けが付いています。

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しかし、それを内側から見ると…。

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郵便受けにドアが付いており、さらにゴムパッキンにより密閉できるようになっています。

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一手間掛かっていますが、これにより気密性能を落とすことなく、家の中でスムーズに新聞や郵便物を受け取ることができます。

 

味のあるオークの床に、使いやすい造作家具

ここまで断熱性能について見てきましたが、中はどのような空間になっているのか見ていきましょう。

まず玄関ですが、土間は表情あふれる豆砂利洗い出し仕上げ。造作の下駄箱も味わいがあります。

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これは何十年経っても飽きることがないでしょう。

奥には収納力抜群のシューズクロークがあります。

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引き戸を開けた先はLDK。

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南側は掃き出し窓ですが、1間幅(約180cm)とコンパクト。しかし、その上の吹き抜けが光井戸の役割を果たしており、柔らかい光が降り注ぎます。

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吹き抜けと階段の2カ所で上下階がつながっているため、空気が循環しやすく、効率よく全館冷暖房を行うことができます。

キッチンは木の温もりがあふれる造作キッチン。その奥には樹脂サッシが付いていますが、サッシの向こうにはパントリーがあります。

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冬はパントリーに設置されたファンを運転することで冷気を取り入れれば、野菜などを保存しておくのに便利です。その際に室内に設けられた樹脂サッシが役立ちます。

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キッチンから洗面脱衣室側を見ると、大きな造作棚が目に入ります。

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リビングやダイニングからは見えにくい場所にある棚ですが、家族で1列ずつ使うというのも良さそうです。ランドセルや通勤用のバッグなど、普段使いするものをすっきりと片付けることができます。

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ごちゃごちゃしがちなWi-Fiルーターを置けるように、通信回線もこちらに設けられています。

その隣は洗面脱衣室で、洗面台は上半分が機能的な既製品、下半分は造作のハイブリッドタイプ。

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これによりカウンター部分を広めにとることができ、既製品と造作のいいとこ取りが実現されています。

反対の壁には、奥行きを抑えた棚が設けられており、洗剤や掃除用品などをすっきりと片付けられます。縦に長い部分はコードレス掃除機やクイックルワイパーがちょうどよく納まりそうです。

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プライバシーと全館冷暖房を両立

ここまで1階を見てきましたが、次に2階に上がってみましょう。

2階には寝室、子ども部屋、ウォークインクローゼット、書斎が配されています。

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子ども部屋は将来的に2室に分けられるようになっていますが、注目すべきは、建具の上に設けられたファンです。

エアコン1台で全館冷暖房をする仕組みのため、建具を閉めた時でも個室へ空気を循環させられるように、ファンが設けられています。

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ファン部分を閉じる小窓が付いているので、ファンを止めてプライバシーを保つことも可能。

寝室も同じようにファンが付いています。

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床は広々とくつろいで過ごせる畳敷き。

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収納を開けると、その奥には窓が付いており、吹き抜けとつながっていますが、この窓が空気の循環を促してくれます。

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そして、この2階で最もユニークな空間がこちらです。

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この吹き抜けに面した書斎は、家の中でもっとも明るい場所であり、直射日光を受けにくい快適な場所。

家族と程よい距離を保ちながら、仕事や趣味の時間を過ごすことができます。

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27.5坪というコンパクトさに、慎ましい外観デザイン。近くの神社と呼応するように、落ち着いた風景をつくり出しています。

脈々と続いてきた日本家屋のDNAを受け継ぎつつ、先進的な躯体性能で数十年先も愛着を持って住み続けられるように。

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冬の寒さはもちろんのこと、夏の厳しい太陽光からも守ってくれる頼れる住まい。そこには、厳しい外部環境から家族を守るという、家に求められる本質がギュッと詰まっているように思えます。

 

設計/株式会社宮﨑建築×高橋良彰建築研究所
施工/株式会社宮﨑建築

写真・文/Daily Lives Niigata 鈴木亮平

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鈴木 亮平

新潟県聖籠町在住の編集者・ライター・カメラマン。1983年生まれ。企画・編集・取材・コピーライティング・撮影とコンテンツ制作に必要なスキルを幅広くカバー。累計800軒以上の住宅取材を行う。