13歳の記念をワクワクするものに。カフェのように心地いい、新しい学生服店の形

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鈴木 亮平

新潟市在住のフリーランスの編集者・ライター(屋号:Daily Lives)。1983年生まれ。企画・編集・取材・コピーライティング・撮影とコンテンツ制作に必要なスキルを幅広くカバー。紙・WEB問わずコンテンツ制作を行う。

フェニックス大橋近くにオープンした学生服専門店

長岡市宮内からフェニックス大橋へと向かう国道404号線沿いにオープンした三角屋根の店。杉板張りの外壁に大きなガラス窓が連なる外観が特徴的な佇まいは、カフェやヘアサロンを彷彿とさせる。しかし、意外にも学生服の専門店だという。

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ここスクールユニフォームHaRuは、三条市旭町に本社を構える衣料品卸、株式会社坂井達三商店が新しく始めた小売店。その外観や内部空間は従来の街の学生服店のイメージとは大きく異なっている。

「数年前から長岡市内の学校さんから学生服の採用が増えてきたため、小売店を出すことにしたんです。制服選びは13歳になる大切な記念ですから、親御さんにとってもお子さんにとっても、その思い出になるような店にしたいと思いました」と話すのは代表の坂井秀三さん。

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「僕は20代の頃に富士ヨット学生服で5年間修業をしていたんです。そこで一緒に働いた友人たちが、今も子どもたちのために、安心安全で快適に学校生活を送れるようにと、新しい製品を開発して一生懸命作っています。それを子どもたちや親御さんたちに伝えていくことが自分の役割ではないかと思っており、それも小売店を始めようと思った理由ですね」。

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学生服は値段で判断されることが多く、より安いものが求められる傾向があるという。「しかし、価格帯ごとに異なる学生服の価値があるので、ぜひそれを知って頂いた上で選んでもらえたら」と坂井さんは話す。そこには、学生服メーカーの製造や営業の経験を持つ坂井さんならではの想いがある。

 

深い軒に全開口窓。気候のいい時期は軒下でコーヒーを

店舗の設計を行ったイイヅカカズキ建築事務所の飯塚一樹さんとは、かつて燕三条青年会議所で知り合い、現在はお子さんの中学校のPTAで一緒に活動をしているという。

学生服を必要とするのは小学校6年生や中学3年生。一人で買いに来るのではなく、お母さんと一緒に買いに来ることが多い。そのため坂井さんは、同じ年齢層の子どもを持つ母である奥様やスタッフの女性が好むような店にしたいと考えた。

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「ゆくゆくはスタッフも増やしていきたいですから、女性が働きたくなるような店にもしたいと思いました」と坂井さん。そのような希望と、新しい店で実現したいことを飯塚さんに伝え、具体的な設計やデザインは任せることにしたという。

「坂井さんからお話を伺う中で『13歳の記念となる学生服選びを思い出になるようにしたい』というところが特に印象的で、それを実現できる建物にしたいと思いました。そして、建築で学生服店に新しい価値を加えられたらと考えて設計にあたりました。もちろん使いやすいことも大事ですので、学生服のディスプレイやレイアウトの仕方などは、たくさんの学生服の店舗事例を参考にしています」と飯塚さん。

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切妻屋根+立体的なファサードが特徴的だが、飯塚さんはそのデザインの理由として「軒を深く出したいから」と話す。軒を出すことで太陽光を遮ったり、逆に取り入れたりという操作が可能となり、特に夏の強い日差しが屋内に入るのを抑えることができる。そこから表情をつくるために、ファサードの白い壁は内側から外側へと広がるような表現がなされた。

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入口がある東側には全開口サッシが使われているが、気候のいい時期はフルオープンにして内と外を一体に使うことを意図している。

「軒が出ているので雨が降っていても窓を開けて風を通すことができます。最初にそういった機能を考えて、その後に意匠を考えるようにしています」と飯塚さん。

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「ちなみにこの建物の顔は斜めから見たところだと思ったんです。それで大通り側だけでなく、入口がある東側もガラス窓を連続させています」と続けた。

また、坂井さんと飯塚さんは、共にアウトドア好き。昼過ぎには日陰になる軒下に椅子を置いて過ごしたいという希望も盛り込まれた。

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「今はまだ暑いから窓を締めていますけど、もう少し涼しくなったら軒下でコーヒーを飲みながら仕事をしたいですね」と坂井さんはほほ笑んだ。

 

可動式の什器が連なる、フレキシブルな大空間

入口は殴り加工がされた重厚な木製ドア。ドアハンドルには三条の鍛冶職人・内山立哉さん(火造りのうちやま)が手掛けた味わいのある鉄製ハンドルが取り付けられる予定だ。(※取材を行った9月上旬は未設置)

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風除室を抜けて店内に入ると、そこに広がるのは高天井の開放的なワンフロア。床は工場などで使われる防塵塗装仕上げで、その白い床が光を反射し空間全体を明るく照らす。

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天井は木毛セメント板(細長く削り出した木材をセメントペーストで圧縮成型した建材)で、こちらも白で塗装。灰色の木毛セメント板のゴツゴツとした印象が和らぎ、空間になじんでいる。

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柱や梁が縦横に伸びているが、空間を隔てる耐力壁は少なめ。その代わり、要所要所にステンレス製の細いブレース(筋交い)を取り付けており、空間を細かく分断することなく、耐震等級3という高い耐震性能を軽やかに実現した。

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窓側には打ち合わせ用のテーブルが2つ置かれているが、こちらのスチール脚には、燕市の金属加工の技術が使われている。天板は針葉樹スプルースの三層パネルで、サンドイッチのような断面が特徴だ。

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実は店内の什器や試着室、棚板などもこの三層パネルで作られており、それによりすっきりとした統一感のある空間ができ上がっている。什器や試着室も飯塚さんによる設計で、キャスターが付いているため自由にレイアウトを変えることができる。

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什器は上のパイプに学生服やワイシャツを吊り、下の棚には生地見本やズボンを置けるように設計。女性の力でも動かしやすいように、側面には手を掛けるスリットをあけるなど、ミニマルなデザインの中に過不足なく機能が盛り込まれた。

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3つ並ぶ試着室は山が連なっているようにも見えるデザインで、それぞれの試着室の天井には穴があけられている。この穴から光が注ぐため、試着室ごとの照明は不要だ。

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「棚を可動式にしてもらったのは、学生服店という店柄、時期によって並べておく商品の種類や数が変わるからです。それに、学生服を買って頂いて終わりではなく、ここでワークショップやイベントなどを開いて、学生服を買う用事がなくても足を運んでもらえるようにしたいと考えています。そのためにも、棚は固定されていない方が使いやすいですからね」と坂井さん。

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什器や試着室を奥の事務スペースに寄せれば、人がたくさん集まるイベントも開催しやすい。さらに、全開口サッシを開放することで、外の駐車スペースまでを一体に使うことができる。

 

入れ子のようなキッズスペース&トイレ

建物コーナー部分には、什器に使われているスプルースとは風合いが異なる、ラワン合板で仕上げられた入れ子のような空間がある。

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こちらはキッズスペースで、制服を選びに来た時に小さなお子さんが退屈しないようにと設けられた場所だ。三角屋根の家のシルエットをかたどった開口部と小屋のような籠もり感は、大人も引き寄せられてしまいそうになる。

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床は柔らかい魚沼杉の浮造り仕上げなので、小さな子どもがゴロゴロと寝転がりながら絵本を読んだり、DVDを見たりして過ごすのにちょうどいい。試着室のそばにあるため、フィッティングの間も目が届くので安心だ。

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このキッズスペースと対になるように、反対側にもラワン合板で仕上げられた空間があるが、こちらはトイレ。

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洗面台は三層パネルで作られており、トイレットペーパーホルダーは入口ドアのハンドルと同じ鍛冶職人による鉄製品が取り付けらる予定だ。(※取材を行った9月上旬は未設置)

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建物コーナーに給湯室やバックヤードを集約

入口から入って右側は事務スペースになっているが、正面に置かれた山型のレジカウンターは什器と同様にキャスター付きで簡単に動かすことができる。

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ちなみに左右非対称のシルエットは、店の外観と同じデザイン。そんな遊び心も垣間見える。

レジカウンターの隣は電話やFAXを置くスペース。背面の壁はOSB(配向性トランスボード、構造用合板の一種)が張られているが、白く塗装されているためラフな印象が和らげられ全体のトーンと調和している。

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カウンターの後ろには事務作業用のデスクがあり、コーナーの目立たない場所には給湯室が。キッチンは、三層パネルとステンレスのワークトップを組み合わせた、すっきりとしたデザインに仕上げられている。

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給湯室の上はちょっとした荷物を置けるロフトスペース。ハシゴで上がれるが、壁に掛けられた木製のハシゴがシンプルな空間のアクセントになっている。

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事務スペースの隣の空間は、商品の在庫などをストックしておくバックヤードで、こちらの奥に見えるドアがスタッフ用の通用口。

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仕切りの少ないワンルームの店内だが、ちょっとした死角を作ったり天井高を変えたりすることで、空間にメリハリを生み出している。

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地財地建。燕三条の職人の技を随所に

すっきりと美しいディテールも飯塚さんのこだわりの一つだ。窓回りなどの、枠が目立って野暮ったくなりがちな部分をすっきりと納め、余計な線が現れないように気を使っている。それによりシンプルで印象的な空間が完成した。

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素材においては、長く愛着の持てるものや、質感のいいものを厳選。内装の壁の大部分はモイスと呼ばれる天然素材を使用しており、グレーがかった多孔質素材のざらざらとした感触がいい。

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外壁には、経年変化をしながら味わいを増していく魚沼杉を採用。メンテナンスが不要で、劣化が進んだ場合も、新建材と異なり100年先も同じものを入手できる。

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「施工は燕の丸山組さん、ドアハンドルやペーパーホルダー、トイレの鍵、フックには火造りのうちやまさん、テーブルの脚は燕の鉄加工、看板は三条の印刷会社プログラフさん、植栽は三条市保内の諸橋農園さん、軒下にはスノーピークのイス…。僕は『地財地建』と呼んでいるんですが、この店づくりにおいて、職人の町である燕三条の人財の力をふんだんに採り入れています」と飯塚さん。

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「学生服メーカーの方も先日見にいらっしゃって、『こんな学生服店は見たことがない!』と驚かれていました。カフェのような居心地のいい空間にしてもらったので、お母さん方や先生方に気軽に立ち寄って頂き、ここでくつろぎながらコミュニケーションを取れたらと考えています。お客様とお友達のような関係が築けたら嬉しいですね」(坂井さん)。

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先生と保護者のそれぞれのニーズや考え方を知り、橋渡しをするような存在にもなりたいという。また、学生服を買ってもらった後も、丈出しを無料サービスで行うなど、アフターフォローにも力を入れていく予定だ。

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入学までに揃えなければいけないものの一つである学生服。しかし、それは子どもにとってはもちろん、家族にとっても成長の節目であり記念でもある。

「そんな学生服選びをワクワクするものにしたい」。同世代の子どもを持つ坂井さんの強い想いを受け止め、それを建築として具現化した飯塚さん。

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スクールユニフォームHaRuは、2020年9月25日に開店。フレキシブルな空間はこれまでの学生服店の概念を超えてどのような場になり、地域に根付いていくのか?

建築がもたらす力を強く感じさせる学生服店がオープンした。

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スクールユニフォームHaRu
長岡市西宮内2-6
0258-77-6966

スクールユニフォームHaRuインスタグラム

設計/株式会社イイヅカカズキ建築事務所

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【インタビュー】燕三条発・地財地建の家づくり。イイヅカカズキ建築事務所・飯塚一樹さん

写真・文/Daily Lives Niigata 鈴木亮平

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新潟市在住のフリーランスの編集者・ライター(屋号:Daily Lives)。1983年生まれ。企画・編集・取材・コピーライティング・撮影とコンテンツ制作に必要なスキルを幅広くカバー。紙・WEB問わずコンテンツ制作を行う。