#031 窓から五頭連峰を見渡す、シンプル30坪・総2階の家

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鈴木 亮平

新潟市在住の編集者・ライター(屋号:Daily Lives)。1983年生まれ。企画・編集・取材・コピーライティング・撮影とコンテンツ制作に必要なスキルを幅広くカバー。累計500軒以上の住宅取材を行う。

新潟市北区の高台に立つK邸。曲がりくねった道が迷路のように広がる集落内にあり、家の周辺は畑と住宅が入り混じっている。

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外観は左右非対称の三角屋根が載ったシンプルな総2階。太陽光発電パネルを搭載するために、南側の屋根を大きめに取る必要があったことから、自ずとこの屋根形状が導き出された。

通りに面したファサードは西側で、強い西日が家の中に差し込まないよう、窓は1つだけにしている。

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約42坪の敷地手前は3台分の駐車スペースで、その奥は延床面積30坪の建物。分譲地でよく見られる無駄のないレイアウトだが、敷地の利点を深く読み取った設計の巧みさは、入口のレイアウトから始まり、内部の隅々にまで見てとることができる。

 

木をふんだんに使った家づくりに一目惚れ

Kさん夫婦は、以前は古い賃貸住宅に暮らしていた。築60年の家は冬とても寒く、夏は暑さに苦しめられ、結露やカビにも悩まされていたという。

「子どもが生まれて、家を建てたいと思うようになりました。そんな時期に、加藤さんのことを知り、木を使った雰囲気のいい家の写真に一目惚れしました」(奥様)。

WEBサイトには加藤淳さんが大事にしている設計の考え方が分かりやすくまとめられており、その中の、「洗濯物が乾きやすいように西日を活かす」という具体的な事例も印象的だったという。

「全ての設計に理由があることを感じましたし、自分たちの想像を超えてつくってくださるんだろうなあ、と思いました」と奥様は話す。

 

高台の土地を買い、2階リビングの家を計画

土地はご主人の実家がある北区で探していたところ、現在の土地に巡り合い、既に相談を始めていた加藤さんに見てもらうことにした。

「南側に開いた高台の土地でしたので、2階リビングにすることで日当たりも眺望もいい家になると思いました」と加藤さん。

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周辺の相場よりも安く売られていたことも決め手となり購入。そして、正式に加藤さんに依頼してプランニングを進めていった。

「私たち夫婦と息子の3人家族でしたが、将来的に主人の両親と同居するかどうか?子どもは2人目をどうするか?など家族構成が定まらない状態だったんです」(奥様)。

そんな理由から、1階はつくり込まずにフレキシブルに使えるようにし、家族が長い時間を過ごす2階は開放的で気持ちいい空間をつくり上げることにした。

 

グレーの塗り壁は、ご主人が自ら施工

K邸は駐車スペース脇のアプローチを進み、サイドに設けられた玄関ドアから出入りできるように設計されている。これにより、通りから玄関内が丸見えになることがなく、外観デザインもすっきりと整った。

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外壁は白いガルバリウム鋼板がメインで、駐車スペース側とポーチ周りの1階部分は塗り壁仕上げ。

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ご主人は左官職人で、墨を混ぜた表情ある塗り壁は自身で塗り上げたという。アプローチのコンクリート土間や、ポーチの大谷石もご主人が施工を行った。

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木製ドアを開くと、そこは豆砂利洗い出し仕上げの玄関。

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入って右側はシューズクロークで、正面には個室が見える。

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1階には中央のフリースペースを含めて合計3室が設けられているが、取り外しできる板材の間仕切り壁で仕切られているので、全てを取り払ってワンルームとして活用することも可能。

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床はパインの無垢材で、壁や天井は和紙クロス、建具はシナ合板…と、優しい素材が包み込んでくれる。

 

五頭連峰を眺める明るいリビング

階段を上がった先にある2階がK邸のメインの空間。

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1階と比べて耐力壁や柱の量を少なくできるため、ゆったりとした20畳程のLDKは見通しがよく開放的だ。

東端のキッチンから、小上がり、リビングが続いているが、そのワンルームの中にはさまざまな居場所が設けられており、家族3人が思い思いにくつろげる。

キッチンにはコーナー窓が設けられており、そこからは爽やかな光が注ぐ。

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毎日使う鍋や調味料などは正面の棚に、その下のフックにはハサミやピーラー、まな板を吊り下げるなど、使いやすさもよく考えられている。

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キッチンの背面は一面の造作棚になっており、食器や電子レンジ、保存容器などを格納。

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ラップやアルミホイルなどの雑多になりがちなものもたっぷり収納されているが、リビング側からは一切見えないようにつくられている。

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キッチンの左側には引き戸があり、その中には冷蔵庫が納められている。戸に有孔ボードを使っているのは、内部に熱がこもらないようにするためだという。

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その手前に設けられた造作棚はデスクとしても活用できるコーナー。

「私は以前、雑貨店を営んでいたんですが、そこで出産祝い用のギフトを作っていました。ぬいぐるみ付きのオムツケーキやスタイなどを作っていて、ここはミシンで作業ができるように作って頂きました」と奥様。

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その造作棚の下にはエアコンが設けられているが、こちらは冬の暖房用。あえてエアコンを低い位置に設けることで、足元から室内をじんわりと暖めることができる。

「冬はこれ1台で2階とロフトがよく暖まり快適ですね。夏場はロフトにあるエアコンを使っていますが、冷気が降りてきて涼しいですよ」(奥様)。

その向かい側の小上がりは、ダイニングテーブルと合わせてベンチとしても使えるように計画されたものだが、奥様がDIYで畳をつくってからは、柔らかい畳の上に座って、ちゃぶ台で食事をすることが多いのだとか。

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小上がりの窓からは遠くに連なる五頭連峰までを見渡すことができるが、この窓は、隣家をかわすように計画されている。

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夫婦がつくった家具やカップが溶け込む空間

2階の一角には味わいのあるテーブルと椅子が置かれているが、こちらはご主人が数年前につくったもの。

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杉材でつくられており、使い込んでいくうちに塗装がはがれ、古道具のような雰囲気に仕上がった。

テーブルの上にあるコーヒーカップは、かつて焼き物をやっていたという奥様の作品。

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夫婦二人とも、ものをつくり出す仕事をしてきたため、必要なものは自分たちでつくるというDIY精神が自然と備わっている。

リビング側へ行くと、天井高が一気に上がる。

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左の引き違い窓、奥の洗面脱衣室、右の高窓といろいろな場所から光が入り込み、それが白い壁や天井に反射して拡散をするため、日中は照明を一切つけなくても心地よい光に包まれてリラックスできる。

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天井は1階と同様に和紙クロスを使っているが、壁はご主人がコテで仕上げた塗り壁だ。

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火山噴出物由来で消臭調湿効果がある薩摩中霧島壁を使っており、愛犬のトイプードルと一緒に暮らしていてもにおいが気にならない。

また、テレビの下の棚に設けられたホオノキの一枚板や、テレビ後ろにアクセントとして張られた板材は、林業を営む奥様の親戚から譲り受けたものを活用。建材を自前で用意したことで、一層愛着が深まる空間が完成した。

 

ゆとりあるロフトは寝室に

リビングで上を見れば、そこには階段で楽に上がれるロフトがある。

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階段途中の便利な動線上にはウォークインクローゼット、その下部は愛犬のスペースにするなど、空間を無駄なく活用している点も見逃せない。

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ロフトは12.5畳とゆったりした広さで、寝室として活用している。

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「冬は暖気が上がっていくので、すごく暖かいんですよ」とご主人。

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また、リビングの隣には洗面脱衣室と浴室があり、3畳の洗面脱衣室では西日を活用して洗濯物を乾かすことができる。

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シンプルなデザインの洗面台は造作で、サイドに設けられた使い勝手のいい棚には、こまごまとした物がたっぷりと収納されている。

 

住み心地のいい家を合理的に叶える

Kさんご夫婦は、「潤沢な予算があったわけではないので、はじめは不安を持ちながら加藤さんに相談に行きました」と話す。

加藤さんは耐震等級3をクリアするなど、住宅の基本となる性能をしっかりと確保した上で、建物形状を総2階にして合理化したり、1階部分はつくり込まないようにしたりとコストバランスを考えながら設計。

ペットと暮らすことを踏まえ、床材は杉や桐よりも堅さがありながらコストを抑えられるパインを選ぶなど、Kさん夫婦のライフスタイルに寄り添って丁寧に最適解を導き出していった。

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「住み心地は想像していた以上に快適ですね。以前住んでいた賃貸は暗い家で、気持ちまで暗くなることがありましたが、今は朝日を浴びて目覚めたり、明るい気持ちで暮らせるようになりました。家で過ごす時間が好きになりましたし、何より窓からの景色は加藤さんからのプレゼントのように感じています」と奥様。

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敷地が置かれた環境や家族の価値観を深く読み取った上で、プロならではの独自の提案や感性を盛り込み、コストバランスをとって具現化したK邸。

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自然素材がふんだんに使われ、全体の調和が取れた空間は大らかに家族を包み込んでいる。

 

K邸
新潟市北区
延床面積100.20㎡(30.31坪)、1階50.10㎡(15.15坪)、2階50.10㎡(15.15坪)、ロフト20.70㎡(6.26坪)
竣工年月 2018年4月
設計 加藤淳一級建築士事務所
施工 株式会社Ag-工務店

(写真・文/Daily Lives Niigata 鈴木亮平

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鈴木 亮平

新潟市在住の編集者・ライター(屋号:Daily Lives)。1983年生まれ。企画・編集・取材・コピーライティング・撮影とコンテンツ制作に必要なスキルを幅広くカバー。累計500軒以上の住宅取材を行う。