【徹底解剖】加藤淳一級建築士事務所×Ag-工務店の家づくり(後編)

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鈴木 亮平

新潟市在住の編集者・ライター(屋号:Daily Lives)。1983年生まれ。企画・編集・取材・コピーライティング・撮影とコンテンツ制作に必要なスキルを幅広くカバー。累計500軒以上の住宅取材を行う。

※本記事は【徹底解剖】加藤淳一級建築士事務所×Ag-工務店の家づくり(前編)の続きです。

【徹底解剖】加藤淳一級建築士事務所×Ag-工務店の家づくり(前編)

前編では、①外観、②玄関・ポーチ、③キッチンを解説しましたが、後編では、④窓、⑤物干し、⑥書斎、⑦造作家具について見ていきます。

ではさっそく「窓」に行ってみましょう!

 

④窓

4-1 神秘の高窓

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高窓は加藤さんの象徴的なデザインですよね。神秘的な光がこぼれ落ちてくるのが印象的です。

加藤さん:日照時間の少ない冬の新潟で、いかに光を採り込むかを考えて高窓を設けています。私は埼玉県出身ですが、関東にいたら高窓はあまりつくっていなかったかもしれないですね。南側に高窓を設ける時は、大きくすると光が入り過ぎてしまいますので、ちょっと絞るように気を付けています。上の写真がそうですね。北側の場合は大きめに設計することもあります。

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渡部さん:高窓を設置する時は足場を組んで行います。それ自体はそれほど難しいことではありませんが、高天井にする時はメンテナンスをしなくて済むように仕上げ方に注意をします。お施主さんが自分でメンテナンスをするのが難しい場所ですから。

白い壁にできる柔らかい陰影はフェルメールの絵のようです。勾配天井との組み合わせもポイントと言えそうですね。

次に「ちょいと景色を拝借」を見てみましょう。

 

4-2 ちょいと景色を拝借

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上の写真は窓の外の爽やかな木々が印象的ですが、実はお隣さんの庭なんですよね。

加藤さん:設計に入る前に敷地の環境調査を入念にしています。どこにいい景色があるかを見つけることも大事ですが、隣家の窓の配置もしっかりチェックして窓の前に隣家の窓が来ないように注意しています。

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向かいにある公園の木々や、遠くに見える山など、窓から見える景色が緻密に考えられているのが分かります。

次に「内とつながる窓」を見てみましょう。

 

4-3 内とつながる窓

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窓は外と内の間にあるのが一般的ですが、上の写真のように、内と内でつながる窓もよくつくられています。これはどんな意図があるのでしょうか?

加藤さん:上の写真のようにリビングと2階の個室の間に窓を設けることで、家族のつながりをつくり出すことができます。窓の開け閉めでON/OFFのスイッチを切り替えるようなこともできますね。これが書斎であれば仕事に集中する時にパタッと閉めるとかですね。逆に開けておけば、家族が「いつでも話しかけていいんだな」というのが分かります。あとは空気を循環させるのにも役立ちますね。

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上の写真は2階に書斎があるケースですが、この窓を開閉することで仕事のON/OFFの切り替えができそうですね。

次に「窓辺に居場所を」を見てみましょう。

 

4-4 窓辺に居場所を

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窓辺に設けられた腰を掛けるスペース。このようなつくりの窓は、掃き出し窓にはない居心地のいい空間になりますね。

加藤さん:建築家の伊礼智さんが「開口部近傍に心地よさは宿る」と話されていますが、私も窓回りは可能性を秘めた場所だと思っています。窓辺をどう生活に取り込んでいくか?をよく考えていますね。お施主さんに共感をいただければ、上の写真のような造作をすることが多いです。空間を立体的に使えるようになりますし、収納も兼ねているんですよ。

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渡部さん:「掃き出し窓」は掃除をする時にほうきを使ってゴミを掃き出すのに便利な窓ですが、今は「掃き出す」ということもされなくなっています。掃き出し窓にこだわる必要はもうないと思いますね。

大きい窓=掃き出し窓という固定概念がありますが、掃き出し窓にしないことで、窓辺の可能性を一層引き出せる可能性があるということですね。

次に「窓を天井に合わせる」に行きましょう。

 

4-5 窓を天井に合わせる

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窓の位置を床ではなく天井のラインに合わせるデザイン。これにはどんな意図があるのでしょうか?

加藤さん:部屋に入った時に垂れ壁がない方が視線がスッと抜けていきますので、そのような見せ方をしたい場合に天井のラインにそろえています。逆に籠もり感をつくりたい場合は、しっかりと垂れ壁を設けますね。目的によって変えています。

渡部さん:施工をする上では床に合わせるよりも難易度は高いです。最終的にどうなるか?というのをしっかりイメージして施工をしないと、その後の納まりに苦労することになります。

窓を天井に合わせるのは、ラインがそろうことの美しさだけでなく、視線の抜けも考えられているんですね。

次に「心地よきコーナー窓」を見てみましょう。

 

4-6 心地よきコーナー窓

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文字通り空間のコーナーに設けられた窓。通常の窓よりも室内が明るくなるのが分かります。

加藤さん:コーナーは視線が向かいやすい場所ですから、その先に視線が抜けていくようにコーナー窓を使うことがありますね。それにより、開放感が生まれ、より外を感じることができます。

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窓辺に居ると半分屋外にいるようにも感じられます。季節感を味わうのにもいい空間ですね。

では次に5つめのカテゴリー「物干し」に行きましょう。

※取材の途中ですが、渡部さんは次の現場へと向かうため、ここからしばらく加藤さんお一人にお話を伺います。

 

⑤物干し

5-1 外なのに中みたいな物干し

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木格子に囲まれた物干しスペース。脱衣所の窓の外に設けられたユニークな空間です。どのようにしてこの物干しが生まれたのでしょうか?

加藤さん:光と風は通すけど、雨は当たらない。そんな外干し空間ができたらいいなと思い、このようなスペースを考えました。フレキシブルに干す位置が変えられるところもポイントですね。柱を使わずに格子で成り立たせる構造になっており、施工コストをうまく抑えています。

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格子が目隠しになり、洗濯物が丸見えにならないという点もよく考えられていますね。

次は逆に「中なのに外みたいな物干し」を見てみましょう。

 

5-2 中なのに外みたいな物干し

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2階に設けられた物干しスペースですが、床はベランダなどで使われるFRP(Fiber Reinforced Plastics/繊維強化プラスチック)で仕上げられています。

加藤さん:お施主さんがヒアリングの時「普段から窓を開けたまま出掛けることが多いので、雨が入ってきてもいいようにしたい」と話されていて、このような外のようなつくりにしました。ここから室内に光を採り入れたかったので、壁の下地材は白く塗装して、建具も透明なポリカーボネートを使っています。

ちなみに上の写真の物干しスペースは、下の写真の右上に見える窓の場所です。外側には布団干し用のバーも備えられており、天気のいい日には布団干しもスムーズに行える設計なんですね。

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次に「広々脱衣室」を見てみましょう。

 

5-3 広々脱衣室

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実にゆったりとした洗面脱衣室ですね。2本の物干しにサッと洗濯物を干し、たたんで棚に収納するところまでがここで完結できます。

加藤さん:実はうちの脱衣室が狭くて使いにくいんです…。その反省があり、お客さんの家は使いやすい広さにしたいなと思っていて、広めにつくることが多いですね。ただ、脱衣室にばかり面積を取れないので、なるべく立体的に使えるように考えています。あとは、キッチンと同様にあまり既製品で埋め尽くしたくないので、物干しのバーも木製のものを使ったり、時には竹を使ったり、居心地がよくなるようにしています。

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毎日の洗濯と物干し。それらをスマートにできるかどうかで生活の質は変わってくるものだと思います。家においては脇役の空間ですが大事にしたいところですよね。

次に「書斎」にいってみましょう。

 

⑥書斎

6-1 クローズド型書斎

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完全個室タイプで、最も集中力を高められる書斎です。

加藤さん:リモートワークが多い人にはこのクローズド型をお薦めしています。棚なども使いやすいように造り込んでいきます。あとは、座った時にふと外を眺められるように、窓の高さは意識して設計していますね。

座りながらいろいろなものに手が届きそうな、コックピットのような書斎ですね。

次は「セミクローズド型書斎」です。

 

6-2 セミクローズド型書斎

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先程のクローズド型とは異なり、他の空間とつながっている半個室タイプの書斎です。

加藤さん:上の写真は長時間ここで仕事をするというよりは、趣味を楽しむための場所というイメージです。ここで趣味に没頭しながらも、リビングにいる家族と会話をすることができます。

下の写真は寝室に併設した書斎ですね。先に寝ている相方に迷惑を掛けずに、持ち帰った仕事をするイメージです。

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次の写真はLDKに隣接した書斎で、お子さんのために設けた空間です。文机のように使うタイプですね。ロールスクリーンでLDKと区切ることもできます。

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共通しているキーワードは「家族とのつながり」です。書斎にいながらも一人になるのではなく、家族とつながりを持つことができます。

セミクローズド型は個室化されていないため、書斎以外の使い方も柔軟にできそうですね。

書斎シリーズ、最後は「オープン型書斎」を見てみましょう。

 

6-3 オープン型書斎

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こちらはダイニングのすぐ隣に設けられた書斎で、完全にLDKと一体の空間です。「家族みんなの書斎」というイメージですね。

加藤さん:そうですね。これはお施主さんの希望を実現したもので、家族全員で使うための書斎です。他の書斎と同様に棚をしっかり造り込んでいますので、本や道具などを取り出しやすい位置に収納できるようになっています。

勉強・仕事と日常生活が重なり合うようなこの書斎では、遊びながら学習(インプット)と仕事(アウトプット)の両方ができそうです。

それでは最後のカテゴリー「造作家具」に行きましょう。

 

⑦造作家具

7-1 洗面台

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既製品をそのまま置くのではなく、オーダーメイドで造作するケースが多いですね。

加藤さん:お施主さんがそれほどこだわらないという場合は既製品と組み合わせることもありますが、洗面台はできるだけつくらせていただいてます。洗面ボウルは、丈夫でコスト的なメリットも高い実験用シンクを使うことが多いです。広いので使いやすいですしね。ご希望があれば上の写真のようにモールテックスで仕上げることもできます。下の写真は、床と鏡の枠にチークを使っていますが、お施主さんがレトロな洗面台が好みということで、落ち着いた雰囲気に仕上げました。

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家全体のトーンと調和した造作洗面台。空間にきれいに納められるのも造作ならではですね。

次に「棚・収納」を見てみましょう。

 

7-2 棚・収納

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物を置いたり飾ったりするのに重宝する棚・収納。造作しておくことで置き家具の数を抑え空間を広く使えるメリットがあります。

加藤さん:置き家具と違って造作棚は地震で倒れることもないですし、使い方の自由度が高いのもメリットですね。可動棚にして棚板の数や場所を自由に変えられるようにすることも多いです。

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下の写真は服の量を聞いて棚の大きさを決めていきましたね。どのような使い方をするか、打ち合わせをしながら設計をしています。

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壁一面を余すことなく収納棚にできるのも造作ならではと言えそうです。

次に「テレビ台」にいきましょう。

 

7-3 テレビ台

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空間と一体につくられる造作テレビ台。インテリアが整うことや、掃除のしやすさなど、さまざまなメリットがあります。

加藤さん:いろいろなテレビ台を造作してきましたが、テレビを壁掛けにする時、配線を通す空洞部分が結露しないように外壁面をふかす必要があります。上の写真は壁全面をふかしたケースですね。一方、下の写真は配線を通す部分を手前に出して造作したテレビ台ですが、こちらはコストを抑えられる方法です。

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壁掛け式が好まれる今、テレビ台の在り方も変わりつつあるようですね。もちろん置き型でも空間に合わせたさまざまな造作テレビ台をオーダーメイドで造られています。

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最後に「子ども部屋、その他」を見ていきましょう。

 

7-4 子ども部屋、その他

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空間を構成する意匠でもあり機能でもある造作家具。実にいろいろなところに見られますよね。

加藤さん:素材を見て造作を考えることも多くて、上の写真は床のチーク材に合わせて造作棚の上にもチークのフローリングを張っています。下の写真は同じリビング内ですが、天井の仕上げの一部にチークのパーケットフローリングを張っていますね。提案をしてお施主さんの意向を聞きながら詰めていきます。

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下の写真は子ども部屋ですが、小さな子ども部屋こそ機能的な造作家具が生きる場所でもあります。

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ロフト型の収納は使いやすく遊び心もありますし、有効ボードを使うことで壁面も有効活用できています。

 

以上で7カテゴリーすべての解説が完了となります。

最後に今後の展開について、加藤さん、渡部さんに伺いました。

加藤さん:今後は外構・植栽に一層力を入れていきたいと思っています。土地に家をポンと建てただけでは魅力的な住環境にはなりませんし、周辺環境とも調和しにくいからです。以前と比べて面積が小さい土地に家を建てられることが増えていますが、木は1本でも植えたいですね。植栽があることで彩りを近隣の方におすそ分けできますし、コミュニケーションのきっかけにもなります。それに、緑を見ることがストレス解消につながるという科学的なデータもあります。コロナ禍で家にいる時間が増えた人が多いと思いますが、緑を見ながらリラックスできる住まいをつくりたいと思っています。

渡部さん:今「Agクラフト」という規格住宅を考えています。70%くらいの完成度で引き渡しをして、残りはお施主さんが自分で仕上げるという家づくりです。ターゲットはすごくニッチなんですが、自分で施工ができる職人さんやDIYが好きな人を考えています。今年中にスタートをしようと思っていて、今プランなどを詰めているところですね。

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これまで積み上げてきた家づくりにプラスして、さらなる進化を目指す加藤淳さんと渡部栄次さん。

これからどのような住まいをつくり上げていくのか、引き続き注目をしていきたいですね。

後編(本記事)から読まれた方は、ぜひ前編も併せてご覧ください。

 

また、今月10/23()・24()・25(月)に新発田市城北町にて予約制完成見学会を開催予定とのことです。

この徹底解剖記事を読んでから実際に建てられた家を見ると、一層理解が深まるのではないでしょうか?

見学会詳細は下の画像をタッチしてご覧ください。

 

取材協力/加藤淳一級建築士事務所株式会社Ag-工務店

写真・文/Daily Lives Niigata 鈴木亮平

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鈴木 亮平

新潟市在住の編集者・ライター(屋号:Daily Lives)。1983年生まれ。企画・編集・取材・コピーライティング・撮影とコンテンツ制作に必要なスキルを幅広くカバー。累計500軒以上の住宅取材を行う。