鈴木 亮平
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2017年6月に沼垂テラス商店街(新潟市中央区沼垂東)で創業した無垢フローリング専門店・アンドウッド。2021年に本馬越へ移転し、2024年に創業8年目を迎えました。

2021年6月に「創業5年目、新たなショールームでスタートしたアンドウッドのすべて」というタイトルで、代表・遠藤大樹(えんどうひろき)さんの取り組みをインタビュー形式で紹介しました。
2022年12月に「創業6年目、無垢フローリング専門店・アンドウッドが薦める床材とは」というタイトルで、資材価格高騰&円安が進んだ2022年を総括。
2024年1月に「創業7年目、無垢フローリング専門店・アンドウッド。2023年の振り返りと今後の展望」というタイトルで、市場環境や最新の床材などを解説。
そして本記事(2025年1月に取材)では、2024年のアンドウッドの事業を振り返ります。
この1年は、どんなトピックスがあったのでしょうか?さっそく聞いてみましょう。

看板商品の一つであるチーク材をリニューアル
鈴木 2021年から毎年行っているこのインタビュー取材、今回で4回目になりますね。「アンドウッドと言えばチーク」というイメージがありますが、そのチーク材の丸太と製造プロセスをガラリと変えたというのが2024年の大きなトピックでしょうか?
遠藤さん はい、これまでチークはインドネシアのジャワ島で採れたものを使ってきたんですが、最近、自分の中で納得がいかない精度のものがあったり、少し品質のばらつきが気になり始めたんです。
お客さんから何かを言われたわけではないのですが。
鈴木 それは、お客さんが気づかないレベルのわずかなばらつきということでしょうかね?
遠藤さん というよりは、僕のお客さんが施工を依頼している大工さんは腕がいい人が多いんですよ。その大工さんたちの技術力に助けられていたのだと思います。でも、それに甘えていてはいけないと思っていました。
それで、丸太から見直して、製造工場、塗装ライン、全部ガラッと変えました。
鈴木 これまで依頼していた工場は長い付き合いでしたでしょうから、思い切った決断だったのでしょうか?
遠藤さん はい、かなり勇気がいる決断でしたね。今まで蓄積してきたフレンドシップがあり、阿吽の呼吸でやり取りができていたので。
ただ、新しく依頼する工場は、私がアンドウッドを始める以前にお付き合いをしていたところで、その後もずっと連絡を取っていました。工場の経営者がとてもしっかりしていることも知っていたので、今回製造を依頼することにしたんです。
鈴木 商品のラインナップも変わるんですか?
遠藤さん いえ、プロダクトはほぼ同じです。ただ木目や塗装の仕上がりはちょっと違いますね。

既存の方は黒い部分がけっこう入っていて色ムラが大きいですが、新しい方はのっぺり、大人しくなっていますね。僕からすると新しい方がチークっぽいなという感じがします。
塗装については、どちらもオイル塗装ではありますが、既存の方は塗装後にUV照射をする機械乾燥で、新しい方は自然乾燥です。自然乾燥の方がちょっとぬるっとしたような感触になります。
鈴木 比べてみると、既存のものは触るとちょっとザラザラした感じですね。
遠藤さん 機械乾燥の方は瞬間的に乾かすので、表面に膜をつくるんですよ。そのざらっとした感触はチークそのものではなく、その上の塗装の膜なんです。
一方、新しい方のチークはオイルが染み込んでいるので、触った時の感触はチークそのものの感触ですね。ただ、膜をつくる塗装の方が汚れには強いですが。
鈴木 遠藤さんが気にされていた精度、寸法安定性についてはどうでしょうか?
遠藤さん このパーケットでは、1枚の板の幅を狭くしています。4Pから5Pにしていますね。木材は幅方向に動くものですから、幅が狭いほど動きが小さくなるんですよ。なので、新しいものの方が寸法安定性が高くなっています。
あと、直角もよりきれいに出るようになりました。
鈴木 直角がきれいに出ていないと、並べていくうちにずれていくんでしょうか?
遠藤さん そうなんです。そこはこれまで大工さんの技術に甘えていたところでした。クレームが出ていたわけではないですが、新しいチークでは、これまでよりも施工がしやすくなると思います。
鈴木 ところで丸太も変わったということですが、どんな違いがありますか?
遠藤さん 産地が変わりました。これまではジャワ島で採れたチークを使っていましたが、新しいものはジャワ島の北にあるスラウェシ島で採れたチークを使っています。

そして、樹齢が違いますね。以前は樹齢40年くらいのものを使っていましたが、新しいものは樹齢30年程度の若い木です。直径は30cm程であまり太くありません。今はだんだんと樹齢が若い木が使われることが増えています。
鈴木 なんとなく、樹齢が高い木の方がいいのかな…?と思うのですが、そのあたりはどうでしょう?
遠藤さん そうですね。やっぱり樹齢70~80年のチークは一番いいです。色も濃くて黒い筋がグッと入って、「ああ、チークだな…」という感じのチークです。それと比べると、うちで扱っているチークはかなりライトですね。ただ、若い木は木目のクセが少ないので上品に見えます。
ところでこのフローリング、少し色が明るいところは「白太」と呼ばれる部分なんですけど、“トリートメント”を施しているんですよ。
ちょっとだけ色を足すっていうことなんですが、板の側面を見ると分かりやすいですね。
トリートメントがされていない部分がだいぶ白っぽいのが分かると思います。
このトリートメント技術、僕はけっこう好きで、日本で出回っているウォールナットとかオークとか、誰も気づいていないかもしれないですけど、実はみんなトリートメントが施されています。
これは今の技術であり、やり方ですね。樹齢30年程度だとトリートメントなしでは白太が多く入り、見た目がガチャガチャして使いにくいです。
鈴木 たしかに、トリートメントがされていない部分を見ると、色が薄いですね。あまりチークっぽくないというか…。それはオイル塗装とは違うんですか?
遠藤さん 違います。トリートメントで白い部分に色を入れてから、最後にオイルを塗っています。今回の新しいチークは、トリートメントを一つ一つ手作業で行っているのも特徴で、それにより見た目が良くなっています。床材は自然の木でできているものですから、手作業との相性がいいなとも思います。
精度や見た目の上品さ、質感など、いろいろこだわって作っているので価格は以前よりも高くなりますが、よりご満足いただけるものになったと思います。2月下旬頃からみなさんにお届けできる予定ですね。
塗装にもこだわった上品な木目のタモ材
鈴木 では次に2024年に新たに調達した床材について教えて頂けますか?
遠藤さん タモですね。タモと言ってもいろいろ種類があるんですが、今日本で流通しているのは、アメリカンホワイトアッシュという木目が広いカジュアルなタモなんです。
そんな中、僕が“本ダモ”と呼んでいる中国のタモが手に入ったんですよ。木目が詰まった上品できれいなタモの挽き板です。それを夏頃に販売したら1カ月で全部売れました。最速でしたね。

鈴木 それはすごいですね!
遠藤さん インスタグラムで紹介したら問い合わせがすごくて。ビックリしましたね。そんなに需要があったんだ!って。
鈴木 タモやアッシュって、オークなどと比べると、それほどメジャーなものというイメージはないですもんね。タモを選ばれる方はどんなことを求めて選ばれるのでしょうか?
遠藤さん やはり上品さだと思います。上品な空間が欲しい人はタモを選びますね。アンドウッドのインスタグラムのフォロワーさんは、デザインを重視されている方が多いので、そのニーズが合致したのかなと。

あと、普通にオイル塗装をすると木目が立ってくるので、木目が立たない塗装にもこだわりました。
ただ、今は円安もあり、世界的なニーズもあって、節無しのタモは価格が高くなっています。
90mm幅、程よく節が入ったメープル挽き板
鈴木 2024年に新たに調達した床材。他にはどんなものがありますか?
遠藤さん 節ありのメープルの挽き板ですね。
鈴木 メープルって節ありと節無しとで全然表情が違って、僕には別の木に見えたりするんですが、「節あり」の方ですね。
遠藤さん そうですね。節ありのメープルは黒い筋が入ってかっこいいですが、今はそれが手に入りにくくなっています。それでほんのちょっとしか入れられなかったんですけど。

木の産地はカナダです。中国のメープルもいいですが、最近は中国産は手に入りにくくなっています。
「白い床がいいけど、ちょっと味わいが欲しいよね」というニーズに応えられる床材だと思います。節ありのメープルは幅広もいいですが、今回は幅90mmにしています。比較的白いピースが多いので、全体的には上品な雰囲気に仕上がると思います。

鈴木 なるほど。単調過ぎず、かといってワイルド過ぎず。絶妙なバランスです。多少ラフに使ってもいいかな?という気持ちにさせてくれる大らかさもありますね。
ワイルドな空間をつくれるオークの巨大ヘリンボーン
鈴木 2024年に新たに調達した床材。他にも特筆すべきものはありますか?
遠藤さん オークの大きなヘリンボーンですね。パーケットとヘリンボーンの合いの子みたいな感じで、1つのピースが幅120mm×長さ600mmと、かなり大きいです。元々120mm幅のオークをたくさん持っていたので、それを加工して作りました。

5枚並べると正方形になるので、パーケットフローリングのように使うこともできます。1ピースが大きいので通常のヘリンボーンと比べると施工性もいい床材ですね。
鈴木 一般的なヘリンボーンと比べると巨大さがよく分かりますね。これはけっこう出ていますか?
遠藤さん いやいや、そんなに出ていないです。まだ数軒ですね。最近は京都の案件でお問い合わせがあり、1ケースお送りしました。お寺に使うための巨大パーケットを探していたのだそうですよ。
スケール感が写真では分かりにくく、実物を見て頂かないとうまく伝わりません。非常に売りづらい商品ですし、作っても儲かりません。
鈴木 巨大な空間に似合いそうな床材ですよね。ちなみに儲からない床材を作る動機は何ですか?
遠藤さん 情熱でしょうか(笑)?ニーズはあまり考えてなくて、今の手持ちの材料で新しいプロダクトを作りたいというのが動機です。元々ある床材のサネの付け方を変えるだけなので、作り方は単純なんです。
ただ、加工手間は掛かるし、歩留まりも悪くなるから、価格はどうしても上がってしまいますね。まあ普通の人は作らない床材かなと思います。
無機質なダストオークを、木質感ある空間に合わせる
鈴木 次に、2024年に使われ方が面白いと思った施工例を教えて頂けますか?
遠藤さん 去年も取り上げたんですけど、ダストオークがやっぱり面白いですね。これを最初に作ったのは5年以上前です。最近になってやっと日の目を見た感じで、まだまだ多くは出ていないです。
この商品は木質感を抑えようという考えの下で生まれたフローリングで、無機質な空間に合わせるイメージを持っていました。

ですが、昨年完成した新潟市西蒲区のお宅では、比較的木質感が強い空間に使われていました。木が多く使われる空間は、時に苦しさみたいなものを感じさせますが、ダストオークによって木質感が抑えられていて、そのバランスが見事でしたね。

特に印象的だったのが、真ん中に杉のテーブルが置かれていたことでした。
とても有機質なものと一緒に、無機質に見えるように頑張って作った有機質の床が一緒にあるというのが面白くて、次の写真は思わず撮ってしまった1枚です。

鈴木 普通のオークの床だったら一体に見えてしまいそうですが、灰色のダストオークが背景になって杉の質感を際立たせていますね。
たしかに、ホテルライクとかミニマルとは真逆の空間に使ってみるのも面白そうです。いろいろな可能性を感じさせますね。
古典的かつユニークな朝鮮張りのリビング
鈴木 他に印象に残っている施工例はありますか?
遠藤さん 年末に完成した新潟市西区の住宅のタモ材の“朝鮮張り”ですね。朝鮮張りは日本では神社などで使われている張り方です。こちらは僕の方で提案をさせて頂きました。
朝鮮張りって6尺(1,818mm)で張ることが多いんですけど、ここでは3尺(909mm)で張っています。3尺にしているのはコストを抑えるためでもあります。

鈴木 朝鮮張りはなかなかお目にかかれない面白い張り方です。たしかに、細かく刻んでいるような感じですね。
遠藤さん この雰囲気は短くてかわいい感じがするので、僕はありだなあと思います。
タモ材はきれいさ・上品さが特長なので、乱尺ではなく定尺が合っていると思います。そして、定尺はレンガ張りにすることが多いですけれども、こういう張り方にして遊んでもいいかなあと思います。

遠藤さんが今後作ってみたい床材
鈴木 ここまで2024年を振り返ってきましたが、今後作ってみたい床材はありますか?
遠藤さん 節ありのバーチの幅広を作ってみたいですね。
鈴木 バーチってツルっとしていて節がないきれいなイメージがありますけど、“節あり”もあるんですね。

遠藤さん 昔の雑誌とかを見ていると変わった床が見つかるんですが、それ何だろう?と深掘りしてみるとバーチの節ありだったりしますね。
バーチは中心が色が濃くて、周りが白いんですよ。で、周りの白い部分がバーチではグレードが高いとされるんです。普通は逆なんですけど。
いつもはこの白い部分を使って床材を作っているんですが、そこに節やクラックが入ったものを作ってみたいんです。
ただ、中心の茶色い部分まで入るとうるさい感じがするので、茶色い部分は入らないようにしたい。そのちょうどいい材料を見つけるのが難しいんですね。
鈴木 節やクラックが入った幅広のワイルドなバーチ。見てみたいですね!あとは他に構想している床材はありますか?
遠藤さん そうですね。今チークでスラウェシ島からのルートが確立できてきたので、別の材料でユーラシアンチークという樹種の床を復活させたいですね。

鈴木 重厚感がすごい。堅そうですね。
遠藤さん 堅いです。粘りも何もない。アンドウッド初期の頃に新潟市内のマンションのリノベで使って頂いて、その後は南魚沼や十日町のホテルで採用されました。昔はよく採れていたんですけど、今この木を採ろうとすると新たに林道を作る必要があり、コストが上がってしまうんです。

それで、スラウェシ島のルートからユーラシアンチークが採れないかと期待しているところです。これは植林木ではなく天然木になりますが、何かの開発の時に出てくる可能性があります。
あと、先ほど話したダストオークですが、オークではなくチークをベースに同じような床が作れないか模索しています。
下の写真はサンプル用に作ってもらったものですが、チークをワイヤーブラシでこすりホワイトを入れたものです。これでパーケットを作っても面白いかもですね。

鈴木 これもすごいですね。とても存在感があります。アクセントウォールに使う感じですか?
遠藤さん いえ、床です。でも壁に使ってもいいかもしれませんね。ただ価格がかなり高くなるので、売れるかどうかは不明ですし、実際に作るかどうかも未定です。
2025年も現場でのニーズのくみ取りを重視
鈴木 それでは最後に2025年の目標を教えて頂けますか?
遠藤さん これまでと一緒ですが、とにかく竣工写真を撮りに行くということですね。でき上がったところを見に行って、ニーズのくみ取りを続けることが一番大事なことかなと思います。
そこで新しいアイデアが生まれることもありますし、設計者の方からアイデアを頂くこともあります。
張り上がった床を設計者の方と一緒に見て、「こういう張り方も面白そう」という話が出たりすると、とても参考になりますね。
Daily Lives Niigataでは、アンドウッドの遠藤さんへのインタビューを定期的に行っていますが、創業8年目に入った今も、遠藤さんの現場感覚を大切にする姿勢は変わることがありません。
そんなアンドウッドから、2025年はリニューアルしたインドネシアチークをはじめ、新たな床材や新たな張り方が生まれてきそうです。
アンドウッドの床の最新情報や新しい施工例はアンドウッドのWEBサイト内の新着情報でぜひチェックしてみてくださいね。
また、遠藤さんが不定期で綴るつぶやき系のブログ「本日のandwood」でも床にまつわる面白い話題が見られますのでご注目を。
そして、2025年1月、Daily Lives Niigataでは新たにYouTubeチャンネルを始めました。
記念すべき最初の動画では、遠藤さんが選ぶ三大銘木の話を。2本目の動画では、本記事でも触れたアンドウッドのチークのリニューアルの話を収録しています。こちらもぜひ合わせてご覧ください。
▼無垢フローリング専門店and wood 遠藤さんが選ぶ三大銘木・チーク編
▼無垢フローリング専門店and wood 新チーク誕生
and wood(アンドウッド)
住所:新潟市中央区本馬越2-18-1
電話:025-385-6763
Instagram:@and_wood_japan
取材・文/Daily Lives Niigata 鈴木亮平
鈴木 亮平
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