麒麟山を望む片流れ屋根の家

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鈴木 亮平

新潟市在住の編集者・ライター(屋号:Daily Lives)。1983年生まれ。企画・編集・取材・コピーライティング・撮影とコンテンツ制作に必要なスキルを幅広くカバー。累計500軒以上の住宅取材を行う。

新潟県東部に位置する阿賀町。

土地の大部分が森林という自然豊かな町で、阿賀野川が悠々と流れる美しい景色はこの町の象徴的な風景だ。

Iさんご夫婦は、そんな阿賀町の中心・旧津川町に家を新築。

住み始めてちょうど1年が経過したI邸を訪問し話を伺った。

「この家に住む前は15年くらい旧上川村の貸家に住んでいました。雪が津川よりも多い地域で、高基礎の戸建てだったんですが、冬の底冷えが酷くて…。子どもたちも大きくなり手狭になっていたので新築をすることにしたんです」と奥様。

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「3LDKの間取りで、ファンヒーターを合計4台使っていました。それでも寒くて、冬はこたつが欠かせませんでしたね。窓の結露も酷かったです」とご主人。

新築を依頼したのは新潟市秋葉区にある株式会社Ag-工務店。代表の渡部栄次さんがご主人と同じ阿賀町旧上川村出身であったことや、奥様同士が旧知の間柄であったことで安心して頼むことができた。

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I邸が立つのは磐越自動車道津川ICに程近い高台の土地。北東向きに開けた土地からは、ちょうど正面に津川のシンボルとも言える麒麟山を望める。

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「この土地は栄次さんが知り合いを介して見つけてくれたんです。阿賀町は土地や空き家があっても持ち主が分からないものも多く、いい土地を見つけるのは簡単ではないので助かりました」とご主人。

約100坪のゆとりある土地は、敷地内に落雪をさせるスペースもしっかり取って家を建てることができた。

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1階だけで暮らしが完結できる家を

家づくりは、インテリアへの関心が高い奥様が主導。

「北欧系の雑貨が好きで、それらが映えるような木をたくさん使った空間を望みました。あと、うちは女の子が2人なんですが、今中3と小6なので、もう何年かすると家を出ていくかもしれません。夫婦2人での暮らしになった時に1階だけで生活ができるような家にしたいと思いました」(奥様)。

I邸の基本設計は、Ag-工務店とパートナーシップを組む加藤淳一級建築士事務所の加藤淳さんが担当した。

提案したのは、延床面積28坪の片流れ屋根の家。床面積の4分の3は1階で、残りの4分の1が2階という、1階を広めにした設計だ。

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2階には2つの子ども部屋と小屋裏収納があるだけなので、Iさん夫婦は普段特に階段を上り下りすることなく暮らすことができる。

 

悪天候でもストレスを感じさせない大きな下屋

多雪地域ということで、ポーチには大きな下屋が設けられた。

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「車を乗り降りする際に、雨や雪が降っていても、カーポートからポーチへ濡れずに移動できて便利なんですよ。車を出すのに雪かきをする必要もありません。この広い下屋は遊びに来る友人たちにも好評ですね」と奥様。

ポーチの階段を上った先にあるのは外部収納。

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Iさん夫婦はそこに金具や棚を追加し、除雪道具などをきれいに収めている。家の中に入れておきたくないものをたっぷりと収納できる便利な空間だ。

玄関ドアを開けると、そこにはL字型の土間が広がっていた。

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あえてシューズクロークは付けず、その代わり、玄関内に下駄箱とハンガーパイプを造作。

細かく仕切らないことで空間を広く使うことができる上に、L字型の土間は出入りもしやすい。「友人家族が3~4組遊びに来ると、全員で20人くらいになることもあるんです。土間が広いので、そんな時でも靴があふれることがありません」とご主人。

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大人数で食事会が楽しめるリビング・ダイニング

靴を脱いで真っ直ぐ進んだ先にはLDKが広がる。

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北東から南西へと伸びる空間で、麒麟山を眺められる北東側の窓辺がダイニング。1日を通して安定した光を取り込める。

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「今日はあいにくの天気ですが、晴れていると麒麟山がすごくきれいに見えるんですよ。特に紅葉の時期がきれいですね」と奥様。

窓辺のダイニングテーブルはお子様たちの勉強スペースでもある。2階に子ども部屋はあるものの、2人とも広いLDKで家族と一緒に過ごす時間が長いのだとか。

LDKの中央部分にはカーペットを敷いており、そこで家族4人でくつろぐのがIさん家族のお気に入りの過ごし方だ。

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友人家族が集まった時には長テーブルを2つ並べて、大人数で食事を楽しんだりもする。

日当たりのいい南西側の窓辺にはソファが置かれているが、天気のいい日は日差しを浴びながら安らぐことができる。

開放的な勾配天井に、梁がリズミカルに連続。壁や天井にシナ合板をあしらうことで、すっきり上品な木の空間ができあがった

冬にこの空間を暖めるのは、テレビの右側にある床置きエアコン

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「エアコンでの暖房に不安を感じていましたが、これ1台でとてもよく暖まりますね。床も暖まるので、よく『床暖入ってるの?』と聞かれるくらいです。夏の冷房もよく冷えますし、玄関のドアを開けると風がよく抜けるんですよ。次の夏が来る前に玄関ドアに網戸を付けて頂こうかと考えています」(ご主人)。

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回遊動線+機能的な造作棚があるキッチン

リビング・ダイニングを見渡せる場所には対面キッチン。左右どちらからでも入れる便利な設計だ。「両方から行き来できることで、広がりも感じられます」(奥様)。

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キッチン背面には造作のカップボードがあるが、これは奥様が望んだ形をイラストで表現し、それを元に造ってもらったという。

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上部は戸棚、その下には普段使いする食器、その下には電子レンジやコーヒーメーカー、その下にはカトラリーやトレイ、炊飯器にオーブントースター、さらにゴミ箱を置くスペースと、使いやすさを突き詰めている。機能性はもちろん、木の素材感も心地いい

背面の有孔ボードはフックを掛けられる実用性も備えたデザインになっている。

「貸家の時のキッチンは、冬とても寒く、夏は西日で暑くて。料理をすることが苦痛で外食に行くことが多かったんです。ここに住んでからは料理をつくるのが楽しくなって、外食の回数が減りましたね。キッチンからテレビが正面に見えるのも気に入っています」(奥様)。

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洗濯物をたっぷり干せる洗面脱衣室

キッチンの奥へと進んでいくと、6畳の寝室、水回り、クローゼットが配されている。

障子がある落ち着いた寝室は、畳敷きで壁は和紙クロス。

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眠るときはベッドではなく布団。以前の貸家の時から慣れ親しんだ畳の寝室が、Iさん夫婦は落ち着けるという。

廊下の突き当たりにあるのは洗面脱衣室。

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ゆとりある空間では洗濯物を干すことができ、乾いた服はすぐそばの造作棚に置かれた衣装ケースに収納する。「以前の家と比べて物干しや収納がとても楽になりました。あと、冬でもお風呂や脱衣所が暖かいのがうれしいですね」と奥様。

洗面台は造作で、明るいグリーンのモザイクタイルがアクセント。

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キッチンと同様に有孔ボードが張られているが、こまごまとしたものを掛けて収納するのに役立っている。

脱衣所を出てすぐの場所にはウォークインクローゼット。

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洗濯をして乾いた服はすぐにこちらに片付けられる。階段下に桐ダンスを置くなど、ちょっとしたスペースも無駄なく活用している。

ウォークインクローゼットを出てリビング方面を望む。

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壁にはマグネットボードを埋め込んでおり、ピンを刺すことなく学校関係の書類を掲示できるなど、細やかな配慮も考えられている。

 

2階の子ども部屋は最低限の広さに

再び玄関ホールに戻り階段を上がると、そこには左右対称の子ども部屋が並んでいた。

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北東側はこの家の中で最も眺望のいい部屋。

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5.5畳の部屋はコンパクトだが、それがかえって落ち着ける。こちらの壁にも有孔ボードが張られており、バッグや小物を掛けるのにちょうどいい。

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収納は上下に分けており、無駄なく活用できる。

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もう一つの部屋も同様のつくりだ。

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外出の頻度が減るくらい、心地いい住まい

「すごく満足して暮らしていますが、冬暖かいのが特にうれしいですね。以前は家に居たくなくて休日は外出することが多かったですが、今は家で過ごす時間が長くなりました。あと、設計が決まってからも物干しの位置など細かな調整に柔軟に応じて頂けたので、より自分たちが使いやすい家ができ上がったと思います。むやみに物を増やすことは好きじゃないんですが、今は気に入った雑貨を少しずつ増やしていこうと考えるのが楽しいですね」と奥様。

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施工を行った渡部さんは「断熱の仕様としては、特別に高いものにしたわけではありません。ただ、グラスウールを隙間なくきれいに充填することにこだわっていますので、それにより建材の性能をしっかり引き出せていると思います」と自信を持って話す。

1年点検を兼ねて訪問した渡部さんは、木がやせてしまったことでできた隙間の補修を丁寧に行っていた。

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引き渡し後もずっと快適に暮らしてほしいという願いは、丁寧な施工やアフターメンテナンスの姿勢に現れている。

豊かな自然環境に恵まれた阿賀町での暮らしは、冬場は厳しい寒さとの戦いでもある。

そんな冬でも快適に暮らせる新しい住まいは、Iさん家族を優しく包み癒やしてくれている。

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I邸
阿賀町
延床面積 28坪(1階21坪 2階7坪)
竣工年月 2019年1月
設計・施工 株式会社 Ag-工務店
設計協力 加藤淳一級建築士事務所

 

写真・文/鈴木亮平

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鈴木 亮平

新潟市在住の編集者・ライター(屋号:Daily Lives)。1983年生まれ。企画・編集・取材・コピーライティング・撮影とコンテンツ制作に必要なスキルを幅広くカバー。累計500軒以上の住宅取材を行う。